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もっと前から知っていたら……ママから保育士になって驚いたこと

 私が保育士になったのは今から約5年前。上の2人の子どもはすでに卒園し、一番下の息子が1歳になるタイミングで、保育士として働くようになりました。

 私の住む自治体では、親が働いている保育園に子どもを預けることはできないので、現在は、息子を別の保育園に預け、私は公立の大規模保育園で働いています。

 ママとして2人の子どもを卒園させた私。保育園についてはそれなりに詳しくなっていたつもりでいましたが、保育園で働きだしてから知ったことや驚いたことがたくさんあります。もっと前から知っていたら……と思うことも。ママから保育士になった私だからこそ思う、保育園での生活の中で驚いたことを紹介します。

 もちろん、すべての保育園に当てはまるとは限りませんので、参考程度に読んでくださいね。

  • ■ 昭和にタイムスリップしたような備品たち

     保育園で働き始めて最初に驚いたのが、全てが「昭和」なこと。かれこれ30年以上前の、私自身が保育園に通っていたころと変わらないのでは?と思うほどです。

     園によっては状況が違うかもしれませんが、私が働いている公立保育園では、足踏みオルガンが今でも現役で使用されていますし、この令和の時代に音が飛ぶような古いCDラジカセで音楽を流しています。

     園だよりこそ、パソコンで作成しますが、保育園内で配布される会議の議事録や保育の記録などは今でも手書きです。

     また、バリアフリーも進んでおらず、ちょっとした段差によく園児がつまずき危ないです。改築前の園舎は、未だに和式のトイレ。2階にひとつしかない洋式のトイレは取り合いになります。

     「自由遊びの時間」に使える折り紙や画用紙も、いつでもあるとは限りません。保育士がチラシを持参し、折り紙のサイズに切って「1人1枚だけだよ」と言って渡すこともあります。

     お絵描き用の紙も、1枚の紙を切って、分けて使う事があります。子どもたちにとって、1日に1枚しかもらえない自由遊びの折り紙やお絵描きの紙はとても大切なもので、遊び終わったら自分のカバンに入れて家に持ち帰ります。

     以前の私は、我が子が保育園から持って帰ってきたぐちゃぐちゃのチラシや、かばんの中で折れ曲がったお絵描きをぞんざいに扱っていました。子どもにとってはとても貴重なものなのに……。

     こうした状況もあり、園児に「持って帰るとママが捨てちゃうから持って帰りたくない。」と泣きながら言われたこともあります。

     全国のママに伝えたい!私たちが保育園バッグの中で見つける紙クズは、子どもにとっては貴重な1枚だということを。ママへのお手紙書いてきたよ!と持ち帰ってくるお絵描きは、1日に1枚しかもらえない紙かもしれません。それをママのために使ってくれているのです。価値のある1枚なんです。

     物を大切に使うことは、とても重要なことなのは理解しています。でも、折り紙や画用紙くらいは自由に使わせてあげたい。真っ白い紙や色のついた折り紙で、子どもの得意を伸ばしてあげたい。そう思うママは、私だけでしょうか?

    ■ 親が思っているより、子どもが自分でできることはたくさんある

     保育園では、乳児期から身の回りのことが自分でできるように徐々に練習していきます。

     例えば、2歳児クラスには、給食の後の一連の流れが全て自分だけでできる子もいます。

     トイレ→パジャマに着替える→着替え終わった服を畳む→布団に入る→寝る

     家では信じられないことではないでしょうか?もちろん個人差はありますが、お家ではできなくても、保育園ではできる子も多いようです。まだおしゃべりもできないような小さな子たちが、自ら布団に行って寝転がる姿は感動すら覚えます。

     年少に上がると、朝の準備や衣服の脱着、ロッカーの整理、トイレなど、クラスの半分以上の子がひとりでできるようになります。

     とはいえ、まだまだ幼い子どもです。タイトなジーパンや小さなボタンの付いたシャツは、自分で脱ぎ着することができません。

     中には、ズボンの着脱に手間取ってお漏らしをしてしまう子もいます。スカートが上手く扱えずに、トイレで尿がついて泣いてしまう子も。歯磨きの時間に、巾着袋が小さくてコップの出し入れが上手くいかず、癇癪を起こす子もいます。

