レジ業務や顧客対応などが主な仕事である接客業。経験したことがある方ならよくわかると思うのですが、初めて売場に立つときは「うまく対応できるかな……」と、緊張するものです。

 そんな新人スタッフの思いをくみ取って、客側も一緒に接客の練習台、いわゆる「チュートリアルモード」を演じることが密かに行われています。

スタバに行ったら新人さんだったらしく、「チュートリアルとして最適な客」のモードで注文したら、隣の教育係みたいな人に「ありがとうございます!」と言われて、なんだろう、その

へへっ

 こうつぶやいたのはSNSユーザー「かなかわ」さん。当時の詳しい状況をうかがい知ることは出来ませんが、文面から完全なるチュートリアルとしての役割が果たせている様子が伝わりますね。

 投稿には14万件もの「いいね」が付き、共感や同意の声が相次いで寄せられています。なんという優しい世界。

■ 「店員が尋ねたことだけ、ハッキリとした発音で返す」 相手のペースを乱さない

 かなかわさんに話を聞くと、こうした対応をするようになったのは中学時の職業体験にて、書店の仕事をした際にお客さんに優しい対応をしてもらったことがきっかけとのこと。やはり、一度経験した側だからこそ、色々と思うところがあったのでしょう。

 チュートリアルモードとして、かなかわさんが特に意識しているのは「店員が尋ねたことだけ、ハッキリとした発音で返す」こと。

 客側から矢継ぎ早に支払い方法や袋・ストローの要不要を伝えるのではなく、店員が質問した時だけ答えるなど、相手のペースに合わせて自分の要望を伝えるようにしたり、注文の前には「注文いいですか?」とワンクッション置き、いきなり声をかけないようにする、といったポイントも。まさに”逆”神対応に、新人さんも教育係の方も、さぞのびのびと接客出来たことでしょう。

 しかしながら、かなかわさん自身としては「自分がこうしているからといって、相手の接客のより良きを求めているわけでもない」と、どこまでも黒子に徹していたかった模様。

 店員の隣についていた教育係の方が意図を読み取り、「丁寧にありがとうございます」とお礼を言ったからこそ、自分がしていたことを自覚し、うれしくなったそうです。

■ 多様化するオペレーション 接客って難しいんです

 筆者自身も接客業出身者であるため、こうした客側の自主的な対応を非常にありがたく感じていたものです。もちろん、店員側からお願いするわけにはいかないですし、甘えと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、理不尽なクレームによりレジに立つのが怖くなってしまったというスタッフも過去何人も見てきました。

 特に今は現金、クレジットカードだけでなく、バーコード決済やQR決済、タッチ決済など支払い方法も多様化するなど、覚えなければいけないことが山のようにあるのです。何かしらのエラーが出ようものならまあ、あせるあせる。

 売場にいる以上、店員もプロであるべきですので、極度に気を遣う必要はないものの、「新人さんかな?」と気付いた時には、どうか寛容な気持ちで、優しく見守るつもりで接してもらえたら、店員のやる気や自信にも繋がります。こうした「チュートリアルモード」の輪が、もっと広がって欲しいですね。

<記事化協力>
かなかわさん(@kanakawa12

(山口弘剛)