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VRで空飛ぶ体験をすると高所恐怖がやわらぐ NICTが研究成果を発表

 仮想現実(VR)の世界で「自分が飛べる」と感じる体験をすると、高い場所に対する恐怖がやわらぐことが、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究によって明らかになりました。

 この研究成果は、2025年5月13日付でアメリカの科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されています。

  • ■ 「VRで飛ぶ体験」をした人ほど恐怖が減る

     研究チームは、高所恐怖の傾向がある人を対象に、VRを使った実験を行いました。参加者はまず、VRの身体に慣れるためのタスクを体験した後、地上300メートルの高さにある板の上を歩くという仮想空間での課題に取り組みました。その際、汗の量(SCR)と、参加者が感じた恐怖スコア(SFS)がそれぞれ計測されています。

     続いて、参加者は二つのグループに分けられました。一方のグループには、コントローラーを使ってVR空間を自由に低空飛行してもらい、もう一方のグループには、その飛行の様子を録画映像として視聴するのみの体験をしてもらいました。

     その後全員が、2回目の高所歩行の課題に取り組み、恐怖反応の変化が比較されています。

    実験環境と課題(画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構)

     すると、自ら飛行を体験したグループでは、汗の量も恐怖スコアも大きく減少していたことが確認されました。

    発汗の量を皮膚電気抵抗(SCR)として計測したデータ(画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構)

     さらに、「自分は飛行できるので落下しても危険ではない」と感じた人ほど、恐怖がより大きくやわらいでいたことも分かったそうです。

    主観的恐怖スコア(SFS)(画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構)

    ■ 「予測」が恐怖を和らげるカギに

     これまで恐怖を克服する方法としては、恐怖の対象に繰り返し触れることで慣れさせる方法が一般的でした。

     しかし今回の研究では、「自分の行動により安全な状態に移行できる」と感じること、すなわち“行動に基づいた予測”が、恐怖を減らすうえで重要であることが示されました。今後は、この方法が現実の環境でどのように役立つのか、また長期的な効果を明らかにすることで、VRを活用した治療や支援への応用が期待されています。

     なお、研究の詳細は、「Transition ability to safe states reduces fear responses to height」というタイトルで発表されています。
     

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