おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

変身シーンのパースモデルを再現 ウルトラマン「ぐんぐん人形」ファンアート

 特撮はさまざまな仕掛けで迫力ある映像を作り出していますが、ウルトラマンの変身シーンもその1つ。ぐーんと飛び出してくるような躍動感を出すため、パース(遠近感)を強調したデフォルメモデルを使って撮影しています。

 そんなデフォルメモデル、通称「ぐんぐん人形」のファンアートを粘土で作っているのは「ネントク」さん。ぐんぐん人形の魅力や作り方など、色々とうかがいました。

  •  ウルトラマンが変身し、ぐんぐん巨大化する迫力を表現しているといわれる、手を天に突き上げた姿が迫ってくるカット。ファンの間では「ぐんぐんカット」という通称で親しまれています。

    ウルトラマントリガーの「ぐんぐん人形」(ネントクさん提供)

     このカットの撮影に使われているのが、パース(遠近感)を強調したデフォルメモデル(パースモデル)。手前に突き出している手を大きく、そして足にいくに従って極端に小さく作ることで、実際よりも「飛び出し」感が強調された映像になります。

    ウルトラマンコスモス(ルナモード)の「ぐんぐん人形」を横から見たところ(ネントクさん提供)

     ネントクさんは、ぐんぐんカットに使われるフィギュア「ぐんぐん人形」に魅了されたファンの1人。2018年の夏に訪れた、その出会いをこのように語ってくれました。

     「それまではCGか実際のスーツで撮影されていると思っていましたので、私にとっては衝撃でした。横から見た、手だけ異様にでかいアンバランス加減がとても可愛く感じ、でも正面から見ると途端にかっこよくなる。そんなぐんぐん人形が、もうどうしても欲しくなってしまいました」

     自分の好きなウルトラマンの「ぐんぐん人形」はないか、と探してみたものの、商品化されていないと知ったネントクさん。なければ作ってしまおう!と、100円ショップで粘土を買い、見よう見まねで作り始めたそうです。

     最初は粘土造形についての知識もなく、粘土の扱い方から手探りだったのだとか。それでも、徐々に自分なりの作り方を確立し、数々の作品を作ってきました。ちなみに、今でも目とカラータイマー以外の部分は、100円ショップの粘土を使っているそうです。

     パースを強調した「ぐんぐんモデル」は、バランス良く大きさの強弱をつけないとフォルムが破綻し、うまく狙い通りの迫力が出てくれません。ネントクさんは頭の中で三角形を描き、横から見たときにその枠内にちょうどよく収まるよう気をつけていると語ってくれました。

    三角形を意識してバランスを調整(ネントクさん提供)

     「調整はある程度形が出来上がってからで、私はいつも写真を撮ったり、鏡に写したりしてバランスのチェックを行っています。写真に撮ることで、実際に見たときには気付かないバランスの違和感を発見出来たり、また、鏡に映すのは、顔や身体の作りが左右不自然になっていないかを確認するためです」

     これまでに、ウルトラマンシリーズで13体、そして仮面ライダークウガと「魔進戦隊キラメイジャー」のキライメイレッドを加えた15体の「ぐんぐん人形」が作られました。キラメイレッドは、変身する熱田充瑠が肌身離さず持っているスケッチブックを手にしているのがポイントですね。

    仮面ライダークウガのぐんぐん人形(ネントクさん提供)

    キラメイレッドのぐんぐん人形(ネントクさん提供)

     お気に入りの「ぐんぐん人形」についてうかがうと、最初に欲しいと思って作り始めたウルトラマンティガと、もとになるカットはないもののオリジナルの解釈で作ったイーヴィルティガ、両手を突き上げた姿が印象的なウルトラマンアグルの3点を挙げてくれました。

     「私が一番初めに欲しいと思って作り始めたのがウルトラマンティガのぐんぐん人形であり、納得のいくティガが作れるまで3回作り直しました。そしてようやく完成出来たものなので、やはりティガには思い入れがあります」

    ウルトラマンティガのぐんぐん人形(ネントクさん提供)

     「公式にイーヴィルティガのぐんぐんカット(変身シーン)というのは存在せず、劇中にも出てこないものなのですが、『もしイーヴィルティガにぐんぐんカットがあったら、きっとこういうポーズになるだろう』という自分の解釈を反映出来た作品なので」

    イーヴィルティガのぐんぐん人形(ネントクさん提供)

     「アグルに関しましては、単純にキャラクターが好きということと、両腕を突き出したぐんぐんカットというのが、とても斬新で迫力があるので気に入っています」

    ウルトラマンアグル(シュプリームモード)のぐんぐん人形(ネントクさん提供)

     ネントクさんは「ぐんぐん人形」だけでなく、特撮作品に登場する通常のアイテムやフィギュアも粘土造形で作っています。「仮面ライダークウガ」に登場した変身ベルトの、遺跡から出土したときの形態である「石化アークル」は原寸大の作品。

    「仮面ライダークウガ」の石化アークル(ネントクさん提供)

     また、2002年放送の「仮面ライダー龍騎」に登場する仮面ライダーナイトは、ネントクさんが一番好きな仮面ライダーとのこと。しかし「かっこいいポーズならいくらでも市販されているので、絶対に商品化されないような場面をフィギュアにしたい」と、第2話「巨大クモ逆襲」で敵のディスパイダー リ・ボーンに捕縛された姿をモデル化。

    捕縛された仮面ライダーナイト(ネントクさん提供)

     これにはちょっとしたエピソードがあり、制作中の画像をTwitterにアップしたところ、ナイトに変身する秋山蓮を演じていた松田悟志さんに発見され「こらっ(笑)」と引用リツイートでツッコまれたのだとか。完成した際も、松田さんは「信じられない完成度。ポーズはさておき笑、素晴らしい作品ですね」と引用リツイートしています。

     ウルトラマンシリーズに登場するアイテムも、もちろん作っています。「ウルトラマンダイナ」で、主人公のアスカ・シンが変身に使うリーフラッシャーは、劇中と同じようにクリスタル部分の折り畳みが可能。

    「ウルトラマンダイナ」のリーフラッシャー(ネントクさん提供)

     これも完成した作品をTwitterに投稿したところ、アスカ・シンを演じていたつるの剛士さんが見つけ、「素晴らしい完成度です。ボクのとほぼ同じです」というお墨付きを引用リツイートでもらったのだそうです。

    つるの剛士さんお墨付きのリーフラッシャー(ネントクさん提供)

     今後作ってみたい作品について、ネントクさんはこれまで平成ウルトラマンシリーズをメインに作ってきたことと、SNSで「タロウを作って」や「セブンが見たい」という声が寄せられることもあり、昭和のウルトラマンも作ってみたいと語っていました。セブンは劇中に「ぐんぐんカット」がないため、どのようなポーズになるのか楽しみですね。

    <記事化協力>
    ネントクさん(@mugitya_no_cha)

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 弁当箱から自作 こだわりが凄すぎる「8番出口弁当」に圧倒
    ゲーム, ニュース・話題

    弁当箱から自作 こだわりが凄すぎる「8番出口弁当」に圧倒

  • 「推し愛」で生まれた海の化身 ナス製カイオーガ精霊馬が24万いいね
    ゲーム, ニュース・話題

    「推し愛」で生まれた海の化身 ナス製カイオーガ精霊馬が24万いいね

  • 「ジオン水泳部」がスイーツ&パンに変身?食欲そそる塗装作品に注目
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「ジオン水泳部」がスイーツ&パンに変身?食欲そそる塗装作品に注目

  • まさに「まな板の上のコイキング」……粘土で再現されたファンアートが切ない
    ゲーム, ニュース・話題

    まさに「まな板の上のコイキング」……粘土で再現されたファンアートが切ない

  • 「ゆゆ式」縁ちゃんが“コンセントの顔”に! 世界の規格を表現したファンアートが話題
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「ゆゆ式」縁ちゃんが“コンセントの顔”に! 世界の規格を表現したファンアートが話…

  • 「ジークアクスハロ」のファンアートが凄まじい完成度 劇中のパック状態も再現
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「ジークアクスハロ」のファンアートが凄まじい完成度 劇中のパック状態も再現

  • ウホッ!いい男「くそみそテクニック」阿部高和のフィギュアが全年齢対象で登場
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    ウホッ!いい男「くそみそテクニック」阿部高和のフィギュアが全年齢対象で登場

  • 小石で描かれる斬新ファンアート 映画「碁盤斬り」草彅剛の肖像を描く
    インターネット, びっくり・驚き

    小石で描かれる斬新ファンアート 映画「碁盤斬り」草彅剛の肖像を描く

  • サムシングフォーってそういう……偶然にもモデルガンが揃ってしまった奇跡のウェディングフォト
    インターネット, びっくり・驚き

    サムシングフォーってそういう……偶然にもモデルガンが揃ってしまった奇跡のウェディ…

  • 画像提供:架空昭和史作家 西川真周さん(@mashunishikawa)
    インターネット, おもしろ

    家のトイレが巨大ロボのコクピットに!昭和とSFが融合した「架空昭和史」の世界に夢…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • “幸福度が高い”と評判のジョナサン「早生みかんスイーツ」 今年は新作大福も仲間入り
    商品・物販, 経済

    “幸福度が高い”と評判のジョナサン「早生みかんスイーツ」 今年は新作大福も仲間入…

  • ヤマト運輸、元従業員が取引先情報を不正持ち出し 2社に流出、営業活動での使用も確認
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、元従業員が取引先情報を不正持ち出し 2社に流出、営業活動での使用も確…

  • YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能にする試験導入を発表
    インターネット, サービス・テクノロジー

    YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能に…

  • 南インド伝統のチキンカレー「ケララチキンカレー」
    商品・物販, 経済

    松のやが南インド伝統の味を再現 「ケララチキンカレー」新発売

  • 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)
    商品・物販, 経済

    ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」…

  • キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化
    商品・物販, 経済

    キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

  • トピックス

    1. 自宅に“機内”を再現!「飛行機オタク」が作り上げた最高の趣味部屋

      自宅に“機内”を再現!「飛行機オタク」が作り上げた最高の趣味部屋

      趣味を持つ人なら憧れる、好きなもので埋め尽くされた趣味専用の部屋。本、ゲーム、楽器、絵画、彫刻など自…
    2. 藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      プロの声楽家として活動する傍ら、1時間1000円から自分の時間を「レンタル」している男性。キャリア豊…
    3. ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムハンバーガーは10月14日に、カニを丸ごと挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」を販売開始しました…

    編集部おすすめ

    1. 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)

      ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」を発売

      マクセルイズミ株式会社は、ストッキングやタイツなどの繊細な衣類にも対応する毛玉取り器の新モデル、「毛玉とるとる Pro(KC-NW825)」…
    2. キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンが、バンダイの「ガシャポン」とコラボレーション。歴代のカメラとレンズをミニチュア化した「Canon ミニチュアカメラコレクション」を…
    3. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    4. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    5. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト