おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第七十一回 ゴジラVSメカゴジラ 決戦史

「うちの本棚」、昭和ゴジラシリーズのコミカライズ作品を復刻したシリーズの第3弾『ゴジラVSメカゴジラ 決戦史』をご紹介いたします。桑田次朗の幻の『空の大怪獣ラドン』が収録されていることで本書の価値はググンとアップしているといえますが、それと同等くらいに巻末の怪獣デザインに関する資料も貴重です。


  • 映画『ゴジラVSメカゴジラ』の公開に合わせて昭和ゴジラシリーズのコミカライズ作品を中心に復刻された単行本シリーズの第3弾。
    シリーズ3冊で手軽に読むことのできなかった東宝怪獣映画のコミカライズ作品がかなりまとまって復刻されたのは嬉しいことだったが、その他の作品の復刻の機会が断えてしまったのも事実で、他の特撮作品の復刻も何かの形で実現してほしいものである。

    今回は『ゴジラVSメカゴジラ』に登場する怪獣にからんだ作品として『ラドン』も含まれ、個人的に読んでみたかった桑田次郎の『空の大怪獣ラドン』が復刻されていたのが嬉しい。もちろん個人的な感想だけではなく、これは貴重な一冊となる収録だろう。

    作品自体は絵物語になっていて、桑田もコミックの絵柄ではなく写実的な挿絵の画風で執筆している。『ゴジラの息子』を担当した中沢啓治は『ウルトラセブン』のコミカライズなども手がけていた。まぁすでに映画のゴジラの造形が初代のものからかけ離れてきた時期のものなので、中沢の描くゴジラも怖さは感じられないものになっている。

    『怪獣総進撃』はこの単行本シリーズの他の巻にも堀江卓版が収録されたが、井上智&成田マキホ版のこちらは雑誌付録で読みごたえもある。もっとも映画そのもののストーリーを多少アレンジしたものにはなっている。

    井上智は『黄金バット』『魔神バンダー』といった作品のコミカライズも手がけていた。
    手塚調のキャラクターは馴染みやすいし怪獣も怖さが出ていて、コミカライズ作品の中ではなかなかイケてるのではないだろうか。

    成田マキホは手塚原作のテレビ特撮シリーズ『サンダーマスク』で怪獣のデザインもしていた。
    『ゴジラ対メカゴジラ』を担当したのは蛭田充で、怪獣ものではあるのだが蛭田が担当した『デビルマン』の印象がなんとなく匂っている。とはいえ格闘シーンなどのスピード感はダイナミックプロに関係する人なのだなと思わせてくれる。

    最後は昭和ゴジラシリーズの最終作『メカゴジラの逆襲』。担当したのは古城武司で、ゴジラシリーズのコミカライズは2回目となる。映画ではサイボーグとなった桂の悲哀がよく描かれていたのだがコミカライズ版ではそこまで描くのは難しかったようで残念ではある。が、ストーリーそのものは分かりやすくなっていて年少のゴジラファンにはよかったのかもしれない。

    さて本書巻末にはゴジラをはじめとする東宝特撮怪獣映画の、おもにデザインに関する資料が掲載されている。これだけでも特撮ファンには貴重なものだといえるだろう。
     

    書 名/ゴジラVSメカゴジラ 決戦史
    著者名/桑田次郎、中沢啓治、井上 智、成田マキホ、蛭田 充、古城武司
    収録作品/空の大怪獣ラドン(「おもしろブック」1956年10月号付録
         怪獣島の決闘 ゴジラの息子(「少年」1968年1月号付録)
         怪獣総進撃(「まんが王」1968年7月号付録)
         ゴジラ対メカゴジラ(「月刊少年チャンピオン」1974年4月号)
         メカゴジラの逆襲(「月刊少年チャンピオン」1975年4月号)
    発行所/竹書房
    初版発行日/1993年12月27日
    シリーズ名/BAMBOO COMICS


    【文:猫目ユウ】
    フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。 

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】200回 バットマン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】196回 怪奇大作戦/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】194回 ウルトラセブン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】185回 超人バロム・1/古城武司(原作/さいとう・たかを)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】170回 勇者ライディーン/蛭田 充(原作・鈴木良武)

  • イデオン表紙
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】169回 伝説巨神イデオン/古城武司、池原しげと(原作・矢立 肇、…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第六十九回 ゴジラVSキングギドラ決戦史/石川球太、堀江卓、古城武…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十九回 弾丸トップ/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十八回 電光少年スパーク・ダン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十七回 ベビーテック/桑田次郎

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト