アメリカ海軍は2020年5月2日(アメリカ東部時間)、ニューヨークに派遣されていた病院船コンフォートが任務を終了し、母港ノーフォークへ帰還したと発表しました。4月1日から活動を開始して、ちょうど1か月間の任務でした。コンフォートは次なる派遣に向けて準備を整えます。
新型コロナウイルスの感染が拡大したアメリカで、医療機関の病床が足りなくなり、深刻な状況に陥ったニューヨーク。アメリカ国防総省は、連邦緊急事態管理庁(FEMA)と協力し、コンベンションセンターや公園、競技場などを臨時の病院(フィールド・ホスピタル)に衣替えするとともに、海軍の病院船コンフォート(T-AH-20)を派遣しました。
3月28日、トランプ大統領やエスパー国防長官らに見送られ、母港のバージニア州ノーフォークを出発したコンフォート。3月30日にニューヨーク港の90番埠頭(ピア90)に接岸し、4月1日から患者の受け入れを開始しました。
コンフォートがニューヨークで医療活動を行うのは、2001年の同時多発テロで国際貿易センタービルが崩壊して以来のこと。この時は9月14日~10月1日の期間、怪我人の手当てや精神的ショックを受けた人々への対応にあたっています。
あわせて、マンハッタンにあるジェイコブ・K・ジャヴィッツ・コンベンションセンターが、ニューヨーク州兵や陸軍工兵隊により臨時の病院に衣替え。およそ1000床の病床を設け、新型コロナウイルス感染症の患者らを受け入れました。
幸い、外出禁止令などの効果もあり、ニューヨークで感染者や入院が必要なほど症状が悪化した患者は減少に転じ、ジャヴィッツ・コンベンションセンターの臨時病院では5月1日、1095人目にして最後の入院患者が退院。一旦役目を終えました。
地域の医療機関に患者の受け入れ余力が戻ったことを受けて、病院船コンフォートにも4月28日に30日をもって任務を終了する旨の命令が下されました。4月1日からちょうど1か月の任務でした。
当初は地域の医療機関が新型コロナウイルス感染症の患者に集中できるように、ほかの入院患者をコンフォートが受け入れることになっていました。しかし患者数の増加により、6日からコンフォートでも区画を厳密に区切った上で、新型コロナウイルス患者の受け入れを開始。最大で入院患者の70%が新型コロナウイルス患者、という困難な条件下でも、コンフォートの乗組員は任務を全うしました。
4月30日、31日間にわたって接岸していたニューヨーク港90番埠頭を離れたコンフォートは、母港へ向けて出航。5月2日、母港ノーフォークへ帰還しました。
ニューヨークでの任務で指揮官となったジョセフ・オブライエン大佐は「ニューヨーク州とニュージャージー州の人々にワールドクラスの医療を提供する、プロフェッショナルのチームを率いることができ、本当に光栄なことでした。無事帰還した現在、我々の最優先事項は、チームの健康と安全を確保し、どこであろうと命令があれば出動できる準備をしておくことです」とコメントしています。
コンフォートの医療部門指揮官、パトリック・アメルスバッハ大佐は、ニューヨークでの活動について「コンフォートの順応性と弾力性の高い能力を示すことができました。ノーフォークを出発した時は、新型コロナウイルスに感染していない患者を受け入れる予定でしたが、すぐに新型コロナウイルス患者も同時に受け入れなくてはならない、と判断しました。乗組員たちがニューヨーク州とニュージャージー州の人々に与えたインパクトを誇りに思います。受け入れた患者の数だけでなく、乗船した人々すべてに対して、素晴らしいケアを提供してくれました」とコメントしています。
ノーフォークに帰還しても、コンフォートは出動命令があればすぐに出航できるよう“レディ5”という即応体制を維持します。ニューヨークで任務にあたった乗組員は、14日間の隔離下に置かれ、新型コロナウイルス感染の有無が確認されることになっています。
<出典・引用>
アメリカ北方軍(USNORTHCOM) プレスリリース
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy/U.S.Army
(咲村珠樹)