近年、新たな働き方として注目されている「フリーランス」。

 その名の通り、特定の企業に属さない「フリー」の立場で働くのが特徴ですが、実情を知っている方はまだまだ少ないのでは。

 実は筆者は、1年半もの間「フリーランス」を続けています。というわけで、その実態についてご紹介いたします。

■ 週休2日は変わらないけど、時間の過ごし方が大きく変わる

 筆者は現在、本稿を執筆しているおたくま経済新聞からは、「編集部ライター兼Twitter運用担当」として業務委託を受けています。つまり社員ではありません。

 そのため、他企業からの業務委託も請け負っています。詳細についてはお話しできませんが、内容としてはSNS運用のアドバイザー。現状はその2つを柱として、フリーランス業をやりくりしています。

 日々過ごしていく上で、サラリーマン時代と異なるのが「時間配分」。私は勤務形態としては、「土日祝は原則休日」という「完全週休二日制」を取っていますが、一方で「平日40時間」の使い方はこれまでと大きく異なります。

■ 全てにおいて自由裁量だけど自己管理が大事

 現状で一番多い時間配分は以下の通り。
 
 週3:ライター業務
 週1:SNS運用アドバイザー
 週1:仕事の整理

 といっても、週によって流動的。ライター業が多い週もあれば逆も然り。セミナーや取材などで外出することもあります。曜日にしても毎週バラバラ。直前になって詳細が固まるなんてザラです。

 また「週3:ライター業務」と書きましたが、私はおたくま経済新聞では、公式Twitter運用担当でもあります。これに関しては、よほどのことがない限りは毎日業務を遂行しています。

 「じゃあなんで記載しないんだ」というと、それは指さえ動かせば出来る仕事だから。「ながら」が出来るため、別枠扱いにしています。もっとも、全て人力かつゼロ予算で、「1年半でフォロワー数を5000人近く増加させた」という実績が伴っての「ながら仕事」ですが。

 「週1:仕事の整理」というのも中々の曲者だったりします。言い換えれば「雑務」にもなるものですが、詳細は多岐にわたります。資料作り・スポットコンサル・企業訪問・取材・請求書の発行・実績整理・アイデア出しなどなど……なんでもやっています。

 そんな中で「就業時間」については、基本的に9時~18時にしています。しかしこれは、あくまで「そうしよう」と自分の意思で設定。つまり、全てにおいて自由裁量なのです。それがフリーランスの魅力でもありますが。

 なので、日々のスケジュールが分刻みになることもしばしあります。マルチタスクが当然の世界であり、スケジュール確認は不可欠。そのため、Googleカレンダーや手帳に書いて対応していますが、時々漏れそうになることもあります。無論事前に気づいて、”事故”が起こらないようにはしていますが。

 しかしながら、この時間の使い方が、自身のキャリア形成にも大きく影響するのです。自分が最適だと思った仕事を「選択と集中」しなければなりません。「タイム・イズ・マネー」はよく言ったものです。しみじみ。

■ 自分自身をブランディングしていく

 ただ、正直なところ、先に述べた私のスケジュール感は、特別すごいものではありません。そもそも私は「フリーランス2年生」。色々首を突っ込みたくとも、そこまでの実績もノウハウもスキルも積み上げられていないのです。

 とはいえ、最低限これくらいはこなせないと飯は食っていけません。この時点で少しでも「うわあ……」と感じてしまった人は、はっきり言ってフリーランスには不向きです。

 そもそもフリーランスというのは、複数企業と仕事を請け負うことで、会社員よりも収益の分散化と最大化を狙えるのがウリ。しかしそうなるためには、日々のスキルアップと明確な実績を積み重ねていかないといけません。

 私の場合だと、ライターですので、担当記事が配信されたタイミングで、自分のSNSアカウントからも発信するようにしています。なぜならそれは、自分の作品であり、実績であり、そして自己紹介でもあるから。

 そんな「セルフプロデュース力」も、フリーランスを続けていく上では必須スキルとなってきます。積極果敢な営業活動で、自分から仕事を取りに行くくらいの心構えでちょうどいいくらいです。

 ただ、個人レベルで出来ることには限りはあります。その上でより効率的に、より効果が見込めるよう「自己PR」となると、SNSからの発信となるのです。「自分に興味を持つ人間」をどれだけ増やせるかが、重要なキーとなっていきます。

 そのためには、自分自身の経歴を、予めどこかのサイトに記載し、それを明示化しておくのも大切です。そこで私は、「wantedly」というサイトを活用し、各SNSのリンク先に貼り付けておきます。そうしておけば、もし仮に「向山純平ってどういう人だろう?」と興味を持ってくれる人がいた場合、一種の名刺にもなり得るからです。

 「っていうけど、実際それをして効果はあるの?」と感じられる方も多いかと思います。正直言うと、私も当初は「それってあんま意味ないよね?」と思っていました(笑)

 で、結論から申し上げますと、効果はあります。具体的に形になったものはまだ僅かですが、これまで担当した500本以上の記事を都度紹介し続けていくことで、誰かしらが興味を持ち、お声がけいただくケースも徐々に増えてきました。

 その中には、「生きていることが分かったので(笑)」というような理由で、Facebookのメッセンジャーから連絡が来たり、仕事ではありませんが、中学時代の友人から「久しぶり!元気にやっている?」と、十数年ぶりに連絡を受けたりということもありました。兎にも角にも、個人レベルでも情報発信は大切なのです。

■ 「源泉徴収」「領収書」は毎月確認しよう!

 フリーランス生活においても、肝心要なのは何といっても「収入面」。私は報酬(収入)については、サラリーマン時代同様、月ベースでいただいています。今は「webライター」「SNS運用」「ライブ配信」といった仕事を掛け持ちし、それぞれの支払日が異なるので、以前の「一括」よりも、ささやかながら心のゆとりを感じることもあります(笑)

 しかしながら、フリーランスだと、自分で請求金額などの「計算」をしなければなりません。「これも報酬に含まれますよね?」と、シビアに交渉する場面もあります。そうでないと、中々上積みは得られないものなので。

 それと同時に計算しなければならないのが「源泉徴収」。最終的に「所得税」に繋がる金額で、毎月算出するのが望ましいものです。

 会社員だと経理などが行い、多くの方は年の瀬に「年末調整」をするだけで問題ありません。しかしフリーランスだと、税理士を雇わない限りは自分で行わないといけません。そしてそれは、税務署に自分の収入を報告するという、年に一度の大イベント「確定申告」に直結するもの。「収入」に加え、「保険料」「所得税」を算出しなければなりません。

 先ほど述べた通り、フリーランスは様々な企業と契約を結んで仕事が出来るのがウリ。一つの企業に所属する(縛られる)よりも、リスク分散にも繋がります。

 しかし一方で、契約社が多ければ多いほど、毎月の請求金額を計算する手間も増えていきます。もっとも、それは「経済的余裕がある」ともいえるので、税理士を雇うという攻略法もありますが。

 また、毎月の支払いを求める「請求書」に合わせ、必要になってくるのが「領収書」です。会社員でも「経費申請」という形で実施しますが、フリーランスだと、より「経費」の内訳が細分化されます。多くの方は在宅ワーカーでもあるため、それにあたるものがかなり多かったりするのです。

 そのために、お金(特に税金)の知識は非常に重要になってきます。それを嫌い、フリーランスを断念する方もいるほどなのですが、継続したいなら怠るわけにはいきません。何故ならそれは、最悪の場合「脱税」にも繋がっていくからです。「信頼」で成り立つ「フリーランス」においてそれは死活問題。絶対に避けなければなりません。

 なので私も、毎月月末にお金の計算をする時間を必ず設けます。これがもう億劫。そして毎月「自分の稼ぎってこんなもんなのか……」という現実と直面する「イベント」が100パーセント発生します。なので、一定水準のメンタルもないとやっていけません(笑)

■ フリーランスって儲かるの?

 先述の通り、私はフリーランス歴1年半の人間ですが、実はフリーランスの「1年生存率」は7割ほど。つまり3割の人間は廃業しています。これは年が経つにつれて顕著になっていき、「フリーランス10年生存率」にいたっては約1割しかありません。これは飲食店などの開業でも同様の話ですね。

 それだけ生存競争が激しい世界なため、何だかんだ1年生き永らえている私は、最近よく「フリーランスって実際どうなん?(儲かるの?)」的な質問をされることが増えてきました。

 経験則を含めて話すと、1年目は正直ドブに捨てる感覚でやらないといけません。特に最初の半年は、就業環境にも慣れる必要があり、最初の正念場です。

 余談ですが私は、フリーランスになる直前に所属していた企業から、事前通告もなしに突然解雇を告げられてしまいました。

 このため「下準備皆無のゼロスタート」でフリーランスをする羽目になった人間だったりします。元々フリーランスをするつもりなんて、これっぽっちもなかったのです。

 ちなみに私がライターになったそもそもの経緯は、“ニート”になった翌日に、「YOU、ライターになっちゃいなYO!」とおたくま編集部から、直々にお誘いが来たからという冗談みたいな理由です。(本当にこう言われました)

 ライティングの実績はプレスリリースを数本書いた程度のド素人によく声をかけてきたとおもいます。しかし、今では500本以上も記事を執筆。いっぱしのライターになったなと、我ながら感心しています(自慢ではありません)。

 失礼、脱線しました。なので当初は、就活や前所属との係争もこなしつつ、成り行きではじめたライターをこなしていくという状況下でした。言うまでもありませんが、フリーランス業というのは、本来は始めるために一定の準備期間があった方が望ましいです。それがあったとしても、上手くいく保障はありませんが……。

 また私の場合、最初の半年間というのは、ライター業に加え、就職活動と前所属との係争も併行して行っていました。言うなれば「余分なこと」をしていたのです。

 ただ、そうしていくうちに、腰かけだったはずのライター業に慣れていき、それなりに板についてきました。加えて、別の仕事のオファーが舞い込み、それがライターと兼務して行える類(SNS運用アドバイザー)だったため、結果として複業をこなすパラレルワーカーになりました。2021年の初めの頃の話です。なお係争の方に関しては、多忙になったために、それに割く時間がなくなり停滞しています。

 というわけで、私のフリーランス生活はかなり特殊なケースといえるのですが、しかし昨今のコロナ禍ですと、案外そういったイレギュラーな形でフリーランスを始めた方が多いようにも感じます。

 そんな中で、これまで継続できてきたのは、サラリーマンでなくても収益化できる「自分だけスキル」があったからだと推察しています。

 先述の通り、「webライター」に関しては、この1年半で新たに培ったスキルですが(今でも「何で声かけたんやろう?」と思うことがあります)、一方で「SNS運用」に関しては、元々私が築き上げた財産。結果的にそれが、生計を立てるものに繋がっているとは不思議なものです。

 なので、これからフリーランス生活を検討している方は、「自分の保有スキルは、会社の後ろ盾(会社の看板)がなくとも通用するノウハウか」ということをまず考えてみてください。

 敢えてこういう言い方をしますが、企業というのは、一定のクオリティが担保されているのが前提ですが、比較的安価に委託可能な取引先が存在するなら、案外そこへ発注する傾向にあります。

 実際に私も、会社員時代に発注側だったことがあるため、これはつくづく感じます。社員というのは、たとえ“ヒラ”でも意外と高コストな存在。“時給換算”にすると、コスパの悪い仕事が間々あるのも理由です。

 そしてその「委託先」というのが、フリーランスだったりもするのです。デザインだったり、SNSや広告運用だったり、プレスリリースの作成(ライティング)だったり……です。余談ですが、先日「大人がなりたい職業ランキング」なるものが発表され、ランクインしていた職業の中に、「ライター」「デザイナー」「プログラマー」といったものがありました。見事な裏付けです。

 ただし、委託をしていた際のやり取りを思い出してみても、支払額は大した額ではありません。実際私の稼ぎも、1年半という期間を考慮しても精々「ギリギリセーフ」といったところ。賞与などを鑑みたら、「いやアウトでしょ」と言われても甘んじて受け入れるしかない程度です。

 念のために言っておきますが、私は発注元に対して、不満を述べているわけではありません。寧ろ恩に感じています。

 しかし……お金というのは本当に大切。私もこの1年半で、随分と「金に細かい人間」になったという自覚があります。コツコツと自分のSNSで発信をするのは、それに対する「現状打破」という側面も有しているのです。

■ まずは「副業」からはじめてみよう

 ところで私は、「フリーランス絶対主義者」ではありません。ぶっちゃけ向き不向きはあるでしょう。仕事が出来る出来ないに関わらず、「肌に合わない」という方が一定数存在する働き方です。

