おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】194回 ウルトラセブン/桑田次郎

ウルトラセブン「うちの本棚」、今回取り上げるのは「ウルトラシリーズ」の中でも傑作といわれる『ウルトラセブン』のコミカライズ、桑田次郎版です。コミカライズ版としても傑作と言っていいでしょう。

【関連:193回 ウルトラマン/楳図かずお】

ウルトラセブン上 ウルトラセブン中

  • 本作は『ウルトラマン』に続く、円谷プロ制作の巨大ヒーロー特撮テレビ番組のコミカライズ作品である(実際の放映では『ウルトラマン』と本作の間には、東映制作の『キャプテンウルトラ』が入る)。

    映像作品本編では『ウルトラマン』との関連は、同じ「光の国」出身ということだけだったが、桑田次郎のコミカライズ版では、ウルトラマンからセブンに、地球を見守ることを委任されるシーンが冒頭に描かれている。ウルトラヒーローが共演するのはこれが最初なのではないかと思う。

    『ウルトラマン』に比べ、地球防衛の組織も軍隊的で、内容的にもハードな印象があり、セブンのデザインも、ウルトラマンに比べ戦闘的なイメージが強くなっているが、桑田次郎のシャープな描線はそんなセブンの世界観を見事に表現していた。
    特にセブンのスピーディでパワフルな印象は、桑田の描写では映像作品以上に強調されていたのではないかと思う。

    映像作品放映当初は、初出誌と平行して雑誌版の総集編が刊行されるなどもしていたようだが、連載終了後は単行本化されることなく、朝日ソノラマの「サンコミックス」が楳図かずおの『ウルトラマン』を刊行したのに続いて、桑田版を全4巻、一峰大二版を全2巻で刊行するまで埋もれてしまっていた。

    「サンコミックス」刊行後は「サン・ワイド・コミックス」で全2巻、A5版などが刊行されたが、短編作品など未収録もあった。その後パンローリングの「マンガショップシリーズ」で一峰大二版と併せ上中下の全3巻で刊行された際、未収録作品も追加された。

    『ウルトラマン』と違い、主人公であるモロボシダンとセブンが同じ意識を持っていることから、コミカライズ版でセブンがセリフをしゃべるシーンもあまり違和感を感じない。また『ウルトラセブン』の魅力の一つでもある「ウルトラ警備隊」の超兵器(ウルトラホークなど)の描写も映像作品を彷彿とさせるもので、コミカライズの神髄という印象すらある。

    『ウルトラセブン』では「超兵器R1号」や「ノンマルトの使者」また「第四惑星の悪夢」「狙われた街」などの名作があるが、それらを桑田版はすべて取り上げている。映像作品も素晴らしいが、桑田版のコミカライズもそれぞれ素晴らしい仕上がりになっているので、まだ読んだことがないという方にはぜひお読みいただきたい。

    初出:講談社「週刊少年マガジン」昭和42年38号~昭和43年38号、「別冊少年マガジン」昭和42年秋のおたのしみ特大号~昭和43年夏休みおたのしみ特大号まで不定期掲載。「流星人間ゾーン」昭和48年テレビしんばんぐみ特別号

    書 名/ウルトラセブン(上・中)
    著者名/桑田次郎
    出版元/パンローリング
    判 型/B6判
    定 価/1890円(2巻とも)
    シリーズ名/マンガショップシリーズ
    初版発行日/2004年12月25日(2巻とも)
    収録作品/上・姿なき挑戦者、湖の秘密、金色の龍、海底基地を追え、北へ帰れ、第四惑星の悪夢、下・ウルトラ警備隊西へ、水中からの挑戦、狙われた街、栄光は誰のために、超兵器R1号、セブン暗殺計画、K団地の怪、闇に光る目、ノンマルトの使者、たおせ!アイアンロック

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 「癒スラッガー」税込8800円
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    ウルトラセブンの「アイスラッガー」が癒やしの武器に!マッサージアイテム「癒スラッ…

  • ウルトラマンコスモス(ルナモード)のぐんぐん人形(ネントクさん提供)
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    変身シーンのパースモデルを再現 ウルトラマン「ぐんぐん人形」ファンアート

  • ウルトラセブン55周年ビジュアル
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    ウルトラセブン55周年プロジェクト始動 世界が混迷を極める今だからこそ「彼の背中…

  • 癒スラッガーメイン画像
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    疲労怪獣を倒す!「癒スラッガー」復刻 ウルトラセブンの「アイスラッガー」を忠実再…

  • 「ウルトラマン基金」設立10年 特選エピソード10作品無料配信で在宅支援
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    ウルトラマンが在宅支援企画 特選エピソード10作品無料配信

  • TV・ドラマ, エンタメ

    全メインキャストが集結!「ウルトラマンZ」オンライン発表会開催  新ポスタービジ…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】200回 バットマン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】196回 怪奇大作戦/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】195回 ウルトラセブン/一峰大二

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】181回 ウルトラマンタロウ/石川 賢

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      どんな人間にもいつかはやってくる老眼。なんだか手元が見えづらいな……という状態を体験できるトランプが…
    2. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…
    3. 「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」26年2月15日放送開始 PROJECT R.E.D.第1弾

      東映は12月25日、11月に発表していた新番組「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」について、202…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト