おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

1960年代のロケット?宇宙を旅してふたたび地球に接近

update:

 NASAは2020年11月13日(現地時間)、1966年にNASAが打ち上げたロケットとみられる物体が太陽の周りを周回し、ふたたび地球に接近しつつあると発表しました。軌道を分析した結果、12月1日に地球に最接近し、2021年3月にまた太陽方面へ離脱するとのことです。

  •  この物体は「2020 SO」と名付けられた小さな小惑星状のもの。2020年9月、ハワイのマウイ島にある全天観測望遠鏡により発見されました。

     観測の結果、2020 SOは少しずつ地球に接近しつつあることが判明。NASAジェット推進研究所の地球近傍天体研究センター(CNEOS)が軌道を計算したところ、その軌道は通常の小惑星と違い、地球の公転軌道とよく似ていることが分かりました。

     継続した観測により、2020 SOは太陽光の圧力を受け、通常の小惑星より大きく動いていることが判明。これは2020 SOが大きさの割に非常に軽い……ちょうど中空のタンクに似た物体であると推測されます。

     これは地球から打ち上げたロケットの残骸ではないか……そう推測した科学者たちは、条件に合致するロケットの打ち上げ記録を調査。そして1966年9月20日にNASAが打ち上げた月探査機「サーベイヤー2号」の2段目ロケット、セントールである可能性が非常に高いと判明したのです。

     有人月面探査のアポロ計画に先立ち、月面へ着陸する技術の開発や、月に関する様々な情報を得る目的で無人探査機を送る、というのが「サーベイヤー計画」です。全部で7回の打ち上げが実施され、このうちサーベイヤー3号は、アポロ12号の着陸地点の目標としても使われました。

     1966年5月に打ち上げられ、6月に「嵐の大洋」へ着陸して1万1000枚以上の写真を送ってきたサーベイヤー1号に続き、9月20日にアトラス・セントールロケットで、フロリダ州のケープカナベラルから打ち上げられたのがサーベイヤー2号です。しかしロケットから分離後、月面へ向かうための軌道調整に失敗し、探査機は月面のコペルニクスクレーターに激突してしまいました。

     1段目のアトラスロケットに続き、サーベイヤー2号を地球から月へ導いた2段目のセントールロケット。探査機を分離した後、地球から離れていった過程で太陽の重力圏にとらわれ、太陽を回る「人工惑星」となっていたようです。

     地球近傍天体研究センター(CNEOS)のポール・チョダス所長は「2020 SOの軌道を解析したところ、1966年9月下旬に地球と非常に近い場所を通過したことが示されました。月観測ミッションの記録を調査して、サーベイヤー2号打ち上げ日との一致が判明した時は、まさにアルキメデスがアルキメデスの原理を発見した時の「エウレーカ!」みたいな感じでした」と語っています。

     半世紀以上宇宙を旅して、ふたたび地球に接近しつつあるロケットの可能性が高い2020 SO。2020年11月8日には、地球の重力圏である半径150万kmのヒル球(ロシュ球)に入ったことが確認されました。

     しかし、このロケットが地球に落ちてくることはないようです。2020 SOは2020年12月1日に最も接近した後、地球の周りを回って加速し、2021年3月にも飛び去って行くだろうとのこと。天文学者たちは2020 SOが地球の重力圏にとどまっている間、これが本当にロケットであるか、詳しく観測することにしています。

    <出典・引用>
    NASA ニュースリリース
    Image:NASA/JPL-Caltech

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 新しい月面用宇宙服「AxEMU」(画像:アクシオム・スペース)
    宇宙・航空

    NASAの新しい月面用宇宙服お披露目 民間企業が開発

  • 記者会見で笑顔を見せる米田あゆさん(YouTubeライブ配信映像より)
    宇宙・航空

    記者からのプライベートな質問を断った宇宙飛行士候補の米田あゆさん その優れた資質…

  • 国際宇宙ステーションから見たスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」無人飛行試験から無事帰還

  • ロケット組み立て棟でのスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASA 宇宙船「スターライナー」打ち上げ試験でSNSバーチャルイベント開催

  • 国際宇宙ステーション(画像:NASA)
    宇宙・航空

    国際宇宙ステーションで新しい通信回線運用開始 レーザー通信の衛星網を経由

  • 国際宇宙ステーションにドッキングしたクルードラゴン(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASAが受け入れる2番目の宇宙旅行フライトが決定 搭乗者はTV番組で募集

  • NASAの2021年宇宙飛行士候補生の10名(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASAに新しい宇宙飛行士候補生10名が誕生 2022年1月より訓練開始

  • ロシアの新しい結合モジュール「プリチャル」の打ち上げ(画像:ロスコスモス)
    宇宙・航空

    国際宇宙ステーションのロシア新結合モジュール「プリチャル」打ち上げ成功

  • NASAが試験に使用するJobyのeVTOL(Image:Joby Aviation)
    宇宙・航空

    NASAが「空飛ぶクルマ」の実証実験をカリフォルニアで開始

  • ドラゴン補給船に積み込まれるハワイミミイカ(Image:Jamie S. Foster)
    宇宙・航空

    イカやクマムシを載せスペースXの補給船が国際宇宙ステーションへ

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • クリスプ のりしおバター味
    商品・物販, 経済

    カルビー、「クリスプ のりしおバター味」発売 レアな“ホシ型クリスプ”も登場

  • 特別災害対策本部車(国土交通省)
    社会, 経済

    消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025…

  • ウィキペディアのページビュー
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI時代でウィキペディア苦境 人間の閲覧数8%減、財団が警鐘

  • ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロテ…

  • ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年
    ゲーム, ニュース・話題

    ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年

  • トピックス

    1. 目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      海外の映画やゲームが日本向けにローカライズされる際、タイトルも和訳されることもしばしばですが、「あま…
    2. 実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      一歩足を踏み入れると、そこはまるで平成初期のゲームショップ。ショーケースにはファミコンソフトがずらり…
    3. ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      「はたらくくるま」が好きな人に刺さること間違いなしな「工事現場ケーキ」がXで話題です。説明がなければ…

    編集部おすすめ

    1. カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      2025年10月23日22時より配信されたNintendo公式番組「カービィのエアライダー Direct 2」にて、ゲームクリエイター・桜井…
    2. 「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      ANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識…
    3. 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      株式会社Gakken(学研ホールディングスグループ)は、同作の映画公開40周年を記念して、劇中の「タイムサーキット」を再現した時計「バック・…
    4. 電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が10月21日朝、公式Xアカウントに声明を掲載。「京王線車内の本学の広告にQRコードは記載しておりません」と述べ、車内広告にQR…
    5. 特別災害対策本部車(国土交通省)

      消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025」10月26日開催

      東京臨海広域防災公園(東京都江東区有明)で、10月26日に「ぼうさいモーターショー2025」が開催されます。警察や消防、自衛隊をはじめ、通信…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト