おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

善意からくる余計なお世話 困っている人には「根拠と寄り添い」が大事だよね

 病気になった人がしばしば遭遇する「こういう民間療法があるよ」「この食べ物は良くないよ」といった周囲からの声。はっきり言えば「ありがた迷惑」なのですが、付き合い上なかなか無下にもできないもの。特に身内からの声は……。

 今回紹介する、花森はなさんも、そんな体験をしてきた一人。「不登校」という特性を持っている花森さんの息子君に関して、義母や近隣の人からあれこれと言われたことを漫画にまとめたところ、ツイッターで大きな反響となりました。

  •  「人が弱ると本当にいろんな人がいろんなことを言ってくるよねって話」というタイトルで2ツイートにわたり、8枚の漫画にしてその時の辛さ・苦しさを描いています。

     花森さんは息子君が小学校中学年当時から、その特性に対応していました。息子君は、パニック発作を持つ不登校児。医師からは「不安症」といわれており、対症療法的に息子君が落ち着くよう薬を使ってみるなどしています。

     学校に通えなくなったのも、食べられないものが多く、好きなものが偏りがちになるのもその特性ゆえのものなのですが、同居している他の家族たちにさえ理解されませんでした。

     息子君は精神的に耐えきれない事に対し、パニックになることも多々。花森さんは息子君を案じて児童精神科へ。そこで薬を処方されつつ、不登校やパニックなどに対する長い戦いのさなかにいます。

     そんな状態を遠くない場所にいて見ているはずなのに、理解ができないのか理解をしたくないのか義母は「アレは良くない、ここにいい先生がいる」と口やかましく花森さんに接し、果ては処方薬が出ているのによく分からないサプリメントを勧めてきたりするそうです。

     特にサーモンはダメ!と根拠の乏しい事を延々と話し、回転寿司ですら息子君にダメと言ってきたり。好きな物を否定されて悲しい思いをした息子君の様子にさすがに頭にきた花森さん。

     今となっては元が付いた夫に義母の暴走を止めるように言うもどこか他人事。その後、義母に対して何とかサーモンの一件に関しては説き伏せたようですが。

     息子君の体の緊張をほぐそうと通わせている近所の整骨院では、食事についてダメだしされた挙げ句、「食べてはいけない食品~~」といったような本まで勧められたそうです。

     その本のどこに医学的な根拠があるのかもはっきりとしないのに、妄信的に勧めてくる事に嫌気がさした花森さん。当然ながら整骨院からは足が遠のきましたが、今度は同じ整骨院に通っている義妹さんにまで「まず偏食を直して。子どもに薬を飲ませる治療法は絶対ダメ」など、否定的な話をしてきたそうです。

     しかも「お嫁さんが今周りの声全然聞こえてないから言えないけどね!」という一言つきで。

     その話を義妹さんから聞かされた花森さん……。二度とそんな整骨院には行かないと固く誓ったのでした。

     花森さんにかけられたこうした言葉の数々は、息子君を心配するあまりの「善意のアドバイス」が殆どだったでしょう。しかし、「根拠のない(善意の)アドバイス」は果たして本当にその人にとって必要なものなのでしょうか?

     漫画の中で、花森さんは「悪気のない善意の押し付け。その押し付けの善意が一番苦しかった」と述懐。そして、「ネットの中のつぶやきや漫画に、リプライやメッセージ、黙っていいねをくれた人の方がずっとずっと心に寄り添ってくれた」と、ネット上の交流であってもそれが花森さんの心の救いに繋がっていた事を明かしています。

     現在は余計なノイズのない環境で、理解のある支援級の先生やスクールカウンセラーなどと一緒に息子君を見守りつつ、特性のある息子君を支えている花森さん。

     「おかしな方向からアドバイスを送ってきたり、お医者さんでもないのに治療方針に口出しをしてくる人がいたら、たとえそれが善意であったとしても、本当に聞かなくていいと思う」「自分に必要な言葉って、心にスッと染み込んでなんとなく分かる気がするし、なるべくそういう言葉だけを大事にしていきたいと思います」と締めくくっています。

