「徳川美術館 開館90周年記念特別展 国宝 初音の調度」が、4月12日~6月8日まで徳川美術館の本館展示室で開催されます。

 国宝「初音の調度」は、江戸時代の美を極めた豪華な嫁入り道具。蒔絵の最高傑作とも呼ばれている歴史の至宝が、10年振りに一挙公開されます。

 3代将軍・家光の長女・千代姫が尾張徳川家に嫁ぐ際に作られたのが国宝「初音の調度」。黄金に輝く豪華絢爛な蒔絵の傑作です。

 贅を尽くした材料と技術の粋を集めて製作された「初音の調度」。現存しているのは70件ですが、製作当時の数は300件とも推測されています。ただし、これは他の大名家の婚礼調度のほとんどが散逸されているなか、他に類を見ない奇跡ともいうべき現存数です。

国宝 初音蒔絵貝桶

 千代姫の死後、「初音の調度」は尾張家の菩提寺で、名古屋市にある建中寺の宝蔵に納められました。明治維新や第二次世界大戦など、逸失の危機を乗り越えて質・量ともに類例のない江戸時代を代表する蒔絵の名品として、今も守り伝えられています。

国宝 初音蒔絵大角赤手箱

 「初音の調度」の魅力の1つは、「意匠の中に隠された『源氏物語』の和歌の文字」。文字を意匠の一部として忍ばせ一体化させる技法は「葦手」といい、これは天皇家や将軍家などの家格の高い家のみが使用を許された技法です。

国宝 胡蝶蒔絵碁盤・碁笥

 慶事に用いられるおめでたい装飾として知られており、「初音の調度」にはこの雅やかな技法が贅沢に施されています。

国宝 初音蒔絵刀掛

 さらに「凝縮された超絶技巧」も魅力。様々な漆工芸の技法を駆使して作られており、1作品を見るだけでもその種類の多さに驚かされます。ひとつの作品にここまで多種多様な技法を取り入れた類例はなく、これが「初音の調度」が漆工芸の最高傑作と謳われる理由です。

初音蒔絵文台・硯箱

 作者は蒔絵師の幸阿弥長重。幸阿弥家は蒔絵師の家系で、なかでも長重は天皇家や大名家の道具を多数製作し、その名声を高めた人物です。多くの職人を束ねながら驚異的なスピードで婚礼調度を完成させたとのことです。

 「徳川美術館 開館90周年記念特別展 国宝 初音の調度」の前売券は、徳川美術館の公式オンラインチケットサイトのみで販売中。販売期間は、4月11日までとなっています。

情報提供:徳川美術館