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「怒られるとポンコツになる」のはどうして?

 ちょっとしたミスって誰でも起こし得るものです。しかし、いざミスしてしまった場合、その時に周りから取られる態度次第でミスをその後減らす事もできれば、余計に増えてしまう事もあります。そんな、ミスをした時に取られた態度の違いで自分が変わってしまうという話がツイッターで話題になっています。

  •  「怒られるとポンコツになる」というタイトルで自身の経験談を漫画にしているのは、漫画家の秋鹿えいとさん。その内容とは……

     以前のバイト先にて、理不尽な怒られ方をされている感じている時は聞き流す事ができるけど、自分が悪くて怒られている時は、頭が真っ白になるか、仕事が終わってからもずっと自分を責めるかしている。怒られたことを気を付けようと必死でいると、違う失敗をしてしまう。その失敗が前に怒られた事だった時は、脳がギューッと小さくなる感じに陥る。

     しかし、現在のバイト先ではミスをしても全然怒られない。そのお陰か、万年ミスをしてきたのに、自然体で働けるようになり、ミスも減り続け、今では全然ミスをしなくなった。怒られるプレッシャーがないとこんなにも働きやすいのかと思った。

     と、以前のバイト先は些細なミスでも感情的に怒られる職場という経験を振り返りつつ、現在のバイト先の良さを噛みしめている様です。ツイッターにこの漫画が投稿されたところ、多くの人からの共感の声が。「パフォーマンスをあげさせようと怒るのは全くの無駄、どころか逆効果」というリプライでの指摘には多くの人が頷き、「何代か前の店長がガミガミネチネチ怒る方だったようで、未だにミスがあるとスタッフがものすごく慌てます」「怒られると萎縮してしまい何日も引きずり、挙げ句普段その人と普通に話すことすら恐怖に感じてしまいます」と、感情的に起こる事に対する弊害を訴える声も続出。身内から理不尽に感情的に怒られ続けてトラウマになっているという人も。

     いくつかの学術文献を見てみたところ、ストレスが過剰に掛かった場合、ストレスを感じた時に副腎から分泌されるコルチゾールという副腎皮質ホルモンが過剰に分泌され、脳の海馬という部分が委縮する事がいくつかの研究からも明らかになっています。コルチゾール自体は血圧の変動をつかさどったり、血中の糖分やエネルギーを調整し、強い抗炎症作用をしめす役割を果たしますが、強いストレスはその防衛反応により、過剰にコルチゾールが放出される事となってしまいます。脳を守ろうとするセロトニンやドーパミンといった脳内物質と、コルチゾールのバランスが崩れてコルチゾールが過剰となった場合、脳への影響も大きくみられます。

     感情、特に負の感情は広い方向に伝播しやすい事もこれまでに明らかになっています。怒りの感情が自分に向けられていない場合でも、誰かが強く叱責されている場面を見たり、感情的に怒っている姿を見て気分が悪くなる事が起こるのはこういった伝播が影響のひとつにあると考えられています。

     叱責する必要がある場合というのは、よほどのことがない限り日常生活ではあまり起こり得ないのではないのでしょうか。多くは怒りの感情に支配された、感情の発散であるのではないでしょうか。怒りの感情よりも、理論的に、必要な言葉を的確に判断し、ミスに対するリカバリーを行う事が、感情的な叱責よりもよほど有益であると思います。

    <記事化協力>
    秋鹿えいと AikaEitoさん(@aikaeito)

    <参考文献>
    高田 明和 ストレスは如何に脳を傷つけるか(21世紀における心身医学への期待)

    (梓川みいな / 正看護師)

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