     今となっては、我が子の保育園入園時に言われた「着脱しやすい服」と「サイズ指定のバッグや巾着」の意味が痛感できます。私自身、保育士になってからは、我が子の服のチョイスも変わりました。

     「自分でできた」を増やすため、我が子に悲しい思いをさせないために、着脱しやすい服と、扱いやすい保育園グッズを選ぶようになりました。

    ■ 個性の強い子どもが多い

     保育士になって衝撃を受けたのは、子どもひとりひとりの個性が想像以上に強いことでした。怒りっぽい子、落ち込みやすい子、我慢強い子、甘えん坊な子……子どもの数だけ個性があることを痛感しました。

     特に、私のような新人の保育士がとても難しいと感じるのはグレーゾーンの子どもたち。

     グレーゾーンとは「保育園での集団行動で、不適応行動があるものの、発達障害の診断がついていない子」のことです。診断がついていない子の中には、未受診の子どもも含まれます。

     発達障害の診断が付くと、加配と呼ばれる保育士が付き、その子にあわせて園生活をサポートしてくれます。グレーゾーンや発達障害の子の中には、こだわりが強く、気持ちの転換が難しい子もいます。診断が付いていれば、遊びの時間が過ぎても、パズルを最後までやらせてあげたり、気のすむまで園庭で遊ばせてあげたり、ストレスを軽減し安定した園生活を送ることができます。

     反対に、グレーゾーンの子たちには特別に保育士がつくことはできず、特別扱いもできないため、他の子と同じように生活をしなければなりません。

     教室から猛ダッシュで飛び出してしまう子、お友達に次々に危害を加える子、自分で自分のことを叩いてしまう子、急に泣き叫ぶ子、手洗いが病的にやめられない子……。未熟者の私にとって、その子たちに他の子と同じように行動してもらうのは至難の業です。

     保育士になる前に描いていた、ゆっくり絵本を読んだり、子どもたちと楽しく一緒に遊んだり。現実はそんなに甘くありませんでした。それぞれの子に合わせた保育、正解がわからない中で、日々試行錯誤を繰り返しています。

    ■ 先生が教室から消える!?子どもだけで過ごす時間

     私が保育士になって最も驚いたのは、先生が教室からいなくなるタイミングがある!ことです。乳児クラスは、複数の保育士がいるので、乳児だけになることはありませんが、幼児クラスでは、毎日起こる問題です。

     想像してください。園児30人が、教室に子どもだけでいる光景。もし保育士不在の間にケンカになったら?もし誰かが教室から出ていってしまったら?たとえ数分だとしても心配でたまりません。

     私の働いている保育園では、配膳も全て保育士が行うため、給食室まで給食のワゴンを取りに行かなければなりません。いくら急いでも5分以上はかかります。

     また、トイレが死角になっている教室もあるため、どちらも一緒に見ることが出来ません。嘔吐やお漏らしがあったときも教室を離れて処理をしなければなりません。

     実際に、保育士がいない間にもめごとが起こることは良くありますし、子どもだけのトイレでケンカが始まることも。

     保育士不足が蔓延し、この状況に慣れてしまっているのか、それとも私が過保護なのか……。今でも子どもたちをおいて教室を離れるのは不安でたまりません。

    * * * * *

     以上、保育士になって驚いたことを、ママ目線でお伝えしました。

     何度も言いますが、全ての保育園がそうであるとは限りません。自治体によって随分差があるようで、設備の行き届いた新しい保育園もたくさんあります。少しでも保育園の日常を知ってもらえると嬉しいです。

    【一柳ひとみ:筆者プロフィール】
    都心にあるシティホテルで、サービススタッフ、宴会担当や婚礼担当(ウエディングプランナー)として、10年以上勤務。現在は3児の子をもつ母。保育士として働きつつ、臨時で結婚式の仕事やライター業も行っている。

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