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梶井基次郎の短編小説「桜の樹の下には」の世界観を切り文章で表現

 1枚の紙とハサミやナイフだけで芸術作品を生み出す「切り絵」。切り絵作家の梨々さんはデザインナイフを用いて、1枚の紙から切り「絵」ではなく切り「文章」を生み出して注目を集めています。

 梨々さんが切り「文章」にしたのは、梶井基次郎(1901年~1932年)の短編小説「桜の樹の下には」。文章の下には骨になった動物たちの姿も。小説の世界観を見事に表現した作品に目を奪われます。

  •  「A3紙が、文章になる」と今回の作品をSNSに投稿した梨々さん。「桜の樹の下には屍体が埋まっている~」と小説の文章が切り絵(切り文章)で表現されています。どこをどのように切ったら、1枚のA3の紙がこのようになるのか不思議でたまりません。

     梶井基次郎の作品から受け取った感情や想いをそのまま伝えられるような作品を作りたかったと語る梨々さん。最初は文字の中でも細かいところから切り始めて、最後に枠を切り抜いたそう。

    1枚のA3の紙

    最初は文字の中でも細かいところから切り始めて、最後に枠を切り抜いた

    ■ 1日17時間作業したことも

     完成までにかかった時間は約3週間で、150時間ほど。1日17時間ほど作業をしていた日もあったのだとか。凄い集中力ですね。これだけ長時間やるとなると、体力も相当必要になってくるのではないでしょうか。

    完成までにかかった時間は約3週間で、150時間ほど

     「ただ美しい物はなくおぞましいものを秘めている。汚くおぞましいからこそ美しいのが生まれる」と梨々さん。作っている時は、「梶井基次郎らしさ」を表現するのに非常に悩んだといいます。鬱々としながらも芯のある心が文章から伝わるように表現。

     梨々さんは「畏れを抱くほどに美しい桜の臓物を暴くように。ただし決して尊厳を失わない気高さと畏ろしさを表現したかったので苦心した」と語ります。

    文章とイラストの境界線を無くして別々にならないように繋げていくことにこだわった

     他にも文章とイラストの境界線を無くして別々にならないように繋げていくことにこだわったそう。濁点をひとつでも切り落としてしまうとそれまでの苦労がすべて水の泡になってしまうので、細心の注意を払いながら作業を進め、常に緊張していたと振り返ります。

     最後の外枠を外していく時に1番事故が起きやすいので、その緊張から解放されて完成した時は「できたっ!!」と歓喜。その後、脱力して放心状態のような感じに……。徐々に達成感がわいてくると、「完成してしまった」という寂しい気持ちも出てきたと複雑な心境を吐露。それだけ思いがつまった作品だったということが伝わってきました。

    <記事化協力>
    切り絵作家 梨々さん(@ririkirie

    (佐藤圭亮)

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