生活のさまざまな場面で使われる針金。それを使って、美しい作品を作るアーティストがいます。ワイヤーワーク作家の山田命佳(みちか)さんは、一般的なシャープペンシルの芯とほぼ同じ太さ0.45mmの針金を手作業で曲げ、アクセサリーや曼荼羅などの作品を制作。その独特な技法についてうかがいました。

 山田さんが針金を素材に作品作りを始めたのは、長岡造形大学金属工芸コース1年生の頃。ワイヤーワークでは針金を曲げ、ねじり、編むことを重ね、繊細で美しい形を作り出します。

山田さんのワイヤーワーク作品(山田命佳さん提供)

 どのように作っているのかうかがうと「考え方は一筆書きと同じですが、模様を複雑にさせるために2~4本まとめて同時に曲げるのでほどいて1本になるわけではありません」とのこと。全体像を思い描きながら、手元の細かい作業を重ねていくというのは、編み物にも通じているかもしれません。

細かく手作業で針金を曲げて作られる(山田命佳さん提供)

 もともと手芸など細かい作業が得意という山田さん。「綺麗に仕上げるということに関しては特に苦労を感じたことはありません」と語りますが、一方で「ただ非常に細かい作業で大きな作品を仕上げるのでひたすら根気を続かせるのに必死です」とも。座りっぱなしの作業となるため、体も痛くなってくるのだとか。

 Twitterに投稿された曼荼羅は、2016年~2018年に手がけていたシリーズだといいます。大きい金色の作品は90cm四方で2か月がかり、銀色の作品は70cm四方で3週間という制作期間。どちらも銅線でできており、出来上がった後に金と銀のメッキが施されました。

70cm四方の曼荼羅作品(山田命佳さん提供)

 最近の作品では真鍮線を使い、メッキすることはないそうですが、シンプルに素材の色味と繊細なフォルムは華麗の一言。異素材である桜の落ち葉を編み込んだ作品は、複雑に絡み合う真鍮線と薄く壊れやすい落ち葉とが互いに響き合い、ハーモニーを奏でているかのようです。

個展「年輪」の出品作(山田命佳さん提供)

そのアップ(山田命佳さん提供)

 山田さんはワイヤーワークを体験できるワークショップも、東京・下北沢の「WASABI-Elisi」にて開催。毎月第一日曜日の13時より、ワイヤーを使ってのアクセサリー作りを教えています。

 2022年9月17日からは、東京・浅草橋のギャラリー「MAKII MASARU FINE ARTS(マキイマサルファインアーツ)」にて個展「年輪」が始まりました。今回は“瞬間の心模様”や“自身のルーツ”に焦点を当て、故郷の自然と絡み合う思いを異素材を使った作品で表現しているとのこと。時間は12時~19時(最終日も19時まで)、月・火・水休廊で会期は10月2日までとなっています。

<記事化協力>
山田命佳さん(@M_wireArt)

(咲村珠樹)