おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

全盲の人のスマホの使い方 「見る」のではなく「聞いて」いるんです

 スマートフォンの普及により、便利になったと思う人は少なくないと思いますが、それは健常者だけでなく障がいのある方も同様。ただ、一見似ていても別の使い方をしているケースもあります。全盲の方がスマホを「見ている」ように見えて、実は音声を「聞いている」という光景がTwitterに投稿され、注目を集めています。

  •  盲導犬のヴィヴィッドくんと暮らす全盲の浅井純子さんは、TwitterやInstagram、Facebook、YouTubeを通じて、全盲の人がどのように暮らし、“世界”をどのように感じているかということを日々発信しています。生活の中でスマホも活用しているのですが、その様子を次のようにTwitterへ投稿しました。

     「「盲導犬連れてるあの人。スマホ見てるけどなんで?」私に聞こえたヒソヒソ話(笑)スマホを顔の前で何かしていたら見てるように私だって思いますよ。私は全盲なので見ていたわけではなく音声を聞いていただけなんですけどね(笑)目の情報だけでごまかされることって本当に世の中たくさんありますね」

     「追加です。私はどんな見え方をされていても全く気になりません。そして、ヒソヒソ話をしていた人に「見えてませんよ!」とお話しして爆笑した事は言うまでもありません。びっくりされていましたけどね(笑)」

    スマホを「聞いている」浅井さん(浅井純子さん提供)

     ツイートに添えられていた写真は、浅井さんによると「同行していた夫が撮影したもの」だそうです。

     目と耳はほぼ同じ高さにあり、スマホを顔の付近に持っていると「画面を見ている」のか、それとも「スマホから流れる音声を聞いている」のか、外見からは区別できません。スマホは「画面を見て操作するもの」と思っている人から見れば、顔の高さにスマホを持っていると「画面を見ている」と勘違いするのも当然かもしれません。

     しかし、スマホには「画面を見ながら指で操作する」以外の操作を可能にする「アクセシビリティ」という機能が付いています。全盲の方の場合、画面を見て確認することができないため、テキストを音声で読み上げたりする機能があるほか、自分の声で操作することも可能です。

     浅井さんに、普段スマホをどのように活用されているかうかがうと「TwitterやFacebook、InstagramやYouTube、そのようなSNSの投稿は全てスマホで行っています。例えば、お手紙などは写真を撮って文字に変化させて読み取るアプリがあるので、それで読み取っています」とのこと。手書きの文字も、画像の文字認識機能を使い、音声として聞くことができるんですね。

     光を感じることのできない全盲の方は、色を認識することもできません。そこで活躍するのがスマホのアプリ。「対象物の色が分かったりするので、色違いのお洋服は簡単に判別できます。そしてとても便利なのは白いボトムスの場合、濃い色の下着を穿いてしまうと色が透けて見えてしまうので、そのようなものも色の判別を使います」と、誰かに見てもらわなくても大丈夫な場面が増えているそうです。

     しかしなんといっても、便利なのはビデオ通話などの機能。浅井さんは「とても便利なのは、道に迷ったときにビデオ通話をして周りの風景を見てもらい、道を誘導していただくこともあります」と、目の見える人にとっても有効なビデオ通話の活用法を話してくれました。

     テキストの音声読み上げ機能や音声入力機能により「メールやLINE、全てのものができるようになりました」という浅井さん。特に、肉声を届けることができるボイスメッセージを使っているそうで「文字で送るとやはり自分の思っている感情と違うニュアンスで伝わります。そして、声でメッセージをする方がめちゃくちゃ早いです」と語っています。

     片手はいつも盲導犬ヴィヴィッドくんのハーネスを握って行動するため、基本的に歩行中はスマホを操作しない、という浅井さん。どうしても使う必要がある場合は、アップルのAirPodsのようなワイヤレスのイヤホン(ヘッドセット)を片方だけ装着することもあるといいます。

     最近のワイヤレスイヤホンやヘッドセットの場合、外部の音を取り込むことができる上、耳に装着した本体にタッチセンサーが付いており、“手探り”で操作ができるのは便利ですね。それでも全盲の場合、視覚からの情報がないため、常に外部の音がしっかり聞こえるよう、両耳に装着することはないと浅井さんは語ってくれました。

     筆者は以前、耳の不自由な方とお話しした際、携帯電話のおかげで離れた場所でも文字や画像によるコミュニケーションの幅が広がった、ということを聞いた経験があります。それと同じように、スマホの機能向上により、視覚が不自由な方にとってもコミュニケーションの世界が広がっているんですね。

     スマホの音声操作は視覚障がい者だけでなく、麻痺などで指を使った操作が難しい人にとっても便利な機能。スマホの設定画面で「アクセシビリティ」の項目を開くと、実に様々な形で操作が可能になっていることが分かります。

     浅井さんは全盲である自身がどのように生活しているか、そしてどのように“世界”を感じているかをTwitterやInstagram(junjun_vivid)、そしてYouTubeの「暗闇からAloha」と「目の見えないじゅんじゅんと盲導犬ヴィヴィッドのポケットチャンネル」という2つのチャンネルで発信しています。SNSやYouTubeを通じ、浅井さんの暮らしぶりや活動を知ることで、視覚障がい者について理解を深めてみてはいかがでしょうか。

    <記事化協力>
    浅井純子さん(@nofkOzrKtKUViTE)

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 脳リブートルーム
    イベント・キャンペーン, 経済

    渋谷で脳を再起動!?“スマホ認知症”対策にもなる「脳リブートルーム」を体験してき…

  • ソフトバンク、19分で100%充電の「Xiaomi 14T Pro」新CM公開 乃木坂46池田がキメ顔で「充電はっや!」
    商品・物販, 経済

    ソフトバンク、19分で100%充電の「Xiaomi 14T Pro」新CM公開 …

  • 無断転載画像で中古端末の空売りか? 怪しさ満点の業者アカウントに凸してみた
    インターネット, 社会・物議

    無断転載画像で中古端末の空売りか? 怪しさ満点の業者アカウントに凸してみた

  • ソフトバンク新WEBCM「せかさんといて」篇
    エンタメ, 芸能人

    =LOVEの佐々木舞香と≠MEの鈴木瞳美がCM初共演!ソフトバンク新WEBCM「…

  • 日本全国ををめぐるキャラバンカーは2台
    イベント・キャンペーン, 経済

    サムスンが「Join the flip side #Galaxy 日本一周」実施…

  • Galaxy5世代目スマホ「Galaxy Z Flip5」レクチャー会が開催
    商品・物販, 経済

    Galaxy5世代目スマホ「Galaxy Z Flip5」レクチャー会が開催 イ…

  • 画像提供:きりさわさん(@Killysour)
    インターネット, おもしろ

    まるで蜃気楼 スマホが壊れて北海道の絶景が名作絵画風に変化

  • 写真を見る限りは、どこにでもあるただの歩行者案内板
    インターネット, びっくり・驚き

    USB充電できる名古屋の「歩行者案内板」が話題 災害時にも使用可能

  • パパと娘の連携プレイが大成功
    インターネット, 社会・物議

    「今日ママの不機嫌レベル9」SNSを使ったパパと娘の連携プレイが大成功 

  • 「悪口など会話について」の問題が起きたと回答
    社会, 経済

    4割の小中学生がSNSのグループチャットを利用 ニフティが「友だち・グループ」調…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • Web展示「違いを知ることからはじめよう展」
    社会, 経済

    生理やPMSテーマのWeb展示、ツムラが公開 約5000人来場の企画展を再構成

  • 京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    京都アニメーションをかたる偽サイト複数確認 公式が注意喚起

  • 博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢
    エンタメ, 舞台

    博多座、高額転売者の情報開示手続きへ 「看過できない」と強い姿勢

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • トピックス

    1. 「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      「LINEグループ作成」を要求する詐欺メールに注意 海外のサイバー監視が日本向け攻撃を警告

      海外のサイバー脅威情報を発信する「Hackmanac」が12月19日、日本国内の複数の組織を標的とし…
    2. 電話対応の様子(NORAD Tracks Santa Newsroom)

      NORAD、サンタ追跡作戦に万全の体制 即時追跡方針を強調

      米国防総省は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)による重要ミッション「サンタ追跡作戦」を、2025…
    3. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…

    編集部おすすめ

    1. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    2. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    3. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    4. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    5. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト