おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】185回 超人バロム・1/古城武司(原作/さいとう・たかを)

「超人バロム・1」表紙「うちの本棚」、今回取り上げるのは古城武司のコミカライズ版『超人バロム・1』です。

かつてテレビドラマを見ていたという人も、まったくドラマを知らないという人も十分に楽しめるヒーロー活劇作品。原作ドラマの持っていた怪奇性や登場するユニークな魔人も再現したコミカライズ作品のお手本のような仕上がりです。

バロム1・古城


  • 本作は東映制作による特撮テレビドラマ『超人バロム・1』のコミカライズ作品である。このドラマのコミカライズ作品は、本書の古城武司版以外にも、さいとう・たかを/さいとうプロ、松本めぐむによるものが講談社「テレビマガジン」「たのしい幼稚園」、黒崎出版「テレビランド」に掲載されていたようだが、古城版を除いて単行本化はされていない。

    テレビ版は当初アニメ作品として企画され、検討される中で『仮面ライダー』のセカンドという形で特撮ドラマとして制作されることが決まった。
    原作はさいとう・たかをが講談社の「週刊ぼくらマガジン」に連載していた作品だが、ヒーローである「バロム1」自体のデザインやストーリーは大幅に変更されている。テレビ版からこの作品に触れたボクなどは、のちに原作コミックを見て違和感を感じた(笑)。
    『仮面ライダー』が当初怪奇性を打ち出していたように、『超人バロム・1』も怪奇性の強い怪人やストーリーの印象が強い。特に魔人の造型はグロテスクと言ってもいいものが散見され、のちに「トラウマドラマ」としてあげられることも多かった。

    さて、古城武司によるコミカライズ版だが、全11話中,魔人が単独で登場するのは4話のみで、基本的に2体の魔人が登場する構成となっている。当然ストーリーもテレビ版をアレンジする形になりオリジナル色も濃い。
    注目したいのは、バロム・1や魔人の造型がテレビ版をしっかり再現しているところ。前述したようにこの作品では魔人の造型がひとつの特徴とも言え、コミカライズ版でもそこをしっかり再現しているのは本作品のポイントといえるだろう。
    基本的には正統派の少年漫画で、ヒーローの活躍が堪能できる。ある意味、コミカライズ作品の典型ともいえ、コミカライズ作品を多く手がけた古城武司だからこその仕上がりといってもいいだろう。単に魔人が現れ、バロム・1が倒すというだけでなく、各話きちんとしたストーリーがあるのもいい。元のドラマを知らない読者でも十分に楽しめる作品になっている。

    本作は連載中に秋田書店「サンデーコミックス」から単行本化され、全2巻が刊行された。が、最終話が未収録のまま再刊行の機会がないまま30年あまりが経ち、マンガショップシリーズから完全版での再刊行となった。特に記載は無いものの、最終話は印刷物からの復刻のようである。

    初出:秋田書店「冒険王」1972年8月号~1973年1月号

    書 名/超人バロム・1
    著者名/古城武司
    出版元/パンローリング・マンガショップ
    判 型/B6判
    定 価/1890円
    シリーズ名/マンガショップシリーズ
    初版発行日/2007年1月2日
    収録作品/呪いの魔人フランケルゲ、快腕魔人エビゲルゲと変化魔人アンコルゲ、毒ガス魔人ゲジゲルゲと地震魔人モグラルゲ、ミノ虫魔人ミノゲルゲ、魔女ランゲルゲ、吸血魔人サソリルゲと洗脳魔人ヤゴゲルゲ、毒ガス魔人クチビルゲと光線魔人ヒャクメルゲ、骸骨魔人ホネゲルゲと脳波魔人ノウゲルゲ、毒トゲ魔人トゲゲルゲ、残忍魔神トゲゲルゲと幻惑魔人クビゲルゲ、対決!! 悪の支配者 大魔人ドルゲ

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • イデオン表紙
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】169回 伝説巨神イデオン/古城武司、池原しげと(原作・矢立 肇、…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第七十一回 ゴジラVSメカゴジラ 決戦史

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第六十九回 ゴジラVSキングギドラ決戦史/石川球太、堀江卓、古城武…

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕

      運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕

      1995年から続く老舗CGI配布サイト「CGI RESCUE」が2026年3月末での終了を発表しまし…
    2. 違和感満載のサイケな銭湯でほっこり入浴 蒲田で開催「脳汁銭湯」体験レポート

      違和感満載のサイケな銭湯でほっこり入浴 蒲田で開催「脳汁銭湯」体験レポート

      旧き良き銭湯が異次元の入浴空間に変身するイベント「脳汁銭湯」が、11月26日から12月7日まで東京・…
    3. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…

    編集部おすすめ

    1. 例のあの和菓子、都道府県別の呼び方

      全国で呼び名はどう違う?「今川焼」が19エリア制覇 ニチレイが“勢力図”を公開

      全国で呼び名が分かれる“中に具材を入れて焼いた円形の厚焼き和菓子”について、株式会社ニチレイフーズが47都道府県別に最も多く使われている呼称…
    2. セブン×ちいかわ「鬼辛カレー」を実食!全身が真っ赤に染まるのも納得の辛さ

      セブン×ちいかわ「鬼辛カレー」を実食!全身が真っ赤に染まるのも納得の辛さ

      セブン‐イレブンで12月2日から始まった「ちいかわと冬をたのしんじゃお!」キャンペーンで、作中に登場した「鬼辛カレー」が発売中。原作で話題の…
    3. 楽天モバイル、シニア向けに「オレオレ詐欺対策保険」を無料提供開始

      楽天モバイル、シニア向けに「オレオレ詐欺対策保険」を無料提供開始

      楽天モバイルと楽天損害保険は12月1日、「最強シニアプログラム」を強化し、オプションパック「15分かけ放題&安心パック」加入者を対象とした「…
    4. 静岡新球団で何が起きているのか ハヤテ223とくふうHDがネーミングライツ巡り対立

      静岡新球団で何が起きているのか ハヤテ223とくふうHDがネーミングライツ巡り対立

      静岡県を拠点とし、プロ野球ウエスタン・リーグに参加している新球団「くふうハヤテベンチャーズ静岡」を巡り、ネーミングライツ契約を含む資本業務提…
    5. 事業者向け「ASKUL」Web注文、12月第1週に再開 “明日来る”配送は当面遅れる見込み

      事業者向け「ASKUL」Web注文、12月第1週に再開 “明日来る”配送は当面遅れる見込み

      アスクル株式会社は11月28日、10月19日に発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害の復旧状況について第11報を公表しました。 事業所…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト