埼玉県川越市といえば、「小江戸」とも称される古くからの街並みが特徴的。「世に小京都は数あれど、小江戸は川越ばかりなり」とも謡われ、現在も観光地として人気を博しています。
そんな川越の街を、デジタルアーカイブした「VR(仮想現実)」が、Twitterで反響を呼んでいます。
「川越の街並み『小江戸』をVR化してみた。時の鐘や蔵造りの建物をデジタルアーカイブ。バーチャル観光にいかが?食べ歩きも出来ちゃいます。VRの起動は続きからどうぞー #小江戸VR」
Twitter上でVR動画を公開したのは、AR(拡張現実)やMR(複合現実)によるコンテンツ、サービス開発を提供している株式会社ホロラボに所属する藤原龍さん(以下、藤原さん)。
「川越を訪れたときに、その街並みに一目惚れしたのがきっかけなんです。『この素敵な空間をより多くの人と共有したい』と思い制作しました」
藤原さんは、これまでも様々なデジタルアートを制作。過去には「首里城(沖縄)」「鎌倉・銭洗弁財天(神奈川)」「旧都城市民会館(宮崎)」といった「歴史的建造物」を再現しているのも特筆すべき点。
「『歴史ある建物をデジタルアーカイブしたい』という思いがあるんです。建物の中には、保存が困難なため、取り壊しとなってしまうものもあるので、せめてデジタルという形でも残せたらと……」
今回は、以前から構想にあったという「バーチャル観光」の可能性を探るべく、小江戸・川越の街並みをVRで再現されました。フォトグラメトリ(撮影したリアルの被写体を、3DCGモデルに作成すること)という手法を用いて、実在する建物のデジタルアーカイブを行っています。
動画内では、蔵造りの街並みが立ち並ぶホームストレートを走行。「時の鐘」といった、川越の人気スポットも訪問可能となっています。
また、川越といえば、様々なご当地グルメを擁しているのも特徴です。小江戸VRではそれらを食べながら観光する「食べ歩き」も実装。「実際に現地で購入した食べ物をフォトグラメトリしました」と、ワールド内で様々な食べ物を配置しています。
ちなみにこの食べ物、VR内でインタラクトする(触れる)ことで、本当に食事をしているかのごとく減っていくという仕掛けも。こりゃすごい。
ところで、旅行や観光といえば、前段階から“イベント”があるというもの。旅の行程を考えているとき、移動している時、そして現地に着いたとき……などもまた、大切な思い出の1ページ。
しかしながら、これが「バーチャル」になるとそういった部分は割愛。「観光」といっても目的地点からの開始になるため、テンションを高めていく過程がありません。
「なので、『氷川神社』の風鈴の音が聞こえたり、川越の歴史や、文化に触れられる仕掛けを盛り込んだ“導入部”を設けました。そこから、チラリと見える川越の風景も含めて、『気持ちが高揚する時間』も設けているのがこだわりですね」
藤原さんは、本作を完成させるまでに約半年の制作期間を要しています。また、自宅から通える距離だったとはいえ、合計で9度も現地へ赴いて撮影を実施しています。
「フォトグラメトリの撮影をするときは、人のいない時間帯で行うので、早朝に実施しているんですが、その日は車両などがあったりして、撮影が行えないときもありました。また、VR内で流れる音は、全て『現地の音』なんですが、これを収録したかったのも時間を要した理由です」
フォトグラメトリというのは、ガラスのカーテンウォールや、光沢感のあるパネルのある建造物には不向きだそうです。
川越に関しては、建造物が木や石をメインにして構成されていたため、それを行いやすい空間だったとのことですが、それでもガラス部分は一定数存在。それの修正のためにも時間を要したとのこと。
なお、藤原さんの作品は「首里城復元PJ・銭洗弁天VR・デジタル芸大・旧都城市民会館 ほかいろいろ」というTwitterのモーメントにまとめられています。
https://twitter.com/lileaLab/status/1459485610171723777
つくったものモーメント。https://t.co/W8ktzbEJNP
— 龍 lilea (@lileaLab) March 29, 2020
<記事化協力>
藤原 龍さん(@lileaLab)
株式会社ホロラボ
(向山純平)