今年はコロナ禍のせいで、毎年行っていたお誕生日会もできずにさみしい思いをしている人、多いかもしれません。そんな5月生まれの皆さんを元気づけたいと、金属加工会社の社長がレーザー光線でバースデーカードを描き、感嘆の声が集まっています。

 新潟県燕市にある、協立工業株式会社と星野金型株式会社の森下一社長は、これまでにもレーザー刻印で様々な作品を描いて話題となっています。新型コロナウイルスの脅威がピークに達し、人々が不安のさなかにいる3月には、レーザー刻印でウイルスに覆われた地球をレーザーで描き、それをさらにレーザーで塗りつぶしてから両手で地球を守り「NEVER GIVE UP.」と刻印した動画が話題となり、テレビ番組でも紹介されました。

 その後も様々なものにレーザーで刻印した動画をツイッターに投稿していますが、5月生まれの皆さんに、と刻印したバースデーカードは、東京の夜景に浮かぶ打ち上げ花火の模様。

5月生まれの皆様、お誕生日おめでとうございます。

ささやかですが、私からステンレスのバースデーカードを。

多くの花火大会が中止になってしまったのでレーザーで描く夜景と花火をどうぞ。

素敵な年になりますように。

 そんな言葉とともにメイキングの動画を投稿しています。

 黒い油性ペンで金属板を真横に一本ずつ線を引いて黒く塗りつぶし、レーザーマーカーへ。みるみるうちに東京の夜景が交差する赤い光線と輝く点とともに描き出されていきます。

 ほんの数秒で描き出される東京の夜景。これだけでもどこか幻想的なものを感じますが、そこから更に、漆黒の夜空から花火を描き出しています。花火の刻印が完成間近になるにつれて、赤いレーザーと白く発する光が本物の花火のように見えてきます。

 そして、金属板の右下に刻印されていく「Happy Birthday」の文字。1分46秒間の間に描き出されたカードは、メタリックだけどモノクロームな、美しいバースデーカードとなりました。

 思わずため息が出てしまうこのカード、5月生まれの人たちから喜びの声が続々。なかには「コロナで寂しい誕生日だと思っていましたが、これを見て涙が出ました」と還暦を迎える方からも。実際にこのカードと同じものが欲しい、という人もおり、森下社長が個人的に欲しいという方に実際に作って納品もしているとの事。

 森下社長にお話を伺ってみました。「以前から『設備、技術の無駄遣い』と称し、当社の技術PRを行ってきましたが、こちらから一方的に発信するだけでなく、見て頂いている全ての方と面白さや楽しさを共有する方法を考えていました。その一環として始めたのが金属で作るバースデーカードを映像で贈ると言うものです」と、今年の1月からバースデーカードの描写を始めています。

 5月で思いつくもの……と考えていたところ、続々と中止が相次ぐ花火大会の事をふと思い出し、少し凝ったものも交えながらやっていきたいと考えた結果が今作となったのだそう。

 このバースデーカード、最初に作った時は販売を考えていなかったそうですが、何人もの人からの「欲しい!」という声に応じ、既に個人からの注文も納品しているとの事。個人向けのレーザー刻印商品は通常5000円から要相談、という設定でオーダーに応じているそうですが、今回は販売を想定していなかった事、そして「誕生日プレゼントと言う意味合いもあり、ご予算を伺った上で可能な限りご協力をさせて頂いております」との事。粋な計らいです……!

 これまで会社の方は他企業向けに金属加工製品の製造、販売を手がけており、個人客向けへの販売体制を整えているところという事ですが、近々ECサイトを公開できるよう、現在構築中なのだとか。

 森下社長は「ノベルティやサークルのグッズとしてご依頼を頂いております。ご誕生記念や大切な手紙等、紙ではなく金属に印字して残しておきたい場合は面白いかもしれませんね」と、既にオファーが来ている事も明かしており、今後は製品のパッケージ販売に向けて構築していく様です。

 人生の節目に1点モノのレーザー刻印カードなんて、なかなか素敵かもしれませんね。

<記事化協力>
森下一さん(@kyoritsu_1962)

(梓川みいな)