    ■ 「トンデモ医療」と妄信者、そして自然派の危険な落とし穴

     花森さんにアドバイスを押し付けてきた人たちは、軒並み「どこにもはっきりとした根拠のないモノや話」を押し付けています。今でも添加物に過敏になったり民間医療を妄信したりという人は少なくありません。「医学博士監修」の大義名分のもと、センセーショナルな内容で健康に対する恐怖などを煽る見出し記事や書籍を出しているところも少なくありません。

     こうした内容をうっかり鵜呑みにして、さらに当事者でもないのに「~~が良い・悪い・するべき」といった言葉は当事者にとっては自分を追い詰めるように感じられるものです。

     また、信頼できるところに掲載されている医学論文などの根拠もないのに、「○○はダメ」「△△のみが良い」などと偏った言い切り情報も危険。

     当事者が必要としているのは、当事者が必要としている情報のみ。確たる情報とは言い難い内容を「アドバイス」としても、それはアドバイスではありません。単なるノイズにしかなりません。当事者以外に求められる事は「正しく理解して当事者に寄り添う心」です。

     これは、花森さんの息子君のような特性を持った子どもやその親たち以外にも、潰瘍性大腸炎などの難病やがん、難治性の疾患を持っている当事者とその身内にも当てはまると言えましょう。

     人間、正しく理解が進めば寛容になれるものです。不要な言動の前に、必要とされる事が何かを正しく見極める、肝心なのはその見極めにあるのではないでしょうか。

    <記事化協力>
    花森はな(@hanamori_h)さん

    (梓川みいな/正看護師)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「もう思いつかない!」というところまで書き殴るべし
    インターネット, おもしろ

    ストレスが溜まったら「怨念を書き殴って破く」 Xで話題の発散法を試してみた

  • 「おとうとのびょうきをなおして」7歳の兄がサンタに託した切実な願い
    インターネット, 感動・ほのぼの

    「おとうとのびょうきをなおして」7歳の兄がサンタに託した切実な願い

  • 子どもに「ハート描いて」と頼まれた心臓外科医 ガチすぎる“ハート”を描き上げる
    インターネット, おもしろ

    子どもに「ハート描いて」と頼まれた心臓外科医 ガチすぎる“ハート”を描き上げる

  • タオルが好きすぎる2歳児の完全装備 強すぎて笑うしかない
    インターネット, おもしろ

    タオルが好きすぎる2歳児の完全装備 強すぎて笑うしかない

  • 知らなかった……チャイルドシートに厚着のまま乗せるのは危険 日本小児救急医学会が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    知らなかった……チャイルドシートに厚着のまま乗せるのは危険 日本小児救急医学会が…

  • 31年の歴史に幕……講談社の幼児誌「げんき」が休刊を発表
    商品・物販, 経済

    31年の歴史に幕……講談社の幼児誌「げんき」が休刊を発表

  • チョコスプレーをひとつずつ食べる息子……夫婦のキレキレなやり取りに18万いいね
    インターネット, おもしろ

    チョコスプレーをひとつずつ食べる息子……夫婦のキレキレなやり取りに18万いいね

  • 「携帯見せてください」令和の子どもが遊ぶ“進化したお店屋さんごっこ”が話題
    インターネット, おもしろ

    「携帯見せてください」令和の子どもが遊ぶ“進化したお店屋さんごっこ”が話題

  • これは完璧に隠れているね……2歳児の“本気のかくれんぼ”が可愛すぎる
    インターネット, おもしろ

    これは完璧に隠れているね……2歳児の“本気のかくれんぼ”が可愛すぎる

  • あなたならどうする?3歳とのババ抜きで丸見えのジョーカーに母、葛藤
    インターネット, おもしろ

    あなたならどうする?3歳とのババ抜きで丸見えのジョーカーに母、葛藤

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト