おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

「変なバイク作る系ユーチューバー」がAKIRA「金田のバイク」再現に挑戦

 往年の名作「AKIRA」といえば、主人公「金田正太郎」が駆る「金田のバイク」が印象的。1988年に公開されたアニメーション映画の冒頭で見せる「スライドブレーキシーン」は、アニメ史上屈指の名場面のひとつとして語り継がれています。

 そんな「金田のバイク」を、自作ファンアートとして再現しようと挑戦するユーチューバーがいます。

  •  「上がるには上がる」とのつぶやきとともに、20秒超の動画をTwitterに投稿したのは綾人さん。「てるてるボーイズ」という屋号で、ユーチューバー活動をしている人物です。

     チャンネルでは、「自分で出来ることは自分でやるスタイルです」という信条のもと、自身で溶接・塗装・FRP加工などといった作業を行い自作した、オリジナルバイクの製作や改造に関する動画を配信されています。

     今回のTwitter投稿動画においては、「エアサス(エアーサスペンション)」と呼ばれる空気圧でバイクの車高を調整する機構のテストをしている様子を紹介しています。撮影当日は風の強い日だったようで、髪をなびかせつつ「プシュー」という空気音がエンジンのエキゾースト音の代わりに響いています。

    動画内でエアサスペンションのチェックをしている投稿者。

    「プシュー」という空気音とともに作動。

     それにしても、流線型のフロントカウルに、テールカウルの盛り上がり、大型タイヤ全体を覆いつくすかのようなホイールが特徴的なバイクですね。ピーキーが過ぎて、モーターのコイルが温まってきそうです。

     思わず“さん付け”してしまいそうな風貌ですが、実はこの動画は、綾人さんが「てるてるボーイズ」にて取り組んでいる「金田のバイク」ファンアート製作過程の一幕を映したもの。

     「金田のバイク」といえば、試作やモックアップレベルでは展開されているものの、劇場版公開から30年以上経った2022年現在も、市販化されていない“車種”。綾人さんは今回再現するにあたり、ベースとなる車種はヤマハが販売展開する「マジェスティ250」を選択して、「改造バイク」という形で自作されています。

     ちなみに、当該車種の排気量は「ニーハン(250cc)」。そのため、車体全長は道路運送車両法施行規則において、2.5メートル以内に納める必要があります。

     一方「金田のバイク」の全長設定は約3メートル。つまり全長で0.5メートル分のダウンサイジングが必須なのですが、綾人さん曰く、この差分によってとある課題が発生するそうです。

     「車格が小さくなればなるほど、内部に収めるパーツのクリアランス(すき間)の保持が、かなりシビアになってくるんです。そのため、フレームの加工やデザイン変更も行っています」

     可能な限り「原作」に近づけることを目指しながらも、上記の事情から「オリジナル要素」も取り入れているという綾人さん。その中で、こだわりのポイントとして挙げてくれたのがフロントとリアのタイヤやホイール、サスペンションといった「足回り」。

    こだわりとして挙げたのが、前後の足回り部分。

    後輪部分。独特の形状を再現。

     AKIRA本編においても目を引いた部分のひとつですが、フロントに関しては原作のハブセンター的な構造とは違い、4本のフォークを使って独特の「太足」を再現しています。一方リアに関しては、候補パーツはいくつかピックアップはしているものの、現在調整中とのこと。

    4本のサスペンションを用いて独特の「太足」を表現。

     なお、フロント側に取り付けた4本のサスペンションですが、キャスター角が寝過ぎているため「動きの制御」に関しても悩みの種とのこと。現状は、ホイールの接続部分側からアームを介して動かす「ボトムリンク」式の動きを想定しているそうです。

    サスペンションの動きの制御に苦労しているんだそう。

     他にはステアリング周辺に、ハンドル部分とカウル部分の上げ下げ(チルト・アップ)が出来る機構を搭載しています。こちらは、スイッチを操作することでロックが解除され、取り付けた駆動装置(アクチュエータ)が伸縮し、「ウイーン」と音立てながら動かせるという仕組み。

    フロントカウルとハンドルも上げ下げも実装。

    スイッチの操作でロック解除が可能。

    取り付けた駆動装置(アクチュエータ)が作動する仕組みとなっています。

     と、現時点でも、見どころ満載のマシンに仕上げている綾人さん。しかしながら、AKIRA劇中でも金田が鉄雄に言ったように、扱いの難しい「ピーキー」の権化ともいえるのが「金田のバイク」でもあります。

     投稿時点での完成度は「約40%」という綾人さん。直近の課題としては、「アクリルスクリーンの製作」「モニター、ホイールリム部の発光」「モーター音」「エンジンのオーバーホールの稼働リンクの製作」といった点を挙げられています。

     「てるてるボーイズ」にて直近で公開した動画では、リアサス部分の改良に目途がついたとはいえ、現状はようやく外観の概要が固まってきたといったところです。

     とはいえ、綾人さんの挑戦は、大いなるロマンに溢れたものでもあることもまた確か。「金田のバイク」といえば、超電動発電機で駆動される電動バイクの側面を持つマシンですが、世界的に電動モビリティが普及してきつつある現代社会において、「時代が追い付いた」取り組みを行うことの意義もまた、十二分に感じられるのではないでしょうか。

     完成にはまだしばしの時間を要することは否めませんが、筆者は今後も綾人さんの「DIY」を注視していきたいと思います。

    <記事化協力>
    綾人(てるてるボーイズ )さん(@partner1107)

    (向山純平)

    あわせて読みたい関連記事
  • 弁当箱から自作 こだわりが凄すぎる「8番出口弁当」に圧倒
    ゲーム, ニュース・話題

    弁当箱から自作 こだわりが凄すぎる「8番出口弁当」に圧倒

  • 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生
    ゲーム, ニュース・話題

    26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落か…

  • 「推し愛」で生まれた海の化身 ナス製カイオーガ精霊馬が24万いいね
    ゲーム, ニュース・話題

    「推し愛」で生まれた海の化身 ナス製カイオーガ精霊馬が24万いいね

  • もらったバイクで走り出す……けど!? 世にも珍しいハムスターの“交通事故”
    インターネット, おもしろ

    もらったバイクで走り出す……けど!? 世にも珍しいハムスターの“交通事故”

  • 「ジオン水泳部」がスイーツ&パンに変身?食欲そそる塗装作品に注目
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「ジオン水泳部」がスイーツ&パンに変身?食欲そそる塗装作品に注目

  • まさに「まな板の上のコイキング」……粘土で再現されたファンアートが切ない
    ゲーム, ニュース・話題

    まさに「まな板の上のコイキング」……粘土で再現されたファンアートが切ない

  • 「ゆゆ式」縁ちゃんが“コンセントの顔”に! 世界の規格を表現したファンアートが話題
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「ゆゆ式」縁ちゃんが“コンセントの顔”に! 世界の規格を表現したファンアートが話…

  • 「ジークアクスハロ」のファンアートが凄まじい完成度 劇中のパック状態も再現
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「ジークアクスハロ」のファンアートが凄まじい完成度 劇中のパック状態も再現

  • 小石で描かれる斬新ファンアート 映画「碁盤斬り」草彅剛の肖像を描く
    インターネット, びっくり・驚き

    小石で描かれる斬新ファンアート 映画「碁盤斬り」草彅剛の肖像を描く

  • 配信者はんじょう、活動自粛を報告 情報商材ビジネス関与の過去を謝罪
    インターネット, 社会・物議

    配信者はんじょう、活動自粛を報告 情報商材ビジネス関与の過去を謝罪

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 江口拓也さん&鬼頭明里さん、“声で伝える広報”第2章へ ENEOS「#こえ報部」新企画が始動
    イベント・キャンペーン, 経済

    江口拓也さん&鬼頭明里さん、“声で伝える広報”第2章へ ENEOS「#こえ報部」…

  • 旨辛ユッケジャンクッパ風スープ
    商品・物販

    ダイドードリンコ、韓国の味わいを缶スープで再現 「旨辛ユッケジャンクッパ風スープ…

  • 新作ゲーム「裏バイト:逃亡禁止 たつ子の謎」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「裏バイト:逃亡禁止」の恐怖をゲームで 小学館がマダミス「たつ子の謎」を11月配…

  • 新物板うに手巻きセット(5貫分)
    商品・物販, 経済

    くら寿司、旬の「新物うに」登場 板うに手巻きセットや北海たこうにも販売

  • 無印良品、大盛りカレーを拡充 和出汁仕立てと香味野菜デミグラス登場
    商品・物販, 経済

    無印良品、大盛りカレーを拡充 和出汁仕立てと香味野菜デミグラス登場

  • OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能に
    インターネット, サービス・テクノロジー

    OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能…

  • トピックス

    1. 母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      母に何気なく70年万博の話をしたら……“55年前の資料”にテンション爆上がり

      大阪・関西万博をきっかけに、55年前の1970年の大阪万博(以下、70年万博)に興味を抱くようになっ…
    2. ハチワレ特製「暗殺者のチャルメラ」を再現 トマトと粉チーズでインスタントラーメンが大変身

      ハチワレ特製「暗殺者のチャルメラ」を再現 トマトと粉チーズでインスタントラーメンが大変身

      10月1日にXで公開された漫画「ちいかわ」にて、ハチワレがちいかわに振る舞った“暗殺者のチャルメラ”…
    3. 「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「もしかして、フツーの人っておなか空いてる時以外おなか空いてないの?」そんな衝撃の(?)問いかけとと…

    編集部おすすめ

    1. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    2. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    3. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    4. 「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」のロケ地として知られる静岡市清水区で、作品ゆかりの企画を集めた大型オフラインイベント「清水 ビー・バップ・…
    5. 第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京アニのセカイ展―』

      京都アニ「第7回ファン感謝イベント」追加情報を公開 新商品や書籍予約、グッズ二次予約も発表

      株式会社京都アニメーションは、10月25日・26日の2日間で開催予定の「第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト