市販のマスクがほんの少しずつしか流通していない昨今、ついに外出自粛にまで発展している新型コロナウイルスの脅威。このまま暗いムードが続くのはやっぱり気持ちも落ち込みます。何とか明るく乗り切るには……。ツイッターに投稿されたハンドメイドの動物マスクが可愛いと反響を呼んでいます。
「マズルマスク作りました」の一言とともに、2点の写真をツイッターに投稿した、クリエイターのヤムさん。「マズル」とはイヌ科の動物などの、出っ張っている口の部分の事。吠え癖や噛み癖のある犬に、躾や他害とならないようにお散歩時などにマズルを覆うマズルカバーをする犬もいます。
マズルマスク作りました。 pic.twitter.com/WGo3Ux9YlK
— ヤム@ヤム烈 (@yamuretsu) March 15, 2020
犬好きならお分かりになるでしょうが、あのスッと伸びたマズルの鼻先が何ともカッコよく見えて、いかにも「犬!」って感じでいいんですよね。そんなマズル部分を再現したマスク、写真を見ると確かに立体的な鼻先の部分が再現されており、顔半分がケモノ化できてしまうというもの。
ぱっと見たところ、モフ感もあって可愛い……。そしてメガネと一緒に装着している写真は、「頭に犬耳付けたら完璧な犬娘」状態。
ケモノの擬人化が好きな半人半獣愛好家、いわゆるケモナーにはピンポイントでツボを突く可愛さに、「カワイイ」「好き!」「ケモナー属性にはたまらん!」「めっちゃ欲しいんですけど」の声が続々。筆者も見た瞬間、「これはいいものだ」と思わずのどから手が出そうに。
ヤムさんご自身もケモナー属性があるそうですが、このマズルマスクは、「会社でマスクをしてない社員がいて、その方に『貴方だけだよマスクしてないの!』と注意した社員がいた」事に端を発したのだそう。
このご時世、ドラッグストアの開店と同時に並んでいた人たちがマスクを買いつくしていく上、オンライン販売でも恐ろしい高値で出回っている状態。今、マスクを着けていない人たちは、買いたくても買えないという人の方が圧倒的に多いのかもしれません。
ネット上ではハンカチや手拭いで簡易マスクを作る方法、キッチンペーパーを簡易マスクにする方法などが紹介され、テレビでも紹介されるようにもなりましたが、なかなか上手くできない、簡易マスクに使うゴムが痛いなど、着用感が良くなくて着けたくても顔に当たった感覚が無理という人も。
そんな状況を見ていて心を痛めていたヤムさん。ある日、「男性が鋲のついた黒革のマスクをしてられるのを見かけました。マスクをしてなくて怒られるのであればなんでも口隠せばいいのではないだろうか、それならば自分が好きなものつけて少しでも不謹慎かもしれませんが楽しんだもの勝ちではないだろうか」と思ったのだそう。
確かに、メガネや杖など、自分の体の補助をする道具でも、自分の好きな色柄を取り込むことは愛着も増して、使うのも楽しみになります。ちょっとしたファッション性は、暗くなりがちな生活に彩を添えて明るくしてくれるのです。
そこで、試行錯誤の末に出来上がったのがマズルマスク。ヤムさんは、当初は別の作業の息抜き程度にと思って作っていたそうですが、結局、型紙を5回ほど作り直してマスク自体も何度も作り直し、今まで未経験だった刺繍で鼻の部分を作ってみたため、何度も作ってはほどき、を繰り返す事数回。やっと出来上がった時には2日ほど経っていたそう。
マスクの内側にはガーゼを使用したり、口のピンク部分をオーガニックコットンにするなど、少しでも息がしやすいように工夫してみたそう。しかし、「ファーを使用してるので今からの気候だと暑いかと思います」と。確かに、ハロウィンのコスプレみたく短時間しかつけないならともかく、モフモフ素材なので鼻から耳元まで汗ばんでしまいそう……。
そして、重大なのがマスクの扱い。試作では誰もが見える外側にファーを使っていますが、一番汚染されやすいのも実は外側。ヤムさんご自身も、「機能性は正直なところ期待できませんが」としつつ、内側にガーゼ素材を使うなど肌触りと鼻や口が当たる部分が不潔になりにくいように工夫はされています。
しかし、その辺を飛び交っている花粉や、人が密集する場所では、息を吸い込むとともに一緒に花粉や誰かの飛沫も吸い寄せてしまいます。結果、「可愛いけど現在の状態では扱いがちょっと難しい」といった状態に。
使い捨てマスクであれば、帰宅や食事の時のマスク交換時には、まずマスクを耳ゴムの部分から外して捨て、その後石鹸で手をしっかり、最低でも15秒以上は泡立ててて手首から指・爪の先までしっかりと洗う事で、手に付着したウイルスなどを物理的にも洗い流せます。
しかし、ヤムさんが試作してみたマスクは、可愛い方向と素材に重点が置かれているので、このまま手洗いのついでに石鹸で洗っても大丈夫なのかな……?という疑問も。新型コロナウイルスで大騒動でなければこの視点は恐らく出てこなかったかもしれませんが、感染予防の観点から考えると結構ややこしくなるものです……。
ヤムさんも、「ぬいぐるみ生地にはウイルスがつきやすいというのもみていたのでとりあえず洗っても大丈夫な生地(フェルトは洗えるタイプのものだったり)を探して、中面はトリプルガーゼを使用などいろいろと模索中です」と、さらに試行錯誤中なご様子。
マスクと肌に接する面の間に、そのまま使い捨てマスクを着けたり、不織布のフィルターを挟むなどして、正しい扱いをすれば余程ナニカが付着したマスクから感染に至ることはないとは思いますが、一番見せたい部分が使用後の洗濯、消毒に耐えられるかどうかはさらに試行錯誤を続ける事になりそうです。
マズルマスクの反響の中に、他の動物も欲しいといった声も多く寄せられています。現在、ヤムさんが作ってみたものは、ツイッターにアップしているマズルマスク(動物はの種類としては特に決めていないそう)と、文鳥2種類の3つで、いずれもヤムさんが自分用として試作したもの。衛生面や扱いやすさなども含めて、更に手を加えて機能性を高めようと試作しているそうですよ。
もし、納得がいくものができるようであれば、「イベント出展にて販売は売り物として納得がいくものが出来次第様々な動物で展開していきたいと思っています」との事。犬っぽい試作のマズルマスクには、他にもオオカミ、キツネ、猫などのバリエーションが欲しいといった声も多いそう。
洗う時の取り扱いが楽で、可愛いマズルマスクが実現したら、ちびっ子にも喜んで着けてもらえそうな気がします。子どもの変身願望を簡単に叶えられて、風邪ひきちゃんのマスクイヤイヤも解消されそう。筆者の娘はもうちびっ子とはかけ離れた世代になってしまいましたが、自分用にぜひお迎えしたいな、と思うのでした。
<記事化協力>
ヤム@ヤム烈さん(@yamuretsu)
(梓川みいな)