「うちの本棚」、今回は一条ゆかりの『こいきな奴ら』をご紹介いたします。作者本人もお気に入りでノッて描いた作品でもあり、ファンも多い作品です。
一条ゆかり本人もお気に入りのアクション作品。読み切り作品として発表されたあと読者の評判もよく第2話が一年後に描かれ、本刊行本となった。その後も第3話、第4話とシリーズは続き、ブランクを開けて「週刊マーガレット」にPART2として続編が連載もされた。
フランスの貴族の家に生まれた双子の兄妹、ジュデェスとジュディス。兄は予知能力的な勘のよさとナイフ投げを得意とする天才少年。妹は武芸の達人。顔だちがそっくりなのはもちろんのこと、金髪のロングヘアも同じで見分けはつきにくい。というより見分けは出来ません(笑)。幸せな日々を送っていた兄妹に、交通事故による両親の死と、父親が経営していた会社の乗っ取りという不幸が突然襲いかかってくる。そんなとき出会ったのが、スリやこそ泥をしているクリームという青年。ジュデェスは彼の才能を、会社を乗っ取ろうとしているかつての父の部下の正体を暴くために利用しようと考え、クリーム自身はジュディスに惚れて行動をともにすることに。また兄妹の存在を疎ましく思う部下の方も、殺し屋を雇って兄妹を抹殺しようと企むのだが、この殺し屋も兄妹を狙ううち、金のためとはいえ子供を殺すことに嫌気が差し、雇い主に銃口を向ける。ここに、双子の兄妹と、スリのクリーム、殺し屋のパイという4人組が誕生する。
第1話では4人組の誕生を描いたが、2話ではジュデェスの超能力に焦点を当てた、SF風味のスパイアクションとなる。KGBやらMI6なども登場してきてなかなか読ませる内容になっている。このあたりは初出の時期を考えると『007』シリーズなど、スパイ映画・ドラマの影響もあったのかもしれない。惜しいのは超能力の描写で、SF作品や超能力の登場する作品に親しんでいないとちょっとわかりにくかったのではないかと思える。目に見えない力をどう描くかというのは難しいところだと思うが、石森章太郎など、先行する作家を模倣している感じで、一条らしさとか少女漫画としての描き方というところまでは考えていなかったように感じる。
単行本は、3、4話が『こいきな奴ら2』として「りぼんマスコットコミックス」から。また週刊マーガレット連載分は「マーガレットコミックス」から刊行された。のちに文庫版、コンビに向けの「集英社ガールズリミックス」としても刊行された。
初出:ジュディス・ジュデェス/集英社「りぼん」昭和49年1月号、エスパー狩り/集英社「りぼん」昭和50年1月号
書 名/こいきな奴ら
著者名/一条ゆかり
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス(RMC-76)
初版発行日/1975年8月10日
収録作品/ジュディス・ジュデェス、エスパー狩り
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)