「うちの本棚」、今回取り上げるのは、一条ゆかりの『ママン・レーヌに首ったけ』です。シリアスな場面も所々みられますが、全体として明るいラブコメディ。読み切り作品として発表されたようですが、長編を読んだような充実感のある仕上がりです。
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ラブコメ3作を収録した単行本。一条ゆかりの陽の面を楽しめる一冊と言ってもいいかもしれない。
『ママン・レーヌに首ったけ』は、魅力的でモテモテな母を持った息子のドタバタラブコメディといった感じで進行するストーリー。母親といっても思春期の息子がいる割りには若く、さらに年下にモテモテ。そんなママン・レーヌに恋して家政婦がわりに住み込んでくるのが主人公の2つ年上の、学校の先輩だったりもする。けれどママン・レーヌは息子を溺愛している上に、初恋の男性を忘れられずにいるという…。
決して多くない登場人物たちが、何らかの形でつながりがあって、世の中狭いのねと思ったりもするが(いや、決してご都合主義とかそういうことではありませんよ・笑)、読者にとっては分かりやすくてよい。終盤、ちょっとだけ『雨あがり』のような年上の女性を愛した少年の切ない想いも描かれるが、総じて明るい作品ではある。
『ラブラブ・ハイスクール』『ミス・キューピット』の2作は初期作品。絵柄的にも拙さの残るものだけれど、一条らしさは出ていて感心する。2作とも典型的なラブコメに仕上がっていて、典型的であるがゆえにこのジャンルのお手本のようにも感じられたりする。恋に揺れ、悩む少女の心情を軸にして描かれるストーリーは確かに「少女漫画」の定番のように思える。がその中にも一条らしいアイデアが盛り込まれていたりして、この作家の怖さのようなものを感じたりする。
初出:ママン・レーヌに首ったけ/集英社「週刊マーガレット」昭和50年33号、ラブラブ・ハイスクール/集英社「りぼんコミック」昭和44年10月号、ミス・キューピット/集英社「りぼんコミック」昭和44年2月号
書 名/ママン・レーヌに首ったけ
著者名/一条ゆかり
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス(RMC-85)
初版発行日/1976年4月10日
収録作品/ママン・レーヌに首ったけ、ラブラブ・ハイスクール、ミス・キューピット
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)