おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】255回 雨あがり/一条ゆかり

 「うちの本棚」、今回からしばらく一条ゆかりの作品を取り上げていこうと思います。その一回目は『雨あがり』。年上の女性に恋をした主人公の心情をじっくりと描いた作品です。

  • 【関連:254回 一万十秒物語/倉多江美】

    雨あがり

     一条ゆかりといえば少女漫画家を代表するひとりで「りぼん」の看板作家だった、というのが個人的な印象だ。とはいえ代表作というと『デザイナー』に『砂の城』とそれほど多くはなく、いずれもドロドロの愛憎劇である。また「りぼん」を発行している集英社では、小中学生がメインターゲットの「週刊マーガレット」、中高生がターゲットの「別冊マーガレット」があり、「りぼん」はそれらよりも下の世代をターゲットにしていた印象があったのだが、一条ゆかりが描く作品の多くは高校生以上をターゲットにしたようなものが多かった気がする。もっとも他の「りぼん」作家たちも低年齢層に向けた作品を描いていたかというとそうではないので、こちらのイメージが間違っていたのかもしれない。

     今回取り上げた『雨あがり』もドロドロな愛憎劇のひとつで、父親の再婚相手に恋をしてしまう大学生の話だ。読み切りの中編ではあるが、どう考えても昼メロ的なテーマであり、「りぼん」という雑誌の編集方針には驚かされる(笑)。

     母親が亡くなってから十年。命日には必ず墓参りをしている主人公が墓地で出会った美しい女性が、実は父親が再婚を考えている女性だったというところからストーリーが始まる。主人公は義母に対する恋心に無意識だったのだが、幼なじみの同学年の女の子にそれを指摘され、歯止めが利かなくなってしまう。義母も主人公の熱い想いに、夫はひとりでも生きていけるが、彼は自分がいないと…と心を動かされたりする。いやあ、一歩間違えればAVみたいなお話です(笑)。実際、発表された時期や媒体が違えばそういう内容になっていたでしょうね。
    『女性志願』と『セント・マリーの牧師さま』は共にラブコメ(本書カバーの折り返しでは「ロマコメ」と表現してますが)。
    『女性志願』は男の娘的な話かと想像したのだけれど、男の子みたいな女の子が恋をする話しでした。女の子みたいな弟が女装するシーンは出てくるけどね。要所要所で挿入されるシリアスな絵柄が印象的な作品でもあります。
    『セント・マリーの牧師さま』は勉強ばかりしてオシャレにも興味のない女の子が恋をするお話。よくある設定といえばその通りではあるけれど、恋の相手が牧師というのが特徴ですな。

    初出:雨あがり/集英社「りぼん」昭和46年4月号、女性志願/集英社「りぼん」昭和48年1月号、セント・マリーの牧師さま/集英社「りぼん」昭和47年3月号

    書 名/雨あがり
    著者名/一条ゆかり
    出版元/集英社
    判 型/新書判
    定 価/320円
    シリーズ名/りぼんマスコットコミックス
    初版発行日/1974年11月10日
    収録作品/雨あがり、女性志願、セント・マリーの牧師さま

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】256回 ハートに火をつけて/一条ゆかり

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 平原を見渡す

      異世界ですか?いいえ日本です!とあるパーティーの“冒険の軌跡”

      ときに日常を離れ、剣と魔法の世界を冒険したい――そんな夢を日本国内で体験する人がいます。Xユーザー「…
    2. 味ぽん公式紹介の「味ぽんチーズ肉巻き」が背徳のうまさ! 実際に作ってみた

      味ぽん公式紹介の「味ぽんチーズ肉巻き」が背徳のうまさ!? 実際に作ってみた

      ミツカンの人気商品「味ぽん」の公式アカウントがXで紹介したレシピ「味ぽんチーズ肉巻き」に6万件を超え…
    3. 「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

      「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

      よく目にする「私はロボットではありません」という確認画面は、Googleの「reCAPTCHA」によ…

    編集部おすすめ

    1. ゲームのバグ?すり抜け?壁に「埋まっている」ように見えるワンちゃん

      ゲームのバグ?すり抜け?壁に「埋まっている」ように見えるワンちゃん

      「ココちゃんは壁をすり抜けます」という一言と共にXに投稿された一枚の写真。写っているのは、まるでゲームのバグで壁に埋まってしまったかのような…
    2. 当時、イベント関係企業のSNSに投稿された告知画像

      “マジックミラー号”展示などで波紋 中野駅前大盆踊り大会が謝罪声明

      中野駅前大盆踊り大会の実行委員会は9月9日までに公式サイトを更新し、前夜祭での演出をめぐり区民や行政から批判を受けた件について声明を発表した…
    3. ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモンシリーズの最新情報を伝える公式Xアカウント「ポケモン情報局」に何やら不穏な動きが。プロフィールや投稿がすべて逆さまに「逆転」する現象…
    4. 鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>

      ロッテ、「鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>」を10月21日発売 シリーズ第5弾

      アニメ「鬼滅の刃」とロッテの人気菓子「ビックリマン」が再びタッグを組む。株式会社ロッテは、絶賛公開中の「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 …
    5. タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      株式会社タカラトミーは9月8日、7月19日に発売した玩具「グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)」について、子どもの指を挟む…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト