ドイツにあるNATO連合航空部隊司令部は2020年9月28日(現地時間)、アメリカ空軍のF-16が6機、ブルガリアでNATO防空任務を開始すると発表しました。このF-16は9月中旬にイタリアのアヴィアーノ空軍基地から飛来し、ブルガリア空軍との共同訓練を経て着任したもの。4週間の任務期間中、担当空域のパトロールを実施します。

 ブルガリアにやってきたのは、イタリアのアヴィアーノ空軍基地に駐留するアメリカ空軍第31航空団・第555戦闘飛行隊のF-16。まずは9月18日、ブルガリア空軍らとの共同訓練「トレイシャン(トラキア人)・バイパー」に参加するため、ブルガリアのグラフ・イグナティエボ空軍基地に到着しました。

 共同訓練「トレイシャン・バイパー」は、アメリカ空軍とブルガリア空軍が相互運用性を高めるとともに、アメリカ空軍にとっては遠隔地への迅速な部隊展開を訓練するもの。2020年は9月21日~25日の日程で実施され、ギリシャ空軍とルーマニア空軍からも人員が派遣されています。

 訓練ではブルガリア空軍のMiG-29、そして練習・軽攻撃機のL-39とともに、空対空戦闘や地上攻撃を実施。地上攻撃の地上管制では、ラムシュタイン空軍基地(ドイツ)に駐留する第435空地作戦航空団の支援を受けています。


 アメリカ空軍第555戦闘飛行隊の作戦主任、ブライアン・G・ルイス中佐は「この訓練は、我々とブルガリア、そしてNATOとの協力関係を強化する貴重な機会です。我々は得た知識を共有するとともに、他国と共同で任務にあたる際の複雑さを理解することができます。加えて、我々にとっては限られた人員で不慣れな場所に展開した際のノウハウも得られるのです」と訓練の意義を語っています。


 ブルガリア空軍との共同訓練を終えたアメリカ空軍第555戦闘飛行隊のF-16は、そのままグラフ・イグナティエボ空軍基地にとどまり、東ヨーロッパ地域におけるNATO防空任務にあたります。隣国ルーマニアには、9月からカナダ空軍第433戦術戦闘飛行隊「ポーキュパイン(ヤマアラシ)」のCF-188(F/A-18C)が、ミハイル・コガルニチャヌ空軍基地を拠点にNATO防空任務を始めており、アメリカ空軍はサポートに回ります。

 ブルガリアでのNATO防空任務は2016年、ロシアによるクリミア半島併合問題が発生したことを機に開始され、最初に任務についたのはレイクンヒース空軍基地(イギリス)に駐留するアメリカ空軍第48航空団のF-15でした。NATO防空任務は現地の空軍戦闘機と共同で実施され、空軍力の手薄な国の負担を軽減するため、戦力に余裕のあるNATO加盟国(アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、スペイン、ドイツ、フランス、ポルトガル)が持ち回りで戦闘機と支援要員を派遣しています。

<出典・引用>
NATO連合航空部隊司令部 ニュースリリース
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF

(咲村珠樹)