NASAは2021年2月10日(現地時間)、アポロ計画以来となる有人月探査「アルテミス」計画における月周回軌道上の拠点「ゲートウェイ」ステーション建設で、最初のモジュールの打ち上げをスペースXのファルコン・ヘヴィロケットで実施することを発表しました。ファルコン・ヘヴィにとっては4回目の打ち上げとなります。
地球から月へ直接往復した50年前のアポロ計画と違い、アルテミス計画では月周回軌道上に建設した宇宙ステーション「ゲートウェイ」を拠点とし、そこから月着陸モジュールで往復する形式を採用しました。人類が地球以外の天体を周回する軌道上で長期滞在し、どのような影響があるか知見を積み重ねることで、将来の火星有人探査で必要なノウハウの確立も視野に入れた構想です。
ゲートウェイの規模は国際宇宙ステーションの約6分の1で、アメリカだけでなく日本(JAXA)やヨーロッパ(欧州宇宙機関)、ロシア(ロスコスモス)も建設に協力します。日本は、ヨーロッパが作る国際有人モジュール「I-Hab」の生命維持装置などを担当します。
月周回ステーション「ゲートウェイ」で最初に打ち上げられるモジュールは、宇宙飛行士が生活し、必要な物資を収納しておくHALO(Habitation and Logistics Outpost)と、電力供給・推進モジュール(PPE)。PPEは太陽電池と高速通信装置、姿勢制御装置などを備え、出力60キロワット級の電気推進により月周回軌道まで到達し、さらに軌道を変化させる能力があります。
スペースXのファルコン・ヘヴィは、通常のファルコン9ロケットに、2つのファルコン9ロケット1段目をブースターとして束ねた仕様。低軌道(LEO)に63.8トン、静止トランスファ軌道(GTO)に26.7トンの打ち上げ能力を有する強力なロケットです。
これまでファルコン・ヘヴィは、2018年2月の試験打ち上げを含め、3回の打ち上げに成功。「ゲートウェイ」HALOとPPEの打ち上げが通算4回目の打ち上げとなります。
NASAの発表によると、打ち上げはケネディ宇宙センターの39A発射施設から、2024年5月以降になるとのこと。打ち上げに関する予算は、総額で約3億3,180万ドル(約347億円)としています。
<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA/SpaceX
(咲村珠樹)