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「五月病」ってよく聞くけどどんな病気?イグノーベル賞受賞者に教えをこうた

 ゴールデンウィークがあけると毎年耳にするのが「五月病」。よく耳にはするけど、はて?実のところどんな病気なのか?

  •  ネットで検索すると出てきた件数は「約296,000,000」。どれもストレスやら脳がうまく機能しないやら書かれていますが、情報が多すぎて「わかるけどよくわからない」というのが正直な本音。また書かれる内容もちょっと専門的すぎて……素人的には「はて?」。

     そこで今回は「五月病」についてわかりやすく話してくれそうな先生を探してみたところ……2013年にイグノーベル賞を受賞された新見正則先生が応じてくださいました。まさかすぎてビックリ……!でもピッタリ!

     イグノーベル賞とは「人々を笑わせ考えさせた研究」に対して与えられる賞。ノーベル賞のジョーク版ともいわれていますが、研究内容はいずれも大真面目。その中で新見先生が受賞されたのは医学賞です。

     当時の新見先生のチームが行ったのは、心臓移植をしたマウスに音楽を聴かせるとどうなるかという実験で、脳と免疫の関係を調べたもの。さまざまな音や音楽を聴かせたところ、なにも聞かせなければ生存期間が7日だったところ、最長の結果が得られたオペラ「椿姫」では平均約40日にのびたそうです。

     つまり音楽は命に何らかの好影響を与えることが示されました。受賞後に先生自らが発表した記事(文末参考項目にて出典明記)でも「この研究結果から言えることは、音楽が脳を介して免疫系によい影響を与えている」と記されています。

     五月病は人によっては重篤になることもあると聞きます。今回行ったインタビューでは、五月病に関する基礎の部分から、なったときの自分にあうお医者さんの探し方、さらに五月病対策に音楽は生かせる可能性があるのか、そして先生の「心安まるもの」までうかがってみました。

    【新見 正則先生のプロフィール】
    新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。最新刊『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』はAmazonでベストセラーに

    ■ そもそも「五月病」とは?

    ―― このたびは取材にご協力いただきありがとうございます。いきなり本題ですが、そもそも「五月病」とはどういうものなのでしょうか?ネットにさまざま情報がありますが、改めて解説いただけたら。

    「日本の年度替わりの4月に職場や学校での環境が変わって生じる心の病です。6月に起こることも4月に起こることもあります」

    ―― 5月に限った病気というわけではないんですね。知らなかった……。出やすい症状としてどんなものがあるのでしょうか?個人差はあるとおもいますが代表的なものを教えてください。

    「うつうつ気分、無気力、不安感、パニック症状、焦燥感、疲れやすさ、意欲がわかない、悲観的な気分、不眠、食欲不振、頭痛、めまい、月経不順、脱毛などです」

    ―― ほんとうに症状はバラバラなんですね。これは自分でも「五月病になった」って気づきにくいかもしれません。

    ■ 予防法は「レジリエンス」を鍛えること

    ―― 五月病にならないための予防法、心がけがはあるのでしょうか?

    「環境の変化に慣れる能力を日頃から鍛えることです。ヤナギのように生きる力です。そんな能力はレジリエンスと呼ばれます。変化できることが大切です。

    レジリエンスを鍛えるには、日頃からちょっとしたストレスには立ち向かう努力が必要です。そんなちょっとした努力の積み重ねで心の強い状態が育まれます。ストレスから逃げ回ってばかりでは、レジリエンスはまったく鍛えられません。

    一方で命に関わるような、重篤な病気になるようなストレスからは一目散に逃げることも大切です」

    ―― 「逃げる」タイミングが分からない人もいるとおもいます。具体的に「命に関わりそうな症状」とは、どんなものがあるのでしょうか?

    「自殺したいと思うときですよ」

    ―― あぁ……わかりやすいサインです。

    ■ もしなってしまったときには……自分にあうお医者さんの探し方

    ―― もしなってしまった場合ですが、医療に繋がりたい場合何科を受診すればいいのでしょうか?

    「心の病ですから、心療内科、精神科、メンタルヘルス科などですが、総合診療科や内科でも5月病の対応に得意な先生はいます。5月病ですが診てもらえますかと電話で事務の方に尋ねるのが簡単です。日頃から5月病を診ていれば、即答でOKと返事が来ます」

    ―― 先生が得意かどうかというのは、ホームページに書かれているものなのでしょうか。先生を調べるときのコツなどあれば教えてください。すみません全くこの辺無知なもので。ただ「初めて五月病」になる人も同じ疑問を感じるかと思います。

    「五月病は型どおりに診療を行う医師には面倒なのです。ですから、その医師が五月病の治療に興味があるかにかかっています。ですから、直接に会ってみるしかないでしょう。
    いくつかクリニックを受診して、親身になってくれる医師を自分で探しましょう。HPの情報などはあまり当てになりません。五月病の記事を書いている医師は興味があるでしょう」

    ―― 病院で治療を受けつつも、一度かかってしまった人が普段の生活で心がけるべきこと、注意点があれば教えてください。

    「誰にでも起こることがある病態です。特別悲観することはありません。しっかり睡眠をとって、バランスの良い食事をして、日光を浴びて、散歩をすればいいです」

    ―― イグノーベル賞受賞年の2013年に先生が発表された記事を拝見いたしました。素人発想ですが、もしかしたら今回の五月病も「音楽」が何か良い影響を与えることは考えられるのでしょうか。「心の持ちようを変えるだけ。僕たちの研究結果は、今日から誰でもできる」と、当時の先生はおっしゃっていましたので。

    「自分の心が休まる方法を日頃から見つけておくことが大切です。それがイグノーベル賞を頂いたマウスの実験ではオペラ椿姫でした。心安まる音楽、匂い、映画、運動、食事などなんでもOKです。自分で心安まるものを探して下さい」

    ■ イグノーベル賞受賞者はどんな日常を送っている?リラックス法も聞いてみた

    ―― 個人的なことをうかがいますが先生にとっての「心安まるもの」とはなんですか?また、普段よくお聞きになる音楽があればあわせて教えてください。恐らく読者の方もイグノーベル賞をとった先生が「どんなことでリラックスをして」「何を好んで聴いているのか」は気になるのではないかと。うちの読者は特に気にするハズです(笑)ぜひ。

    「ビートルズは好きですよ。歌謡曲は中森明菜かな、演歌は石川さゆり、クラッシックはマーラーの交響曲6番、チャイコフスキーの交響曲5番、オペラは椿姫!、バレエはやっぱり白鳥の湖、ミュージカルは思い出深いオペラ座の怪人です。心安まることはひとり娘との会話です」

    ―― 素敵です!さて、再び2013年の記事からで恐縮ですが、50歳すぎて突然トライアスロンをはじめたと書かれていました。あれから10年、まだつづけていらっしゃいますか?

    「まだ、トライアスロンやってますよ。水泳の練習は毎週2回(月曜日と金曜日)朝の六時半から3キロ泳いでいます。最近は中国語の勉強をやっていました」

    ―― 10年前から中国語が増えたのですね。ふとおもったのですが、「好きなものがみつからなかった」人の場合、先生のように定期的に「新しいこと」「新しい挑戦」をしていくのも「五月病」に限らずストレスをうまくかわすことに繋がったりするのでしょうか。

    「挑戦する姿勢が大切です。それは変化できる自分に繋がります。変化できれば、いろいろなストレスにも順応可能です。変化できる勇気を持って下さい。挑戦はどんなものでもOKです」

    ―― 最後にもう一つだけ。次に新しく挑戦してみたいことはありますか?

    「料理とピアノですよ」

    ―― それもぜひぜひ!今回はご協力いただきありがとうございました!

    <取材協力>
    新見正則医院院長

    <参考>
    新見 正則「イグノーベル賞に輝いた「マウスとオペラ」実験が教えてくれたこと」

    (宮崎美和子)

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