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マイ竪穴式住居で「週末縄文人」 体当たり系古代YouTuberに活動をきく

 学校で歴史を学ぶ時、どうしても想像しにくいのが「当時の人々が何を感じ、考えていたか」ということ。現代の我々は歴史という「知恵の蓄積」があるので様々なことを知っていますが、それがない「不便が当たり前の世界」に生きていた人々は、いったいどうしていたのでしょう。

 それを実際に歴史をさかのぼり、縄文時代から日本人の文明史を追体験しているYouTuberがいます。「週末縄文人」という名で活動するサラリーマン2人に話をうかがいました。

  •  同じ会社の同期、という「週末縄文人」のお2人。縄文時代から現代にかけての文明史を追体験しようというきっかけは、新型コロナウイルス禍で感じた「都会のライフラインが断たれるかもしれない」というリアルな危機感だったといいます。

     「この文明の不安定さや、そこに頼り切ってる自分の足腰の弱さが見えた気がしました。そこで、同じ危機感を持っていた同期同士で、人類の文明をゼロから作り直して、強い足腰を手に入れようということで始めました」

     拠点となる土地を借り、いよいよ縄文の昔に立ち返っての生活を始めたお2人。まずは住む場所から……と、有名な「竪穴式住居」作りに着手しました。

    竪穴式住居のサイズ感(週末縄文人さん提供)

     ……とはいっても、住居を作るには材料を採取し、加工をしなければなりません。縄文人と同じように作ろうと、現代の道具であるナイフやノコギリは使わず、石器から作っていくことに。

     基本的なことは本や考古館の土器、復元住居などを観察して学んでいるそうですが、肝心の技術面について詳しく説明された資料はなかなか見つからなかったとのこと。このため、当時の人々と同じようにトライ&エラーを積み重ね、技術を身に付けたといいます。

    石器づくりを学ぶ(週末縄文人さん提供)

    ハンドアックスで木を切る(週末縄文人さん提供)

     石器も手に持って使うハンドアックスから始まり、木を切って柄を作れるようになったら石斧に移行。少しずつ文明は進化していき、木の棒で地面を掘り下げた後、木を切って皮を剥いた材料をツルで縛って骨組みを作るまでに至りました。

    石斧(週末縄文人さん提供)

    ナイフ形石器で木の皮を剥ぐ(週末縄文人さん提供)

    完成した骨組(週末縄文人さん提供)

     縄文時代の遺跡から出土した資料によれば、竪穴式住居は茅葺きが多かったようですが、現地で茅が入手できないため、入手しやすかったクマザサで葺いて一応の完成。完成までは30日ほどかかったそうで「会社では味わったことのない達成感でした(笑)」と喜びを語ってくれました。

    クマザサで葺く(週末縄文人さん提供)

    完成した竪穴式住居(週末縄文人さん提供)

     中に入ってみると、掘り下げた地面からの湿気があり、あまり居心地が良くありません。しかし、試しに中で炉を作り、火を焚いてみると状況が一変。地面は乾燥し、暖がとれる上にくん蒸効果もあり、虫も寄り付かなくなったのだとか。

     「縄文人の知恵に驚かされました。竪穴住居は、室内の炉で火を焚くことで暖をとれるし、同時に虫よけ、防カビ効果も得られます。梁に魚を吊しておけば煙で燻製も作れます。こんなにシンプルで合理的な建造物って現代にはあるだろうかと感動しました」

    内部を煙でいぶす(週末縄文人さん提供)

     その後、大人2人が寝るには少し狭かったので床面を拡張。木の枝で土を壊して手で外に排出し、掘削面は崩れないよう拳で叩いて固める「殴り仕上げ(本来の「なぐり仕上げ」は手斧で木を削ったままの仕上げをいう)」。拳の跡が期せずしてデザイン上のアクセントとなりました。

    穴掘り用の棒(週末縄文人さん提供)

    手でかき出す(週末縄文人さん提供)

    拡張なった内部(週末縄文人さん提供)

     もちろん、火をつけるのはマッチやライターではなく、摩擦熱から火をおこす原始的な方法。食事も実際に狩猟・採集で調達し、調理をしているそうです。

    狩猟・採集も経験(週末縄文人さん提供)

     当初は「そのまま焼く」だけだったのですが、徐々に煮炊きしたい欲が出て土器を作ることに。粘土を探すことから始まり、形を作って焚き火で焼成する縄文式土器の作り方を真似るのですが、なかなか順調にはいかないことで、縄文人の感覚が想像できるようになったといいます。

    土器づくり(週末縄文人さん提供)

     「2か月近くかけて粘土から作った土器が破裂したり、寒さの中、斧用の石を20時間磨いたりと、たしかに大変なことは多いです。ただ、その大変さの中にこそ発見があったりします。たとえば、土器を焼いているときの祈りたくなるような気持ちだったり、時間と労力をかけてできた道具を思わず『神』と言ってしまうような感覚。根拠はありませんが、縄文人も似たような感覚だったのかなあと勝手に想像するのが楽しいです」

    火に祈る(週末縄文人さん提供)

     このような「週末縄文生活」を続けて1年余り。手を使うことが多いので指先が硬くなり、スマホのタップ時に音が出てしまい、場合によってはタップに反応しないこともあるんだとか。それでも、縄文生活を経験することで知ったことも多いと話してくれました。

     「縄文生活をしていると、ある物ができるまでの工程や、そこに必要な材料が見えてきます。たとえば、土器を作るのに大量の薪が必要であることなど。これは現代で生きていてあまり考えてないなあと気づきました。このスマホを作るのに、何本の木が切られてるんだろうかと」

     活動を始めた当初、縄文時代の文明は1年ぐらいで網羅し、弥生時代へと移ろうと考えていたそうですが、体験すると縄文の奥深さを実感するように。

     「縄文時代は歴史の教科書では一瞬ですが、実際は1万3000年近く続いています。その世界はとても豊かで深い。すべてを網羅しないにしても、あと3年はかかるのではないでしょうか。まだ土器作りさえも成功していないので……道のりは長いです」

     お2人はこれからも週末ごとにタイムスリップし、縄文時代から順々に文明や文化を体験する生活を続け、動画をYouTubeチャンネルにアップしていくそうです。目指すは80歳ごろでの江戸時代到達。1万年余りの日本文明史を半世紀程度に圧縮する「週末縄文人」の試みは、きっと現代と古代をつなぐ何かを気づかせてくれることでしょう。

    <記事化協力>
    週末縄文人さん(@wkend_jomonjin)

    (咲村珠樹)

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