空中撮影やホビーなど、広く使われるようになったドローン(無人航空機=UAV)。現在は離れた場所への無人配送実験なども行われていますが、広く利用されるのに従って増加するのがトラブルです。

 現在もドローン運用者の資格認定や、飛行制限区域などの規定が存在していますが、2022年6月20日からは一定規模以上のドローンに国土交通省への機体登録が義務化されます。そのポイントをご紹介しましょう。

■ ドローン登録の目的は?

 今回のドローン(無人航空機)登録義務化は、2020年の改正航空法施行にともなうもの。新設された第百三十一条の三~十四の条文が根拠となります。

 この背景にはドローンの活用が広まる中、事故や必要な安全性の審査を受けないまま無許可で運用する事態がたびたび発生しており、飛行の安全が十分に確保できていないという現状があります。

 このため、一定規模以上のドローンを登録制にし、機体の性能情報や所有者情報を把握した上で、事故などの原因究明や、安全に運用できるルールづくりに役立てようというのが、今回の目的です。

 この取り組みは日本だけでなく、アメリカ連邦航空局(FAA)でも一定規模以上のドローンについて登録が義務化されています。新しく、発展途上の航空機を既存のものと共存させるために必要な手続きといえるでしょう。

アメリカ連邦航空局(FAA)の(スクリーンショット)FAADroneZone

■ 「ラジコン飛行機」も含むドローンが登録対象

 ドローンは航空法第二条22項に規定されていますが、これまでは航空法施行規則第五条の二で「重量が200g未満」は除く、とされていました。今回の改正にともない、この重量が「100g未満」と引き下げられ、重量100g以上のドローンが登録義務化の対象として設定されました。

マルチコプター型のドローン

 これには一般的に「ドローン」と認識されているマルチコプター型のほか、ラジコン飛行機やヘリコプターも含まれます。ラジコン飛行機やヘリコプターの愛好者は、自身が飛ばしている機材が重量100g以上であるかをチェックしておきましょう。

■ 登録申請する際の注意点

 ドローンの登録は、安全な飛行を確保するために義務付けられるもの。このため、機体の安全性を最優先し、メーカーが機体の安全性に懸念があるとしてリコールや回収を行った機体、事故が多発している機体などは、国土交通大臣が「登録に適さないもの」として指定することになっています。

 ユーザーが登録申請する際は、メーカーからの安全情報が出ていないか注意し、所有する機体が登録可能であるかを確かめましょう。

 ラジコン機などは、愛好者が自作するケースもあります。この場合を含め、落下したり衝突した際に人を傷つけるような突起があるものも登録ができません。もちろん、安全に操縦・飛行ができないものも同様です。

■ 登録の流れ

 ドローンの登録はオンラインのほか、書類提出による申請が可能。所有者の氏名や住所のほか、登録するドローンのメーカー、型番などの情報を入力し、提出します。市販品を改造している場合は、その概要などの情報も一緒に提出する必要があります。

 登録に際しては所有者の厳格な本人確認が必要となります。個人の場合はオンラインの場合、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのいずれか。郵送の場合は住民票(コピー不可)または健康保険証、運転免許証などいずれか2種類のコピーを申請書に同封してください。

 所有者が法人の場合、オンラインではgBizIDが利用可能。郵送の場合は登記事項証明書または印鑑証明書が必要です。

 日本に住居を有しない外国人の場合、パスポートの写し及び公的機関が発行した氏名、住所、生年月日が確認できる書類の写しが必要。代理人による申請ではこれらの書類のほか、委任状など代理権を証明する書類も必要です。

■ 申請方法で異なる登録手数料と支払い方法

 登録手数料は申請方法によって異なります。マイナンバーカードやgBizIDを利用したオンライン申請の場合、1機目は900円、2機目以降は1機あたり890円がかかります。

 マイナンバーカードやgBizID以外のオンライン申請では、1機目が1450円、2機目以降は1機ごとに1050円となります。紙媒体による申請の場合、1機目は2400円、2機目以降は1機ごとに2000円かかります。

 この手数料は新規登録と更新申請手続きで必要となります。支払い方法はクレジットカード決済のほか、インターネットバンキングやATMによる振込み(電子納付)が可能。

■ 登録したドローンに関する義務

 登録申請が受理されると、審査の結果安全性に問題がないことが確認されると、ドローン1機ごとに登録記号(JUから始まる数字とアルファベットの組み合わせ)が発行されます。一般の航空機と同様、機体に規定のサイズで登録記号の記載が義務付けられます。

 登録記号のサイズは、ドローンの機体規模(重量)によって2種類に分かれます。25kg以上の機体は高さ25mm以上の文字で、25kg未満の場合は高さ3mm以上の文字で、マジックやシールなど耐久性のある方式により、外部から確認しやすく容易に取り外せない方法で記載しなければなりません。

 人間が操縦する航空機の場合、航空管制を受けるための無線機を搭載しています。登録義務のあるドローンも同様で、機体の識別情報を無線で発信する「リモートID機能」の搭載が義務付けられます。

 リモートID機能は、有人航空機のADS-Bと同じく、機体の製造番号と登録記号、そして飛行する位置と高度、速度、時刻の情報を1秒に1回以上送信(通報)するもので、どんなドローンがどこで飛行しているかを識別するために使われます。ここに所有者や使用者の情報は含まれません。

 これに対応した機器は内蔵型と外付型を想定しており、改正航空法に適合したドローンであれば内蔵型、それ以外の機体では外付型を選択する形になるでしょう。送信される電波はBluetoothやWi-Fiの規格によるものとされています。

 リモートID機能の搭載には例外規定があり、機体を十分な強度のヒモ(長さ30m以内)で繋いで飛行させる場合や、あらかじめ国に届け出た特定区域で十分な監視体制のもと実施される飛行、警察や海上保安庁が警備など秘匿が必要な業務で実施する飛行では免除されるとのことです。

■ 登録義務の例外

 ドローンは発展途上の航空機であり、新しい技術を反映させた機体が毎年のように誕生しています。これらの飛行を妨げないため「試験飛行」名目であれば、ドローンの登録を不要とすることができる例外規定があります。

 ただし、いくら試験飛行であっても野放図にされるわけではなく、国にあらかじめ届け出た区域から飛び出ないようにする措置や、試験に関係ない第三者が区域内に立ち入れないようにするなど、安全措置を講ずることは必要です。

 ドローンの登録について、国土交通省では「無人航空機登録ポータルサイト」を開設し、解説の動画やハンドブック(PDF版)などを掲載しています。すでにラジコン飛行機やヘリコプターを含むドローンをお持ちの方、これから購入を予定している方は、参照しておくことをお勧めします。

<参考>
国土交通省「無人航空機登録ポータルサイト
アメリカ連邦航空局(FAA)「FAADroneZone

(咲村珠樹)