年末年始は人が多く動く時期。当然、車以外にも多様な交通機関が使われます。中でも路線バスは地方と最寄りの鉄道を繋いだり、鉄道よりも安くて便利だったりする高速バスなども市民の大切な足。そんなバス運転手さんが用意した高額紙幣対策とは……。

 「年末年始の営業に向け、釣り札の準備完了!!今回は帯封つきです(笑)。私の乗務するバスで、『すみませ~ん、一万円札しか持ってないんですけどぉ・・・』って言われるお客様、安心して下さい。お釣りあります」と、帯がばっちりついた札束の写真がともにツイッターに投稿されています。

 この札束、実は二千円札。そして高額紙幣もどんとこい!とばかりにお釣り用の札束を用意したのは、バス運転手歴9年の、ひらっちさん。そういえばあったな、二千円札……。今でも銀行行けば両替してくれるんだ……と、当然なことなのに変な感想を抱いてしまった筆者。

 この札束を見た人たちからは、「バスで高額札出す人多いですね」と乗客をよく観察している人からの感想があがったり、「敢えての二千円札というのが良い」といった感想、そして続々集まる「二千円札久しぶりに見た!」も。

 路線バスによって客層が違うので、運転手さんも色々と対策を練っているようです。例えば、一般路線バスでそれなりの区間の乗車ではあれど小銭も千円札も持たずに万札で乗車する人。うっかりさんで万札を崩し忘れた人もいるにはいるようですが、わざと万札しか持たずに乗車し、車内で万札を両替できないとなると運賃を踏み倒していくという例も、しばしば耳にすることがあります。ひらっちさんは遭遇したことはないそうですが、社内で先輩が体験したことがあるとの話。他のバス会社では運賃の踏み倒しが度々起きているという話もでているそうです。

 この場合、短距離区間で数百円の被害ですが、ちりも積もれば相当額の損失に。そのため、各路線バスの運行会社では、運転手にある程度の備金を支給して対策しているところも多いのですが、年末年始は支給されている備金だけでは対応しきれない場合も多くあります。

 ひらっちさんが担当しているのは主に高速路線で、現金やカードよりも往復券や回数券の方が取り扱いが多いのだそう。高速バス1本で行ける場所であれば、確かに往復券や回数券の方が若干お得に活用できますもんね。しかし、こういった活用の多くはビジネス利用での活用が多く、長期休みなどで高速路線を利用する人は、乗車時に現金支払いという人も少なくない様子。

 ひらっちさんの担当路線でも、長期休暇などで普段高速バスを使わない人は高額紙幣を持ってくる人も多いようで、「この時期は高額紙幣が立て続けに来ることがあります。会社から備金も少しは預かってますが、足りなくなったことが過去に何度かあったため個人でも多少の準備をするようになりました。その時に千円札より嵩張らない二千円札を持つようになりました」とのこと。確かに千円札の半分の量で済みますからね。

 なお、これだけではなく、ちゃんと千円札も常備しているので万札でも五千円札でも対応可能。そして、二千円札だけでは車内備え付けのICカードチャージ機は非対応なので、現金の万札で両替となる場合は千円札2枚に二千円札4枚を渡しているそうです。

 ちなみに、二千円札が出てくるとつい嬉しくなってしまうのですが、これはどうやら沖縄以外の場所に住んでいる人だけの様子。ひらっちさんによると、沖縄ではかなり普及しており、紙幣に印刷されている沖縄の首里城の守礼門は、2000年に開催された沖縄サミットを記念して採用されています。その縁もあって沖縄では今もATMなどで普通に出てくるほど流通しているといいます。

 観光とレジャー、そして歴史を学ぶ場所としても大きな価値がある沖縄がモチーフの二千円札、意外と使い勝手は良いと思うのでもっと内地にも普及してくれると助かるのですが……(つり銭で渡された千円札8枚を眺めつつ)。

 いつも当たり前のように同じ時間を、同じ路線で走ってくれる交通機関は必要なインフラ。バスによって乗降時に運転手さんの近くを通りながら運賃を支払う時には、筆者個人的には、市バスなど先に運賃を払う場合は「お願いします」、降車時は「お世話様でした」と一声かけるようにしています。

 こういうのって、何か照れて言いづらいところもあったりしますが、やはりバスの運転はプロだからできること。ひらっちさんも、「やはり『ありがとう』、『お疲れ様』と言われると嬉しいですね。バスの運転士は拘束時間が長い仕事なんですが、疲れも吹き飛びます。この仕事をしてて良かったなぁと思います。『運転が上手くて快適だったんでよく眠れた』なんて言われた時は、とても照れ臭かったです。お世辞でもありがたいです」と仰っています。

 車いすの人にもベビーカーを使っている人にも優しい扱いをしてくださる交通機関の人々に感謝しつつ、突発的に両替をしなくても済むように、乗客側も前もって準備をしておきたいですね。

<記事化協力>
ひらっちさん(@t_hiracchi)

(梓川みいな)