おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ツイッター警部が教える年末年始の防犯あれこれ

update:

 警視庁の犯罪抑止対策本部公式Twitterを「甲」として担当していた経験から、いつもなら「年末年始、こんな犯罪や事故が増えますよ!」というお話をしたいところです。ところが新型コロナウイルスの大流行で、2020年~2021年の年末年始は今までと大きく違うものになってしまいました。それでも、気をつけるべき点を挙げていきたいと思います。

  •  まず、年末年始に増加しがちなもの。それは「交通事故」です。

     これは変わらないでしょう。忘年会や大勢で集まって飲酒する機会がぐっと少なくなっていると思いますから、飲酒運転による事故は減るかもしれません。いえ、減って欲しいですね。自分自身が起こさないことはもちろんですが、被害者にもならないよう、交通安全に留意して過ごしてほしいと思います。

     そして定番の「ひったくり」「スリ、置き引き」「空き巣」ですが、実はここ数年、というか刑法犯の認知件数は平成14年に戦後最多を記録したのを頂点に、翌平成15年からなんと17年連続で減り続けているのです。特にひったくりは、もう根絶と言っていいくらいに少なくなっています。

     警察白書によると、ひったくりは検挙率が6割を超えています。そして、得られる利益が「やってみないと分からない」犯罪です。場合によっては金目のものにありつけないことだってあるという、ハイリスクローリターンな「割に合わない犯罪」だということが周知されたのでしょう。

     では、逆にローリスクハイリターンな犯罪というものはあるのでしょうか。振り込め詐欺や還付金詐欺などといった特殊詐欺がこれに当たります。

     特殊詐欺は組織的に行われる犯罪で、警察も主犯格にはなかなかたどり着けずに苦心しています。ただ、末端の受け子や出し子は別です。受け子や出し子は使い捨てで逮捕されることが前提という惨めな役割です。

     一時的には、普通のアルバイトなんかとは比べものにならない収入が得られることがあります。ですが、末端は必ず逮捕されます。いま、検察庁や裁判所は特殊詐欺に対して、ことのほか厳しい姿勢で臨んでいます。初犯でも執行猶予が付かない実刑判決が出ます。

     特殊詐欺の受け子や出し子は、学校(特に卒業中学校)の先輩から誘われて足を踏み入れるケースが多くなっています。次に多いのはパチンコ屋で、リクルーターに声を掛けられて仲間に加わってしまうことです。

     一度仲間に加わってしまうと、学生証や免許証のコピーを取られ(場合によっては取り上げられ)仲間から抜けられなくなります。抜けたくても脅されて警察に逮捕されるまで抜けられなくなるのです。

     さて、事件事故に巻き込まれることなく無事に新年を迎えました。いよいよ仕事始め、気持ちも新たに仕事を始めるあなたをトラップが待っています。

     お正月休み明け、たくさんのメールが溜まっていることでしょう。どんどん返信していかないといけませんね。中には添付ファイルがあったり本文中にリンクが張られているものもあるかもしれません。

     添付ファイルを開かないでください。
     リンクをクリックしないでください。

    「え、でも取引先から送られてきているメールだから大丈夫でしょ?」

     そう思うかもしれませんが、取引先から送られてきたメールも決して安全ではありません。

     現在「Emotet」というマルウエアが密かにばらまかれています。これに感染したパソコンは、そこに保存されているメールを使います。だから、自分が送ったメールが引用されている返信といった形でEmotetが届けられることもあるわけです。

    「そんなこと言ったって自分のパソコンには抜かれて困る機密情報もないし……」

     2020年は企業に対する不正アクセスが、本当にたくさんありました。顧客情報の流出も毎日のようにありました。あれはどこから流出したのでしょうか。

     攻撃者は、いきなり宝の山に対してアタックを仕掛けてくるわけではありません。まずはセキュリティの弱い端末を狙って攻撃してきます。つまり「うっかりリンクを踏む」ような人のことです。

     リンクを踏んだり添付ファイル(主にオフィス製品で生成されたもの)を実行して「コンテンツの有効化」を承認するとマルウエアに感染します。そして、感染した端末を足がかりにしてそのネットワーク内の他の端末へと「横展開」していきます。首尾良くファイルサーバーやデータベースサーバーを見つけると、そこから情報を盗み出していきます。

     いいサイトをご紹介しましょう。

     「Virus Total」というサイトです。ここは、ウイルスに関する情報が毎日世界中から寄せられ、それをweb上で検索することができるというものです。メールに添付されていたファイルをアップロードしたり、リンクのURLを貼り付けたりして検索できます。ほとんどの場合、すでに報告されている検体になると思います。まだ報告がないという結果だとしたら、あなたが世界で最初の報告者になるかもしれません。

     来年はもっと楽しい記事を書きたいなあ。

    ■ 中村健児
    警視庁犯罪抑止対策本部のTwitterアカウントを2012年~2016年に担当。当時は複数人で中の人を担当していたため「甲」と名乗る。
    2020年9月に警視庁を退職。同年10月にTwitterに特化したアカウント運用請負業「合同会社フォルクローレ」(@FOLCLORE_LLC)を設立し、現在は代表および“中の人職人”として活動している。

    あわせて読みたい関連記事
  • 「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ
    インターネット, 感動・ほのぼの

    「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

  • 「LOVE 9 LOVE」殺害予告で被害届 直近のイベント出演辞退
    エンタメ, 芸能人

    「LOVE 9 LOVE」殺害予告で被害届 直近のイベント出演辞退

  • ニコニコ、犯罪予告コメントへの対応を説明 「いたずらのつもり」は通用せず
    インターネット, 社会・物議

    ニコニコ、犯罪予告コメントへの対応を説明 「いたずらのつもり」は通用せず

  • 地下鉄サリン事件発生から30年……公安調査庁が「オウム真理教問題デジタルアーカイブ」公開
    インターネット, 社会・物議

    地下鉄サリン事件発生から30年……公安調査庁が「オウム真理教問題デジタルアーカイ…

  • 画像提供:深海マザーさん(@deepseaMOTHER)
    インターネット, おもしろ

    イカの形をしたお餅にX上が騒然!お味はイカが?

  • りんごが素手でふたつに割れる!?警視庁災害対策課のライフハック技やってみた
    インターネット, おもしろ

    りんごが素手でふたつに割れる!?警視庁災害対策課のライフハック技やってみた

  • 空き家を悪用する詐欺と密輸、警察庁が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    空き家を悪用する詐欺と密輸、警察庁が注意喚起

  • 自分のスマホが犯罪インフラに? 知らぬ間にSMS大量送信、日本サイバー犯罪センターが警鐘
    インターネット, 社会・物議

    自分のスマホが犯罪インフラに? 知らぬ間にSMS大量送信、日本サイバー犯罪センタ…

  • 万座温泉スキー場、盗難被害で今季営業縮小 リフト3本運休、滑走コースも制限
    社会, 経済

    万座温泉スキー場、盗難被害で今季営業縮小 リフト3本運休、滑走可は2つに制限

  • 元ストーカーの告白 「好き」だけで終わらない事件の行方
    コラム, 雑学

    元ストーカーの告白 「好き」だけで終わらない事件の行方

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 米バンダイナムコ、AI生成の偽パッケージ拡散を問題視 「暴力を強く非難」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    米バンダイナムコ、AI生成の偽パッケージ拡散を問題視 「暴力を強く非難」

  • 介護未経験者全体の72.9%が将来に向けて「特に何も準備していない」
    社会, 経済

    仕事と介護の両立に不安85% ダスキンが「介護白書2025」で実態調査

  • プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

  • 美食祭 in 日本橋三越
    TV・ドラマ, エンタメ

    高見沢俊彦の“美しいメシ”100回記念 日本橋三越で初の美食祭

  • なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売
    商品・物販, 経済

    なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売

  • 掃除機「自動お手入れ機能」篇(15秒)
    商品・物販, 経済

    反町隆史、東芝新CMで料理や掃除に挑戦 家庭的な素顔ものぞかせる

  • トピックス

    1. 日本最古の弁当屋の「実在しない“かつての”テレビCM」架空CMソングユニットが制作

      日本最古の弁当屋の「実在しない昭和テレビCM」架空CMソングユニットが制作

      画質や造作を古い時代風にした「アナクロ映像」が流行っています。そんな中、「日本最古の弁当屋」が、数々…
    2. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    3. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…

    編集部おすすめ

    1. 米バンダイナムコ、AI生成の偽パッケージ拡散を問題視 「暴力を強く非難」

      米バンダイナムコ、AI生成の偽パッケージ拡散を問題視 「暴力を強く非難」

      9月17日、バンダイナムコの玩具・コレクティブル事業を担う米国法人「Bandai Namco Toys & Collectibles Ame…
    2. キミは知っているか!ヨーグルトの「舐められるフタ裏」まとめイラストが有益すぎる

      キミは知っているか!ヨーグルトの「舐められるフタ裏」まとめイラストが有益すぎる

       「キミは舐めれるフタの裏を知っているか!」……そんな挑戦的なコピーと共に投稿された一枚のイラスト。題材となっているのは、誰もが一度は気にし…
    3. 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      日本でうなぎといえば、甘いタレをつけて香ばしく焼き上げた「蒲焼き」が定番のスタイル。白焼きなどもあるにはありますが、うなぎといえばやっぱり蒲…
    4. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    5. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト