企業のツイッターって、なかなか運営が難しい部分があるものです。消費者に名前がよく浸透している会社だと、ユーザーは情報が欲しくてフォローしますが、ツイッターを使って自社のPRとなるとなかなかこれが難しいもの。そこで社長自らが立ち上がり、とある映像をツイッターに投稿しています。よっ社長!
■ 本日の加工動画 ■
【レーザーマーキング】
信頼する経営者にツイッターを始めた事を伝えたら「ツイッターは無駄な才能を披露して盛り上がる場なので、真面目な話はウケない」と助言された。
ならば、当社の機械を存分に無駄使いした技を披露しよう。
という言葉とともに、ツイッターに投稿されたのは、金属板にレーザーマーキングで「Twitter」の文字を刻印していく様子の映像。この動画を投稿したのは、新潟県燕市の協立工業株式会社の社長である、森下一さん。わずか数秒のうちに、「Twitter」の文字が刻印されていく様子を動画に映し出しています。
普段、こういう技術をなかなか見ることが少ないネットユーザーたちはこの動画に思わず反応。「これぞ無駄に洗練された無駄の無い無駄な動き」「これが本気の技術の無駄使いですか。単純に正確さと速度がすごい」と興奮を隠しきれなかったり、無駄なことを本気でやることに対して感心しきりだったり。
そして、「○○の刻印はできますか?」の質問や技術的な質問も相次ぐ状態に。森下さんも一人一人の質問に真摯に答えていらっしゃいます。中には結構無茶振りのような質問もあるような無いような……。
協立工業株式会社は、昭和37年の創業以来、新潟県燕市を拠点に金属加工を中心に様々な製品を作り出しています。金属プレス・溶接加工のサプライヤーとして、現在はプレス金型の内製化を進めているのだそう。自動車、鉄道、建築、医療分野など幅広い分野で使用される様々な機械の金属プレス部品を扱っています。
そんなわけで、直接消費者との接点がなかなかない状態で、企業同士での取引がメイン。自社HPでは自社で扱っている商材をPRしているのですが、なかなかHPへの導線が開かない……。そこで、社長自らがツイッターの1ユーザーとして試行錯誤してみることとなったそうです。
実は、ツイッターで披露したレーザーマーキングは1年以上前に導入したものの、金属部品の多くの受注と人員不足が原因でカーボンを使用した製品化への取り組みがストップ状態に。本来、社内で使用する社名入りのプレートや、当時研究開発していましたカーボン製品にマーキングする目的で導入したものの、結局使わずじまいのままお蔵入り状態となっていたそうです。
企業としてSNSに足を踏み入れることに躊躇していた森下さん、自社のPRに生かしたいけどどうしたものか……、と思いつつも、とりあえず個人アカウントからスタートし、趣味の話で少しずつ繋がりを増やしていったのだそう。SNSがHPへの導線となるようにするには……と考えていた折に、HPのリニューアルの打ち合わせが。その時にSNSの使い方について悩みをつぶやいてみたら、「ツイッターはどちらかと言うと、分かりやすい馬鹿な話がバズります。真面目な話でバズらせようと思ってもなかなかバズりません」という実に的確なアドバイスが。
そこでふと思い出したのが、お蔵入り状態のレーザーマーカー。「業界人は普通すぎる技術の為、誰も食いつかない。しかし、ホームセンターや通販で個人が簡単に手にできるものでは無い為、一般の人にとっては面白いのかもしれないと思い、気づけばなんと無く、字体も考えず、レーザーでTwitterとマーキングし、動画を撮っている自分がいました」と、ツイートに至るまでの経緯を教えてくださいました。
同業者の中では当たり前の技術でも、それ以外の人にとっては目新しいものはたくさんありますし、業界に興味がなくても、やはり「しょうもないことを極めて真面目にやる」というのは見ていて面白いと思う光景。一流ミュージシャンが真面目くさった顔しながら、CMソングみたいな冗談的な曲を弾くと何故か笑えてしまうのと似たようなものかもしれません。
で、見事に話題となったレーザーマーキングのツイート。個人からの質問の内容を観察すると、この技術を使ったアイテムを何か作ってもらえないだろうか、という期待が寄せられているのも見えてきました。これまでは企業相手の取引がメインの会社でしたが、一般消費者向けに業態を拡大するには、このレーザーマーキングの技術と、ファイバーレーザー切断機が大きな武器となりそうです。この切断機はスイスのバイストロニック社の製品で、0.8mm~25mmまでの鉄、ステンレス、アルミ、銅を瞬時に切断する技術を持つ優秀な機械。
この二つを組み合わせ、個人消費者が喜んでもらいそうなことを森下さんは色々と考えているようです。金属の薄い板を使った名刺や、金属板を組み立てて作る飛行機など。レーザーマーキングでユーザー名などを入れてプレゼント企画などにも使えそうです。
今後も、「技術の無駄使いシリーズ」は続けていきたいと意気込みを見せる森下さん。世の中ではなじみが薄い技術で披露される冗談的なものは、見ていて飽きないもの。今後にも期待したいですね。
https://twitter.com/kyoritsu_1962/status/1203838645540491264
<記事化協力>
森下一さん(@kyoritsu_1962L)
(梓川みいな)