おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

インプレゾンビをやめた人 Xで話題のナイジェリア人「Ken chan」に話を聞いてみた

 X(旧:ツイッター)にて、いわゆる「インプレゾンビ」から、健全な情報発信アカウントへ脱却を図ったナイジェリア人男性が話題になっています。彼の名前は「Ken chan」さん(以下、けんちゃん)。

 バズっている投稿への無差別リプライという迷惑行為から、地元の情報や自身の日常を投稿するスタイルへと変化した彼に、今回コンタクトを取ることに成功しました。その一部始終を紹介していきます。

  •  けんちゃん(@OgbonnaKent)がインプレゾンビをやめるきっかけとなったのは、あるXユーザーが5月13日午前に日本語で投稿したアドバイス。「片言でもいいから日本語で地元の料理や音楽を撮影し、日本語学習の様子と共に投稿しましょう」といった形でインプレゾンビたちに運用スタイルの変更をうながしたことが始まりでした。

     この投稿に反応したのが、ナイジェリアに住むけんちゃん。早速、自分のいる町の写真を「ナイジェリアのラゴスの街並み」という日本語とともにポストしました。すると当該ポストには7万件を超える「いいね」が付き、940万ものインプレッションを獲得。

     その後も継続的に食事の様子や、屋台の風景を投稿し、いずれにおいても万バズを達成。フォロワー数も1万を超え、日本人からは親しみを込めて「けんちゃん」と呼ばれるように。結果的に方針転換は大成功を収めたようです。

     そんな「けんちゃん」に話をうかがいたく、DMを送ってみるとなんとすぐに返事が。いったいどんな話が聞けるでしょうか。以下にて弊社とのやり取りを記載していきます。

    インタビューを申し込んでみた

    ※実際のやりとりは英語にて行っています。日本語翻訳に際しては、できるだけオリジナルの意味を崩さないよう注意を払っています。よって表現を過剰にするなどの、エンタメ的演出は一切行っていません。

    ■ インタビューしてみた

    ―― Ken chanさんのプロフィールをお聞きします。今現在どの国に住んで、今何歳ですか?現在の仕事も教えてください。

     僕はナイジェリアのラゴス※に住んでいます。29歳です。(※ナイジェリアの最大都市)

     インバーターバッテリーを製造する会社の顧客対応/マーケティング部門で働いています。

    けんちゃん近影/画像提供:Ken chanさん(@OgbonnaKent)

    ―― 失礼かもしれませんが、現在の月収を教えてもらえませんか?

     7万ナイラです。(記事執筆時点:約7292円に相当)

    ―― インプレゾンビを始めたきっかけを教えてください。

     実は、インプレゾンビのことは全く知りませんでした。ただ3か月以内に500万インプレッションを獲得しようとしていただけなんです。

    ―― なぜツイッターで500万インプレッションを獲得しようとしたのですか?理由を教えてください。

     ツイッターからお金をもらうためには500万インプレッションが必要なんです。7万ナイラの給料だけでは生活が楽ではないので、収入を増やす方法を探していました。

    ―― つまり、ツイッターから収益を得たかったんですね?

     はい、収益が欲しい、というか必要なんです。

    ―― 誰かやり方を教えてくれたんですか?

     ツイッターで報酬をもらっている人たちの投稿を見て、仕組みを少し調べてみました。

    ―― 実際に毎月いくらの収入があれば生活が楽になると思いますか(ナイジェリアの通貨で)?

     それは生活スタイルによりますね。家賃だけでもかなり高額です。

    ―― 今住んでいる家の家賃はいくらですか?

     今はまだ自分の家はないんです。貯金中です。

    ―― 今は実家に住んでいるんですか?

     父親と一緒に住んでいますが、家は持ち家ではありません。

    ―― インプレゾンビをやっていた時、どんな気持ちでしたか?楽しかったですか?それとも嫌でしたか?

     正直に言うと、500万インプレッションの目標達成だけに集中していました。

    ―― インプレゾンビをやっている間、何も感じなかったんですか?

     どちらかというと不安を感じていました。

    ―― ツイッターで収益を得るためにはまずお金がかかりますよね……。

     そうですね、給料の中からサブスク代※を捻出しました。
    (※収益化には「プレミアム」プランへの加入が必要。料金は月額8ドルまたは現地通貨での相当額/8ドル=記事執筆時点1250円)

    ―― 昨日、日本人の間で目立つ方法についてツイッター上でアドバイスをもらいましたよね。それを聞いてどう思いましたか?

     最初は正直自信がなかったのですが、やってみたら想像以上に効果がありました。アドバイスをくれた方には感謝しています。

    ―― アドバイスを受け入れて、正直に日常を投稿するようになりました。この変化は日本人にとってとても好印象でした。急に人気者になった今の気持ちを教えてください。

     自分の国について他の人たちと共有できることにとても興奮しています。

    ―― アドバイスをくれた人たちへのメッセージはありますか?

     アドバイスを本当にありがとうございました。神のご加護を。

    アドバイスをくれた人たちにメッセージはありますか?

    ―― 日本人もあなたのツイートにとても興味を持っています。これからも日常を投稿し続けますか?

     喜んでいただけて嬉しいです。できるだけ投稿を続けたいと思います。

    ―― 日本からのリクエストを伝えると、彼らはあなたの日常生活についてもっと知りたいと言っています。例えば、食べ物を買う店、紹介するグルメの味、ナイジェリアの街並みなどです。ナイジェリアの人気の曲やファッションについても興味があります。

     わかりました、ありがとうございます。

    ―― インタビューにご協力いただきありがとうございます。あなたの話をニュースで正確に伝えるようにします。記事が公開されたらお知らせします。

     ありがとうございます。Dōmo arigatōgozaimasu

    「ドウモアリガトウゴザイマス」

    ※ ※ ※ ※ ※

     以上が今回の取材の全文となります。はじめは「どんな人物だろう?」と若干の不安もありましたが、インタビューを読めばわかる通り、その中身は実直な好青年。組織的ではなく、あくまで個人で運用を行っていたようです。

     生活が苦しかったため、収入の足しにするべくインプレゾンビとしての運用を行っていましたが、その市場はもはやレッドオーシャン。大して稼げるわけでもなく、なおかつ多くのアカウントからブロックの対象になりやすく、アカウント凍結の恐れもあるなど、はっきり言って不安定と言わざるを得ないでしょう。

     そんな状況が一転。今回アドバイスを受け、真っ当なアカウントに変貌を遂げると、投稿に大きな反響が寄せられたほか、返信欄には多くの好意的な声が。少なくとも、他のユーザーから忌み嫌われる存在でなくなったことは確かです。

    けんちゃんの食事の様子

     とはいえ、これで安定的に収益が得られるということはありません。おそらくすぐに真似をする人が現れるでしょうし、数が増えれば存在感が薄れる可能性もあります。全体としてインプレゾンビは減っていく傾向に向かうかもしれませんが、その中で生き残り続けられるかはけんちゃんの頑張り次第。

     しかし、こうしてユーザー同士の発信で新陳代謝を図ることも、X運営側の狙いなのかもしれませんね。けんちゃんのアカウント運用は始まったばかり。今後どのような発信をしていくのか、楽しみにしつつ、見守っていきたいところです。

    ※更新:記事公開後にけんちゃんより、自身の写真を提供いただきました。写真を1枚追加して更新しています。

    <記事化協力>
    Ken chanさん(@OgbonnaKent

    (山口弘剛)

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • X、AI会話に“キャラ性”を追加 美少女モデル「Ani」などが登場する新モード
    インターネット, サービス・テクノロジー

    X、AI会話に“キャラ性”を追加 美少女モデル「Ani」などが登場する新モード

  • X日本公式アカウント(@XcorpJP)
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Xが検索結果を見直し、本文重視へ転換 ユーザー名で検索しても本文に含まれなければ…

  • イーロン・マスク氏6月27日の投稿
    商品・物販, 経済

    Xの広告改革が止まらない マスク氏が語る「ハッシュタグ排除」と「縦サイズ課金」

  • 「あの頃のTwitter」の空気感を再現 オマージュサイト「ヒウィッヒヒー」爆誕
    インターネット, サービス・テクノロジー

    「あの頃のTwitter」の空気感を再現 オマージュサイト「ヒウィッヒヒー」爆誕…

  • 「現存する日本語最古」とされるツイート
    インターネット, おもしろ

    「現存する日本語最古のツイート」投稿者!?最古参級アカウントの持ち主に話を聞いて…

  • Chromeウェブストアにある「X-Zombie-Killer」のページ
    インターネット, 雑学・コラム

    憎きインプレゾンビを一掃!めちゃくちゃ便利と噂の拡張機能「X-Zombie-Ki…

  • X(Twitter)のDMが編集可能に iOSのみ対応でその他OSにも順次対応予定
    インターネット, 雑学・コラム

    X(Twitter)のDMが編集可能に iOSのみ対応でその他OSにも順次対応予…

  • 夏コミにあらわれた「インプレゾンビ」 コスプレイヤー「togo」さんに注目
    インターネット, おもしろ

    夏コミにあらわれた「インプレゾンビ」 コスプレイヤー「togo」さんに注目

  • Xで「いいね!」が非公開に 「これは罠だ!」など警戒するユーザーも
    インターネット, 社会・物議

    Xで「いいね!」が非公開に 「これは罠だ!」など警戒するユーザーも

  • Xが成人コンテンツに対するポリシーを発表 アダルト容認?と賛否
    インターネット, 雑学・コラム

    Xが成人コンテンツに対するポリシーを発表 アダルト容認?と賛否

  • 山口 弘剛‌Writer

    記事一覧

    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コミケに「家庭科のドラゴン」再臨 裁縫箱からアクスタまで“神器”集結
    企業・サービス, 経済

    コミケに「家庭科のドラゴン」再臨 裁縫箱からアクスタまで“神器”集結

  • 実在事故物件舞台のホラーゲーム「日本事故物件監視協会」Steam・iOSで配信開始
    ゲーム, ニュース・話題

    実在事故物件舞台のホラーゲーム「日本事故物件監視協会」Steam・iOSで配信開…

  • 湖池屋「ストロング 爽快本わさび」実食 刺激と旨みの絶妙ハーモニー
    グルメ, 食レポ

    湖池屋「ストロング 爽快本わさび」実食 刺激と旨みの絶妙ハーモニー

  • カプセルトイ「ミニチュアリングライト」レビュー 小物撮影のお供を試してみた
    商品・物販, 経済

    カプセルトイ「ミニチュアリングライト」レビュー 小物撮影のお供を試してみた

  • ずっと戻し湯で作ってた… 「焼そばバゴォーン」スープの“推奨”調理法が話題
    インターネット, おもしろ

    ずっともどし湯で作ってた… 「焼そばバゴォーン」スープの“推奨”調理法が話題

  • よだれかけが小さすぎるワンコ アンバランスさに癒やされる人続出
    インターネット, おもしろ

    よだれかけが小さすぎるワンコ アンバランスさに癒やされる人続出

  • トピックス

    1. ガンホー、元幹部の不正行為を公表 被害約3億4600万円、刑事告訴準備

      ガンホー、元幹部の不正行為を公表 被害約3億4600万円、刑事告訴準備

      ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(東証プライム:3765)は8月14日、同社の元幹部…
    2. 湖池屋「ストロング 爽快本わさび」実食 刺激と旨みの絶妙ハーモニー

      湖池屋「ストロング 爽快本わさび」実食 刺激と旨みの絶妙ハーモニー

      湖池屋のポテトチップス「湖池屋ストロング」ブランドより、「ストロング 爽快本わさび」が、8月4日に全…
    3. カプセルトイ「ミニチュアリングライト」レビュー 小物撮影のお供を試してみた

      カプセルトイ「ミニチュアリングライト」レビュー 小物撮影のお供を試してみた

      8月初旬より全国のカプセルトイ売場に登場している「ミニチュアリングライト」。その名の通り、手のひらサ…

    編集部おすすめ

    1. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    2. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    3. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    4. ソフトバンク、コミケ106で電波対策強化 Starlink衛星Wi-Fiも投入

      ソフトバンク、コミケ106で電波対策強化 Starlink衛星Wi-Fiも投入

      ソフトバンクは、2025年8月16日と17日に東京ビッグサイトで開催される「コミックマーケット106」で、来場者が快適に通信サービスを利用で…
    5. 誤使用で窒息やケガのおそれ ピジョン、「電動鼻吸い器SHUPOT」改良部品を無償配布

      誤使用で窒息やケガのおそれ ピジョン、「電動鼻吸い器SHUPOT」改良部品を無償配布

      育児用品メーカーのピジョン株式会社は8月6日、同社が2023年6月より販売している管理医療機器「電動鼻吸い器 SHUPOT(シュポット)」に…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト