アニメ「機動戦士ガンダム」40年ぶりの新作劇場版が話題ですが、旧作をリメイクするというのは、過去の自分と向き合いつつ現在までの進歩を見せるという点で、大きなチャレンジとなります。
切り絵作家の福田理代さんは、20年以上前に制作した「イグアナ」の切り絵をリメイク。当時の雰囲気を残しつつ、進歩した現在の技術を注ぎ込んで、さらに細密かつ立体的な作品が完成しました。(画像:左・20年以上前の旧作/右・リメイク作)
福田さんが「イグアナ」のリメイクに取り組むきっかけとなったのは、旧作を目にした方から「欲しい」という声をもらったからだといいます。「20年以上前の作品なので、当時の雰囲気を残したままリメイクさせて欲しいと提案しました」と福田さん。
同じモチーフを同じ構図でリメイクするということは、過去の自分と現在の自分が対峙するという、クリエイターにとっては大きなチャレンジ。進歩した自分を見せたいところですが、旧作の雰囲気を壊すわけにはいかず、そのさじ加減も難しいところです。
福田さんの切り絵作品といえば白い紙、というイメージですが、今回の「イグアナ」ではグリーンの紙が使われました。「実はオフホワイトに統一し始めたのは4~5年前のことで、それ以前は作品のイメージに合わせて紙の色を決めていました」と、旧作に合わせてグリーンを選択したそうです。
20年以上前の旧作でも繊細な表現に驚いてしまうのですが、リメイク版はさらに描線が細くなり、細密さに磨きがかかっています。当時はスマホなどで簡単に画像検索ができなかったので、細部の観察を十分にできなかったことも、表現の解像度が上がった理由のようです。
「前回の下書きをできるだけいかしイメージを変えないために、直したい部分をあえてそのままにしたところもあります。そして前回作った時の雰囲気をできるだけ崩さないように、立体感や陰影を加えられるよう取り組みました」
技術の向上した現在では、より細密度を上げて作品を作ることも可能。ですが、欲しいと言われた方は旧作を見て声をかけてくれたわけですから、あまり違いすぎてもいけない……このあたりはクリエイターにとっても難しかったことがうかがえます。
そのように苦心しながらの制作だったにもかかわらず、今回の作品は「下書きの修正から完成まで大体1か月弱でした」と福田さんは語ってくれました。「前回は下書きから完成まで大体1か月半だったので、格段に切るスピードは上がっていると感じました」とのことで、このあたりに20年の技術的進歩が表れているようです。
今回は旧作の雰囲気を受け継ぐため、同じグリーンの紙で制作された「イグアナ」。福田さんは「今後、今の作風のオフホワイトでも制作してみようと思っています」と語っており、紙色の違いでイメージがどれほど違うのかも、今後楽しむことができそうです。
「IGUANA」
完成いたしました。
皮膚の質感、陰影などにこだわりながら作りました。
ウロコの一枚一枚、コツコツと頑張ったのでたくさんの人に見てほしいです。#切り絵#拡散希望 pic.twitter.com/3eYGWMJfJ5— 切り剣Masayo (@kiriken16) June 3, 2022
実は先日完成したイグアナは20年以上前の作品のリメイクなのです。
輪郭線はほぼそのままに細部を加筆、修正しました。
1枚目の画像が20年以上前のIGUANA
2枚目の画像がリメイクしたIGUANA
20年の間の進化は見られるでしょうか?#切り絵 pic.twitter.com/YZN1u4DB65— 切り剣Masayo (@kiriken16) June 5, 2022
<記事化協力>
福田理代さん(@kiriken16)
(咲村珠樹)