アメリカ海軍は2021年6月7日(現地時間)、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の75番艦、ジャック・H・ルーカス(DDG-125)がミシシッピ州のハンティントン・インガルス造船所で進水したと発表しました。駆逐艦ルーカスは、アップデートされた最新のイージス・システムを搭載する、“フライトIII”最初の艦となります。
駆逐艦ジャック・H・ルーカス(DDG-125)は同型艦の中でも、“ベースライン10”のイージスシステムが搭載される“フライトIII”最初の艦として建造されるもの。ミシシッピ州パスカグーラにあるハンティントン・インガルス造船所において、2019年11月9日に起工されました。
艦名の由来となったのは、当時17歳で第二次世界大戦の硫黄島攻略戦に参加し、その働きによりメダル・オブ・オナー(名誉勲章)を受章した元海兵隊員のジャックリン(ジャック)・H・ルーカス氏(1928年-2008年)。塹壕戦で日本軍側が投じた手榴弾に対し、とっさに身を挺して手榴弾に覆い被さり、戦友を守ったことが受章理由となりました。第二世界大戦におけるメダル・オブ・オナーの最年少受章者です。
戦後は海兵隊を除隊し民間人に戻りましたが、ベトナム戦争時に陸軍に入隊。最終的に大尉で退役しています。1997年に行われたアメリカ海軍の強襲揚陸艦イオー・ジマ(LHD-7)起工式典にも参列しており、その船体にはルーカス氏が受章したメダル・オブ・オナーの略綬が封印されています。
初の“フライトIII”として、駆逐艦ルーカスから搭載されるイージスシステム“ベースライン10”の中核となるのは、レイセオン製のAN/SPY-6(V)1対空・ミサイルレーダー。従来のレーダーより出力が上がっているため、電源装置と冷却システムが強化されています。
アメリカ海軍でアーレイ・バーク級計画のプログラム・マネージャを務めるセス・ミラー大佐は「フライトIIIは大幅に向上した検知・追跡範囲を含む最先端の統合防空・ミサイル防衛機能を提供します。最初の艦であるジャック・H・ルーカスの進水は、海軍にフライトIII艦をもたらす大きなステップとなります」と、フライトIII最初の進水を迎えたことの意義を語っています。
アーレイ・バーク級駆逐艦“フライトIII”は、75番艦のジャック・H・ルーカス、76番艦のルイス・H・ウィルソン・ジュニアと建造が続きますが、77番艦のパトリック・ギャラガーは“フライトIIA”最後の艦として建造され、実際の“フライトIII”で検証がなされた後、78番艦のテッド・スティーブンスより本格的な建造が始まる予定です。ジャック・H・ルーカスの就役は2023年を予定しています。
<出典・引用>
アメリカ海軍 プレスリリース
Image:U.S.Navy/HII/Raytheon Missiles & Defense
(咲村珠樹)