「特撮映像館」、今回取り上げるのは滝田洋二郎監督の『陰陽師』です。野村萬斎がみごとに安倍晴明になりきった伝奇特撮作品です。
夢枕 獏の原作小説を映像化した作品で夢枕は脚本にも参加している。基本的には早良親王の霊を呼び起こし平安の都を滅ぼそうという陰陽師・道尊と安倍晴明の戦いを描いた作品。
端的に言って主演の野村萬斎を観る映画といってしまっていいところであるが、野村は見事に安倍晴明になりきっている。平安時代の人間の所作など実際に見たわけではないが狂言師だけあってそれらしいオーラを出している。
特撮に関しては今井絵理子演じる蜜虫や晴明の操る式紙、嫉妬から鬼に転じる祐姫などなど見どころは多い。
個人的な感想にはなるが、冒頭の人魚を食べるシーンや道尊が早良親王の霊を呼び起こすために入る祠など、諸星大二郎のコミック作品のイメージが浮かんだ。原作はどうかわからないが滝田監督は諸星の作品も読んでいたのではないだろうか。たんに諸星の作品に本作のような伝奇SF的な作品が多いだけのことかもしれないが、映像の雰囲気には諸星作品的な色が出ていたように感じる。
本作は好評を得て続編の『陰陽師II』も作られている。
監督/滝田洋二郎
キャスト/野村萬斎、伊藤英明、今井絵理子、真田広之、小泉今日子、ほか。
2001年/116分/日本
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)