 ちなみに私は独身ですが、家庭がある中でフリーランス転向を考えている方もいます。しかしながら、収入が安定した社員から、それが不安定なフリーランスへ転向というのは、かなりのハードルを伴います。一歩間違えれば、路頭に迷う可能性も十二分にあるからです。お子さんがいらっしゃれば、毎年何らかの“固定費”が発生します。その点を考慮して見送る方もいるでしょう。

 ですので、まず「副業」レベルで試してみてはいかがでしょうか。私のような「複業」と違って、お小遣い稼ぎで行えるものもあります。そこで腕試しをしてから、フリーランス生活を検討するのも決して遅い話ではありません。その時点で「向いていない」と感じて、社員生活を継続するのもひとつの選択肢です。

 ただし「副業」は、所属企業が予め“法整備”しておかないと、続けるのが難しくもあります。隠れてやっている方も存在しますが、税金の支払いなど余分な手間もありますし、発覚した際のトラブルも憂慮しなければなりません。反面、人材の流出を過度に恐れて、一向にそれを実践しない企業も多く存在します。

 そのため「お試し期間」がなく、「ぶっつけ本番」になるケースが多いというのが現状の問題点。実際のフリーランスのイメージの乖離が発生しているのも、それが要因のひとつでしょう。

■ 「身の程を知る」ということ

 長々と書き連ねましたが、私はフリーランス生活を継続するのに一番大切なことは、別にあると考えています。

 それは「健康」。「いやいや当然のことでしょ。寧ろ在宅だし心配ないんじゃ?」と感じられた方が多いかもしれません。でもこれが最も痛感することなのです。

 フリーランスというのは、言い換えれば「個人事業主」。つまり、やろうと思えば24時間365日働いても問題なし。そしてそれは自己責任なので咎められません。

 もちろんそれをすると、いずれ体調を崩してしまうリスクがあります。しかしながら、自分以外に歯止め役がいないため、「もうちょっとやろう……」とついついタスクをこなしてしまいがち。極端なことをいえば、「今日はしんどいからお休み!」と宣言し、休息を作るくらいの方が、意外と継続できたりします。

 また、フリーランス業というのは、得てして運動不足に陥りがち。「起きてそのまま仕事、そのまま食事、そのまま風呂、そのまま就寝」で過ごすことも可能なので、下手をすれば1秒たりとも外に出ない日も普通にあります。

 ただそれを続けると、いずれ腰痛や肥満のリスクが高まってきます。ほんの少し外に出て、太陽を浴びるだけでも変わるので、程よい息抜きでリフレッシュして仕事に取り組むのが望ましいです。なおこの2点は、私の喫緊の課題でもあります。今回大いなる自戒をこめつつ、執筆しております。

 「健康」というのは、普段の仕事のやり方でも大きく影響されます。

 フリーランスの場合、「仕事は選ぶ」ということが重要だったりします。これは、サラリーマンだとともすれば否定的に見られがちな行為ですが、フリーランスに関しては、仕事を抱え込み過ぎて「自爆」するのを防ぐために必要。

 「自分のキャパシティを自覚する」のは重要スキルです。それを怠ると、先述の健康管理や運動不足にも繋がっていきます。

 出来るだけ早くに計算できる収益源を複数作るのが、フリーランス成功への近道です。ただそのために、あれこれ手を出せばいいというものでもありません。ある意味で自分を弁える潔さも大切。「身の程を知る」「急がば回れ」です。

 と、いうわけで結局のところ、心技体いずれも備わってないとこなせないのがフリーランス。なので、自身のバランスの最適解を見つければ、会社員以上に得られるものが大きい働き方ともいえます。

 実際私も、ここ最近はそれによる「化学変化」を起こすことも徐々に増えてきました。願わくばもう少し収益にも反映したいところですが……(笑)

 今後、働き方はますます多様化することが考えられます。皆さんも今一度、自分のスキルの棚卸しをしてみてもいいのではないでしょうか。

【向山純平:筆者プロフィール】
1987年生まれ。兵庫県姫路市出身。香川大学卒業。
食品会社数社を渡り歩いたのち、現在はフリーでSNSマーケターやライターとして活動。