おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】196回 怪奇大作戦/桑田次郎

「怪奇大作戦」書表 「うちの本棚」、今回も特撮テレビドラマのコミカライズ作品から、桑田次郎の『怪奇大作戦』を取り上げます。

 常識では考えられない不可解な事件に科学のメスを振るう「SRI」の活躍を描いた異色の特撮テレビドラマを、桑田次郎のシャープな描線が見事に再現しています。

【関連:195回 ウルトラセブン/一峰大二】

怪奇大作戦・全


  •  本作は円谷プロ制作の特撮テレビドラマ『怪奇大作戦』のコミカライズ作品である。
    『ウルトラマン』『ウルトラセブン』と巨大ヒーロー、怪獣が登場する特撮番組を制作してきた円谷プロが、『ウルトラQ』企画当初のような、人間の心理を鋭くえぐる不可解な犯罪事件に、科学のメスを入れるといった内容の特撮番組に挑戦したもの。

     中には吸血鬼や人間を溶かす毒鱗粉を持った蛾なども登場するが、たとえば「かまいたち」のような、科学的にトリックを暴くとともに、犯人の心理に迫るようなエピソードが中心だ。主人公の属する「SRI」は警察の依頼を受けて事件を科学的に調査する機関であり、いわゆる「科研」を扱った最初の作品だと思う。

     桑田次郎のコミカライズ版では「人喰い蛾」「吸血地獄」といったエピソードを取り上げていて、連載中盤から桑田オリジナルのストーリーになったあとも、知能を持った吸血植物や幽体離脱など、オカルト的な傾向が強い。もちろん科学の目でそれらの原因に迫っていくところは、テレビドラマと同じではある。
    『ウルトラセブン』のコミカライズ同様、テレビドラマのシャープな印象は、桑田の描線に合っていて、単なる怪奇ドラマではない本作の魅力を伝えるのに効果を与えている。

     単行本は初出後しばらく出されず、朝日ソノラマの「サンコミックス」が『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に続く形で刊行したのが最初となる。ただし未収録作品があり、後に「サン・ワイド・コミックス」に収録した際それを追加し、単行本のタイトルに「(全)」が付された。

     その後また入手の難しい時期があったが、パンローリングの「マンガショップシリーズ」から『学園名主』を併録して2005年に再刊行された。

    初出:集英社「少年ブック」昭和43年10月号~昭和44年3月号

    書 名/怪奇大作戦(全)
    著者名/桑田次郎
    出版元/朝日ソノラマ
    判 型/B6判
    定 価/570円
    シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
    初版発行日/昭和60年8月30日
    収録作品/蛾、死を呼ぶ絵、ふたつの顔の少女、まぼろし殺人事件、闇からの声、死霊の家、解説「怪奇大作戦」の誕生から劇画まで(金子益実)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • TV・ドラマ, エンタメ

    根強いファンに支持される円谷特撮の傑作「怪奇大作戦」Blu-ray BOXで蘇る…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】200回 バットマン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】197回 怪奇大作戦/影丸穣也、中条けんたろう

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】194回 ウルトラセブン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第七十一回 ゴジラVSメカゴジラ 決戦史

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十九回 弾丸トップ/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十八回 電光少年スパーク・ダン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十七回 ベビーテック/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十四回 豹マン/桑田次郎

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんの公式X

      アインシュタイン稲田の“潔白”が証明された日 暴露文化とSNS拡散が残したもの

      お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんのInstagramが不正にログインされ、卑猥なやり取り…
    2. 【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験

      【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験

      ホラーイベント「笑える事故物件 笑えない事故物件」公式グッズの体験型キット「落とし物:黒い封筒」を体…
    3. 丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      焼き肉チェーンの牛角は9月4日より、サンマを丸ごと一尾のせた「牛角流秋刀魚ラーメン」を販売しています…

    編集部おすすめ

    1. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    2. 「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる……」Xで飼い主さんにこうつぶやかれたのは、4羽の白文鳥さんたち。添えられた写真には、4羽が棚の上に連なって集まり、まるで連…
    3. 法事でオリジナルTシャツ!?音楽フェスのような斬新な引き出物が話題

      法事で配られた家紋&没年入りTシャツが話題 “フェス感”漂うセンスに爆笑

      法事の引き出物(お返し)といえばお菓子やカタログギフトが王道ではないでしょうか。しかしときには予想だにしない品をもらうこともあるようで……。…
    4. 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共同で、避難生活に特化した支援ネットワーク…
    5. 「週刊文春」2025年9月4日号(8月28日発売)

      週刊文春、最新号表紙は「白紙」 48年続いた和田誠さんの表紙絵に幕

      総合週刊誌「週刊文春」は、2025年8月28日発売の9月4日号で48年間にわたり表紙を飾り続けたイラストレーター・和田誠さんの絵を終了し、大…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト