「うちの本棚」、今回は特撮テレビ作品の代表ともいうべき『ウルトラマン』のコミカライズを取り上げます。
いくつかある『ウルトラマン』のコミカライズ作品のなかでも異彩を放つ、楳図かずお版。テレビ作品のストーリーを下敷きにしたオリジナルな展開は、いま読んでも十分に楽しめるものです。
本作は円谷プロ制作の特撮テレビ番組『ウルトラマン』のコミカライズ作品である。同時期に放映された『マグマ大使』(こちらの方が一週早く放送が開始された)とともに特撮巨大ヒーローのブームを作るきっかけとなった作品だ。
コミカライズを担当した楳図かずおは、貸本マンガ、少女マンガ誌を経て、少年マンガ誌に進出し始めたころで、すでにホラー作品で定評があったこともあり、「妖怪も怪獣も同じ」ということでの起用だったのではないかと本人は述懐している。
確かに映像本編に比べると気持ちの悪いくらいに生物的な「バルタン星人」など、楳図かずおならではの作品となっている。映像作品ではゴジラ以外の何者でもなくってしまっている「ジラース」も、恐竜的に描かれていて、むしろ好感が持てたりもする。
初出後はすぐに単行本化されることなく、半ば埋もれていた作品だが、朝日ソノラマの「サンコミックス」が全3巻で復刻したあと、今回取り上げた「サン・ワイド・コミックス」にも収録され、その後A5判、コンビニコミックと刊行された。現在は講談社から文庫版が刊行されている。
『ウルトラマン』のコミカライズというと講談社「ぼくら」に連載された一峰大二版が、秋田書店「サンデーコミックス」で刊行されていたこともあり有名だが、楳図かずお版はテレビ作品を下敷きに、オリジナルな展開が楽しめる、怪獣ホラー作品ともいうべき作品で、じっくりと味わって読んでいただきたいものだ。
初出:講談社「週刊少年マガジン」昭和41年27号~昭和42年19号、「別冊少年マガジン」
書 名/ウルトラマン(全2巻)
著者名/楳図かずお
出版元/朝日ソノラマ
判 型/B6判
定 価/各630円
シリーズ名/サン・ワイド・コミックス
初版発行日/第1巻・昭和59年6月30日、第2巻・昭和59年7月20日
収録作品/第一巻・バルタン星人、怪獣ヒドラ、怪獣ガヴァドン、怪獣ジラース、第2巻・怪獣ドドンゴ、怪すい星ツイフォン、メフィラス星人、「楳図かずおと怪獣漫画/安井ひさし」
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)