おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】200回 バットマン/桑田次郎

バットマン「うちの本棚」も今回で200回となります。個人的な趣味ばかりで恐縮しますが、ここまで続けてこられたのも皆様のお蔭だと感謝しております。
 200回目の作品として取り上げるのは、桑田次郎版『バットマン』です。

 これまで単行本化の要望が多くありながら、諸般の事情で実現しなかった本作が、連載から50年近くを経てついに単行本化されたことは、漫画出版史に残る出来事でしょう。

【関連:199回 ウルトラQザ・ムービー 星の伝説(劇場版予告編)/さいとう・たかを】

バットマン/桑田-1 バットマン/桑田-2 バットマン/桑田-3

  •  本作はアメコミ版『バットマン』をもとにテレビドラマ化され、日本でも放映された実写ドラマ『バットマン』のコミカライズ作品である。
     版権等の問題から連載から50年近くを経た2013年秋まで、単行本化されることがなく、作者である桑田次郎のファン、作品自体のファン双方から単行本化の要望が高かった作品である。
     正直、このまま単行本化されることはないのではないかと思っていた作品でもあり、日本の漫画出版史において、手塚治虫の『新宝島』の復刻と同等の価値があるのではないかと思う。
     もともと桑田次郎の画は硬質な線が特徴であり、デッサンもしっかりしているので原作がアメコミである本作を担当するにうってつけの人材であったのは頷ける。またほとんどの作品でアミを使わない作画スタイルもアメコミ的な印象に近いものがあるだろう。
     本書の2巻では桑田自身のコメントが掲載されているが、作者としては当初もっとアメコミ的な画風を検討していたとのことである。ほかにも連載作品を抱え、作画スタイルを変えている時間的余裕がなかったことから、それまでどおりの作画スタイルで描いたということだが、『バットマン』の世界観を見事に描きあげていたのは、本作をご覧になればわかることだろう。
     テレビドラマのコミカライズ、と冒頭に述べたが、実際にはテレビドラマのシナリオに沿ったものではない。むしろアメコミ版をベースにして、桑田なりのアレンジを加えた作品になっている。
     残念なのはペンギンやジョーカー、キャットウーマンといったお馴染みのキャラクターが登場しないことだろうか。桑田の描くキャットウーマンも見てみたかった気がする。

    初出:少年画報社「少年キング」1966年23号~1967年15号
       少年画報社「少年画報」1966年7月号~1967年4月号

    書 名/バットマン(全3巻セット)
    著者名/桑田次郎
    出版元/小学館クリエイティブ
    判 型/A5変
    定 価/7600円+税
    シリーズ名/復刻漫画シリーズ
    初版発行日/2013年10月30日
    収録作品/バットマン(1、2巻「少年キング」版、3巻「少年画報」版)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • ニュース・話題

    「バットマン」80周年公式サイトが始動

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】196回 怪奇大作戦/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】194回 ウルトラセブン/桑田次郎

  • ゲーム, ニュース・話題

    パズドラに国際的刺客登場!「パズドラ」×「バットマン」コラボ決定

  • 「バットマン」最新刊、コロラドの銃乱射の影響を受け発売延期
    ニュース・話題

    「バットマン」最新刊、コロラドの銃乱射の影響を受け発売延期

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第七十一回 ゴジラVSメカゴジラ 決戦史

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十九回 弾丸トップ/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十八回 電光少年スパーク・ダン/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十七回 ベビーテック/桑田次郎

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第三十四回 豹マン/桑田次郎

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「もしかして、フツーの人っておなか空いてる時以外おなか空いてないの?」そんな衝撃の(?)問いかけとと…
    2. コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      10月1日は「コーヒーの日」。そんな記念日に合わせて、かどや製油公式Xが提案してきたのは……まさかの…
    3. 「えもじの子(仮)」

      LINEの人気キャラ「えもじの子(仮)」が有料で復活 一部未収録に完全復活を望む声も

      つぶらな瞳ととぼけた表情で人気を集めたLINE絵文字「えもじの子(仮)」の無料配布版が10月1日、有…

    編集部おすすめ

    1. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    2. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    3. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    4. 「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」のロケ地として知られる静岡市清水区で、作品ゆかりの企画を集めた大型オフラインイベント「清水 ビー・バップ・…
    5. 第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京アニのセカイ展―』

      京都アニ「第7回ファン感謝イベント」追加情報を公開 新商品や書籍予約、グッズ二次予約も発表

      株式会社京都アニメーションは、10月25日・26日の2日間で開催予定の「第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト