アメリカ空軍地球規模攻撃軍団(Air Force Global Strike Command)は2020年2月5日(現地時間)、今年初めてとなる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射試験をカリフォルニア州から太平洋で実施し、無事成功したと発表しました。
大陸間弾道ミサイルはアメリカ核抑止力の中心的存在ですが、そう簡単に使う訳にはいかない「抜かずの剣」といった存在です。とはいえ、使わず大事に保管しておくだけでは、いざという時に発射できるか分かりません。
このため、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は絶えず整備を行い、定期的にダミー弾頭を搭載して実際に発射し、所定の性能を出せる状態にあるかを確認する必要があります。核武装は、ただ持っているだけでも手間とお金のかかる代物なのです。
発射試験が行われたのは、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地。ここに全米各地のICBM部隊(ワイオミング州F.E.ワレン空軍基地の第90ミサイル航空団、ノースダコタ州マイノット空軍基地の第91ミサイル航空団、モンタナ州マルムストローム空軍基地の第341ミサイル航空団)が集まりました。
ICBMは非常に高い装備品ですし、条約によって保有数の上限が定められています。このため、試験といえどもバンバン発射する訳にはいかないので、このように全ての部隊が集まって実射試験を行うのです。自衛隊が海外でミサイル発射訓練を行う機会が貴重なのと似ているかもしれません。
今回の発射試験は、実戦配備されているミサイルから無作為抽出して発射し、機能を確認する通常の運用試験ではなく、ミサイル技術の開発試験として実施されたもの。予備のミサイルを使い、実際の運用に即した形で発射して、新しい部品や装置の性能を確認します。
前回の試験は、ちょうど1年前の2019年2月に実施されました。今回が2回目の試験となります。アメリカ太平洋時間の2月5日0時33分、地下サイロのフタが開き、ミニットマンIII大陸間弾道ミサイルが発射されました。
およそ30分後、ダミー弾頭は約6760km離れたマーシャル諸島クェゼリン環礁の着弾点に予定通り着水。発射試験は成功しました。
試験を主導した第576試験飛行隊長、オマー・コルバート大佐は「この開発試験は、空軍の地球規模攻撃軍団と核兵器センターの双方にとって、ICBMシステムの維持と近代化における貴重なデータを提供するものです。ミニットマンIIIは長年配備されて老朽化しつつあり、その近代化は我が国の核抑止力維持のためにも、寿命の延長は不可欠です」と、今回の試験の意義について語っています。
重ねてコルバート大佐は「最も重要な点は、実際に我が国のICBMの性能を公開することで、同盟国や潜在的敵対国に対し、アメリカの安全保障能力を証明できる点にあるます」と、シミュレーションではなく実際に発射することの意味についても言及しています。
この開発試験は全4回実施することになっており、あと2回の発射試験が予定されています。空軍では、発射試験計画を実施の3~5年前に立案し、それぞれの発射試験は6か月前から準備が始まるとしています。
<出典・引用>
アメリカ空軍地球規模攻撃軍団(AFGSC)ニュースリリース
Image:USAF
(咲村珠樹)