おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

昨今のコンテンツは「使い捨て」が蔓延 ホラー漫画家・洋介犬が危惧する「エンタメ消費速度の爆速インフレ化」

 インターネットやSNSなどの急速な発展により、昨今は「情報収集」が容易な時代となりました。

 しかし同時にいくつかの負の側面も生み出しています。「エンタメの消費速度の爆速インフレ化」と形容し、Twitterに投稿した漫画家・洋介犬さんの問題提起に、3万を超えるいいねが寄せられています。

  • 「昨今のエンタメの消費速度が爆速インフレ化しているのが怖い。
    WEB漫画は週刊がデフォで隔週が『遅い』『サボり』と罵られる。
    YouTube動画は週二でアップしないと見捨てられる。
    どんどんどんどん加速している。
    作家側もどんどん損耗していく。
    大丈夫なのだろうか」

     洋介犬さんは、ホラー漫画家として広く活動している人物。6月21日には、ヤングチャンピオン烈(秋田書店)にて「LaLaLa…」を新たに連載開始します。

    6月21日からは、ヤングチャンピオン烈にて「LaLaLa」が新連載の洋介犬さん。

     さらにつぶやきの通り、Web媒体にも連載作品を持ち、「デジタル」と「アナログ」の“二刀流漫画家”。今回の投稿は、そんな自身の境遇だからこそ得た「気づき」だといいます。

     「例えば『紙』ですと、打ち合わせの段階で、連載は『週刊もしくは月刊』の間隔が基本なんですが、これがWebですと『週刊もしくは隔週』になるんです。大前提として、『月刊だと読者がついてこない』と考えられているためですね」

     「僕はどちらかというと『Web』に重心がある漫画家で、最近ではYouTubeアニメにも携わっていたので、それを当たり前のことと受け入れていました。ただ、そういった『激しい競争状況』を一度検証した方が良いのでは?という思いもあり、今回投稿することにしました」

     洋介犬さんが漫画家として日々直面する「作品に求められているスピード」についての今回の率直な本音には、3万を超えるいいねがよせられ、多くのコメントも届けられました。中には、もはや「週刊」ですら長く、まるで新聞の四コマ漫画のように、「日刊」で作品提供しているクリエイターからの声も。

     「『インターネットの普及で可視化されただけだ』といった声もありましたが、実際のところは、以前よりも『エンターテインメント』の作品数が比較にならないほど増えたのが要因かと思います。今はスマートフォンやソーシャルゲームの台頭で、『可処分時間(個人が使える自由時間)』の奪い合いが、より激化していくことも踏まえなければなりませんね」

     洋介犬さんが発した「危惧」については、筆者も以前、近い内容を耳にしたことがあります。

     その話をした人物は出版関係に携わっていましたが、曰く「ツール」の発達により、情報を取捨選択することが劇的に向上し、結果として様々な「コンテンツ」が可視化されるようになったと語っていました。以前なら一部の人間のみで嗜好された漫画やアニメといったものにも該当し、結果として、作品を愛好する同士の「コミュニティ」が容易に形成しやすくなっています。ちなみにこの話はコロナ以前に聞いたものですが、昨今では「オタ活」「推し活」などといった言葉で変換されていますね。

     反面、「様々なコンテンツの可視化」は、かつての「8時だョ!全員集合」のような「怪物番組」が生まれにくい土壌に変容しています。かつての日本は、「新聞」「テレビ」「雑誌」「ラジオ」の「マスメディア」から情報が流れていました。しかし現代は、それに「インターネット」などの「ソーシャル」が加わり、“4マス”がなくても情報収集が可能となっています。

     このことは、特定コンテンツへの「集約」が困難になることを意味します。各々が「好きなもの(コンテンツ)を、好きな時に、好きなだけ」収集できるのは、誰しもが納得できる「流行」が生まれにくくなっているのです。

     しかしながら、インターネットやSNSの普及は、冒頭述べた通り歓迎すべきことです。さらにいえば、もはや優劣をつけるのが困難になるほど「技術革新」も進み、「マス(紙)」と「ソーシャル(Web)」が双璧を成す存在となっています。「SNSで話題」というのは、お決まりの“謳い文句”のひとつです。

     そういった「事実」に対し、従来の価値観からのアップデートが出来ていない結果の認識の「ズレ」が、問題の根底にあると洋介犬さんは指摘しています。

     「『Web漫画』といえば、かつてはそこで書くことが『島流し』なんて揶揄もされるほど、地位の低いものでした。それが時代を経ていく中で、『アニメ化』される機会も増え、『大ヒット』といえる作品も生まれています。今や『紙』と双肩できるほどの地位を得ています。だからこそ、『エンタメの消費速度のインフレ化』については、解消すべき課題として認識しなければならないと思いますね」

    <記事化協力>
    洋介犬さん(@yohsuken)

    (向山純平)

    あわせて読みたい関連記事
  • 若者の一人暮らしにおけるネット環境に関する調査(UQコミュニケーションズ)
    企業・サービス, 経済

    引っ越しブルーの1位は「Wi-Fiが繋がらない」 UQが若者の一人暮らしにおける…

  • 画像提供:洋介犬さん(@yohsuken)
    インターネット, おもしろ

    相談あるある 自分を後押ししてほしいだけの相談者に「知らねェ~!!」

  • オフ会等で失敗した「後悔ハンドルネーム」を募集したら……エピソードが面白過ぎた 「第二の名前」として恥ずかしくない名付けを
    インターネット, おもしろ

    みんなの「後悔ハンドルネーム」を募集したら面白すぎた 抱腹絶倒の残念エピソードと…

  • 「岩谷時子賞」授与式
    エンタメ, 芸能人

    第12回「岩谷時子賞」授賞式が開催 受賞者のコメントや歌声をリアルタイムで無料生…

  • 怪しいサイトをチェックするツール
    インターネット, サービス・テクノロジー

    このURLは有害?無害?「怪しいサイト」を事前チェックする手法とツール

  • 画像提供:赤木真紅朗さん(@shin_akagi)
    インターネット, 社会・物議

    ネットを見ていた母親からSOSの電話 悪質なサポート詐欺に注意

  • 画像提供:エレコム公式Twitter(@elecom_pr)
    ライフ, 雑学

    「LANケーブルが抜けない」ときのライフハックをエレコム公式が紹介 マイナスドラ…

  • iPhoneのスクショ黒塗りをアップした様子
    ライフ, 雑学

    【知らんかった】写真をiPhoneの黒塗り機能で加工→SNSアップは危険!?実は…

  • 画像は滝沢ガレソ氏Twitterアカウント(3月13日投稿画面)のスクリーンショットです。
    インターネット, 社会・物議

    滝沢ガレソが運営方針について意見を募集 否定から肯定まであつまる結果に

  • 暇つぶしの娯楽と化した「炎上」の今を考える
    インターネット, 社会・物議

    暇つぶしの娯楽と化した「炎上」の今を考える

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる
    エンタメ, 映画

    「ウォーキング・デッド」特化オークションが初開催 総額3億円超の落札集まる

  • ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)
    イベント・キャンペーン, 経済

    昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」…

  • 新商品「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ>」
    商品・物販, 経済

    焼きあごの香ばしさと細カタ麺の共演 「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ…

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    2. 工場労働者2138人、1万時間の作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場労働者2138人、1万時間の手作業映像をオープンソース化 ロボット向け学習に活用

      工場向け自動化ロボットの研究開発を行うテクノロジー企業、Build AIが、工場労働者2138人による合計1万時間の作業映像をオープンソース…
    3. お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      お菓子の家……ならぬ「つまみの家」誕生 お酒が進むオトナの創作料理

      「解体しながら飲む」が合言葉。童話でお馴染みの「お菓子の家」を、そのまま大人向けに置き換えたような、その名も「つまみの家」がXに登場しました…
    4. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    5. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト