おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【教育トレンド2025】社会人の6割超が“学ばない”現実 子どもに礼儀重視も、AI教育には賛否両論

update:

 2025年に創業50周年を迎えた総合教育サービス企業・株式会社ウィザス(大阪市)は、都市部に住む保護者と社会人を対象に「学び」に関する意識調査を実施し、その結果を発表した。

 2000人超を対象としたこの調査では、保護者と社会人それぞれの学びに対する姿勢に大きな温度差が見えてきた。礼儀重視の家庭教育、AI導入への賛否、そして学びに消極的な社会人たちの姿が浮かび上がる。

  • ■ 大人は学びに消極的 社会人の学習率わずか35%

     会社員・職員(公務員等)として働いている20~69歳の1014名を対象にした調査では、社会人のうち自主的な学びに取り組んでいるのは全体のわずか35.0%にとどまり、特に50代では26.3%と最低水準に。

    「広い意味での『学び』に取り組んでいますか(年代別)」

     スキルアップに限定しても、実践しているのは全体の37.7%にとどまり、社会全体での学びに対する意欲の低下が顕著であることが分かった。

    「スキルアップに取り組んでいますか」

     一方で、スキルアップに取り組んでいる人に目的を聞くと、「自分自身の生産性をあげるため(業務知識等の向上)」(56.3%)が最多で、3位にも「チームの生産性を上げるため」(28.5%)と実務に直結する理由が挙げられている。

    「スキルアップの目的を教えてください」

     スキルアップのトレンドは、「給与アップのため」(33.0%)、「転職」(16.0%)、「昇進」(13.4%)といった直接的なキャリアアップ志向よりも、実利的かつ現場志向であることがうかがえる。

     さらに、役職が上がるほど学びへの関心は高まる傾向にあり、課長級以上では57.3%がスキルアップに取り組んでいる。

    「『スキルアップに取り組んでいますか』の設問に、何かしらに取り組んでいると回答した割合」

    ■ 保護者の関心は“良い進学”と“礼儀”

     次に、幼児から大学・専門学生までの子どもがいる保護者1120名を対象にした調査では、子どもの教育に関しては、「できるだけ良い進学先」「できるだけ良い企業に入って欲しい」が最も期待される要素として挙がった。

    「お子さまの将来について、どのようなことを期待していますか」

     また、教育で重視しているのは「礼儀」(78.8%)がトップで、学力や体力よりも基本的な人間性の育成が重視されている。一方で最も低かったのが、「国際感覚」(42.9%)。

    「お子さまの教育で、次のそれぞれに、どのくらい力を入れていますか」

     英語教育については、約8割の保護者が有益と感じているものの、「国際感覚」そのものには消極的であることから、英語を受験対策の一環と捉える傾向がうかがえる。

    「子どもの学びにとって『英語教育』は有益と思いますか」

    ■ AI教育には賛否が分かれる

     教育現場でのAI活用については、小中高生の保護者を対象に意向を尋ねた結果、意見は真っ二つに分かれた。AIが子どもの考える力を奪うことへの懸念も根強く、文部科学省のガイドラインを参考に、今後さらに議論が求められるテーマとなっている。

    「子供の学びにとって『生成AIの利用』は有益と思いますか」

    ■ 2025年最新・世代別教育トピックの傾向

     その他、習い事や金融教育、塾など学校外での学習活動が各世代で有益と捉えられている一方で、「国際教室(外国人児童と共に学ぶ)」や「通級指導(障がいのある生徒と共に学ぶ)」については、有益と回答する割合が低く、多様性教育の浸透には課題が残る。

    「小学生高学年の学びにとって、次のそれぞれは有益と思いますか」

     中学生では塾や家庭教師など学校外の授業が特に有益とされ、受験対策へのニーズが表れている。部活動は中高生に支持されており、今後の地域移行を見据えた議論も必要になりそうだ。

    「中学生の学びにとって、次のそれぞれは有益と思いますか」

    ■ 大人と子どもの“学びのギャップ”

     今回の調査では、保護者は子どもの教育に積極的で、進学や礼儀、英語教育などに強い関心を寄せている一方で、社会人は自身の学びに対しては消極的であるという、“学びのギャップ”が明らかとなった。子どもには学ぶことを求めながら、大人が学びから離れている現状は、家庭や社会全体にとっても課題と言えるだろう。

     急速に変化する社会の中で、学びは子どもだけのものではなく、大人にとっても不可欠なものとなっている。社会人が学び直しに向き合い、自らの知見を広げていくことこそが、次世代の教育環境をより良いものへと導く鍵になるのかもしれない。

    【調査対象】

    幼児から大学・専門学生までの子どもがいる保護者1120名
    都市部に居住する20歳~69歳の会社員・職員(公務員等)1014名
    =合計2134名

    <参考・引用>
    株式会社ウィザス・プレスリリース「<1歳から69歳まで2,000人の学び総まとめ>教育トレンド2025

    あわせて読みたい関連記事
  • サイン、コサイン、タンジェント(出典:イラストAC)
    インターネット, 社会・物議

    「三角関数なんか社会出ても使わねえよ」――そう思っていた高校生の、その後

  • 暑さを気にせず、室内でできるスポーツや運動があれば子どもに遊んで欲しいと思う
    企業・サービス, 経済

    猛暑で外遊び減少、親の9割が「室内運動」に関心 キリンが実態調査

  • 10代はAIに恋愛相談も セイコー「時間白書」が示す“今”の価値観
    社会, 経済

    10代はAIに恋愛相談も セイコー「時間白書」が示す“今”の価値観

  • 生きがいが「ない」人の8割、実は日常に幸せ感じていた ソニー生命調査
    社会, 経済

    生きがいが「ない」人の8割、実は日常に幸せ感じていた ソニー生命調査

  • 多部未華子、人生初のセーフティバントに挑戦 マクドナルド「セット500」の魅力を爽快な笑顔で発信
    イベント・キャンペーン, 経済

    多部未華子、人生初のセーフティバントに挑戦 マクドナルド「セット500」の魅力を…

  • 将来に必要なお金について、どのようなときに考えますか?
    社会, 経済

    社会人5年目以下に聞いたお金のホンネ 実家暮らしは守り、一人暮らしは攻めの資産戦…

  • セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘルスケアの調査で明らかに
    社会, 経済

    セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘ…

  • マクドナルドが休憩に関する調査を実施!「休憩が苦手」は過半数以上
    企業・サービス, 経済

    マクドナルドが休憩に関する調査を実施!「休憩が苦手」は過半数以上

  • 「京セラ発オリジナルアニメPROJECT2025」始動!6人のクリエーターと京セラの技術が活躍する未来を描いたアニメを制作
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「京セラ発オリジナルアニメPROJECT2025」始動!6人のクリエーターと京セ…

  • 20代の5割以上が「将来農業をやってみたい」 JA共済連が「若者」と「農業」に関する意識調査を実施
    社会, 経済

    20代の5割以上が「将来農業をやってみたい」 JA共済連が「若者」と「農業」に関…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 当時、イベント関係企業のSNSに投稿された告知画像
    社会, 経済

    “マジックミラー号”展示などで波紋 中野駅前大盆踊り大会が謝罪声明

  • 「走る先には何がある!?京成スカイライナーキャンペーン」オリジナルQUOカード
    イベント・キャンペーン, 経済

    京成電鉄、中島健人QUOカードが当たるキャンペーン 9月10日から

  • 鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    ロッテ、「鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>」を10月21日発売 シリーズ第5弾

  • タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で
    商品・物販, 経済

    タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

  • コレコレチャンネルより
    エンタメ, 芸能人

    コレコレさん「LINEで謝罪」も…稲田直樹さんは声明で“間接否定”

  • 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え
    エンタメ, 芸能人

    松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超…

  • トピックス

    1. 隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家から毎晩のように聞こえてくる喧嘩の怒鳴り声。文句の1つでも言ってやりたくなりますが、平穏なご近所…
    2. コレコレチャンネルより

      コレコレさん「LINEで謝罪」も…稲田直樹さんは声明で“間接否定”

      暴露系YouTuberのコレコレさんは、9月6日の配信でお笑いコンビ・アインシュタイン稲田直樹さんを…
    3. 脂肪と好奇心は人一倍!体重110キロ記者、ゆで太郎「倍盛り鍋かつ丼セット」に挑戦

      脂肪と好奇心は人一倍!体重110キロ記者、ゆで太郎「倍盛り鍋かつ丼セット」に挑戦

      ゆで太郎で期間限定提供されている「倍盛りかつ丼セット」。そばにセットでついてくるかつ丼は、丼ではなく…

    編集部おすすめ

    1. 当時、イベント関係企業のSNSに投稿された告知画像

      “マジックミラー号”展示などで波紋 中野駅前大盆踊り大会が謝罪声明

      中野駅前大盆踊り大会の実行委員会は9月9日までに公式サイトを更新し、前夜祭での演出をめぐり区民や行政から批判を受けた件について声明を発表した…
    2. ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモンシリーズの最新情報を伝える公式Xアカウント「ポケモン情報局」に何やら不穏な動きが。プロフィールや投稿がすべて逆さまに「逆転」する現象…
    3. 鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>

      ロッテ、「鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>」を10月21日発売 シリーズ第5弾

      アニメ「鬼滅の刃」とロッテの人気菓子「ビックリマン」が再びタッグを組む。株式会社ロッテは、絶賛公開中の「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 …
    4. タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      株式会社タカラトミーは9月8日、7月19日に発売した玩具「グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)」について、子どもの指を挟む…
    5. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト