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【うちの本棚】181回 ウルトラマンタロウ/石川 賢

ウルトラマンタロウ「うちの本棚」、今回は石川 賢によるコミカライズ作品『ウルトラマンタロウ』を取り上げます。テレビ版とは全く異なる石川 賢オリジナルの『ウルトラマンタロウ』。その異色っぷりに仰天させられちゃう傑作です。

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ウルトラマンT/石川


  • 本作は特撮テレビドラマ『ウルトラマンタロウ』のコミカライズ作品である。

    であるが、その内容は完全なオリジナルで、テレビ作品とは別物といっていい。「ウルトラシリーズ」につきものの、本作でいえば「ZAT」という怪獣や宇宙人と闘う組織は登場しない。なのでテレビ作品のイメージで読み始めると、タロウは出てくるけどなんなのこれ…という印象になるだろう。しかし、石川 賢の作品として読めばかなり質の高いSFアクションに仕上がっているといっていい。とくに怪獣の描写や、怪獣に襲われて殺されていく人々の描写は石川作品の中でも屈指のものではないかと思える。

    連載誌が「週刊少年サンデー」であり、学年誌など複数のコミカライズ作品の中ではメインとも思える本作が、テレビ版とは別物のオリジナル色濃厚なものになった背景はよくわからないが、単にテレビ版エピソードをなぞるだけでは「サンデー」の読者には物足りないという判断だったのかもしれない。また、石川 賢自身も「小学一年生」誌上にコミカライズを連載しており、「サンデー」では自由に、ということだったのかもしれない。また、楳図かずおの『ウルトラマン』がテレビ版に準拠しながらオリジナル色の強いのだったり、桑田次郎の『怪奇大作戦』の後半がオリジナル作品だったり、円谷プロ自体にあまりこだわりがなかったというのもあるだろう。
    ちなみに本作執筆時期、石川 賢はダイナミック・プロから独立しており、『変身忍者 嵐』といったコミカライズ作品を多く手がけていた時期に当たる。漫画家としての意気込みが本作の執筆にも反映されていたのは確実で、ひとコマひとコマから伝わってくる「熱さ」はその現れだろう。

    本作単行本はちょっと複雑な刊行のされ方をしている。
    まず若木書房の「コミックメイト」から初単行本化(若木書房の「コミックメイト」では『鬼がくる』は未収録)。その後、大都社から「鬼がくる」を含めた形で再刊行(1978年)。その後も若木書房からはカバーイラストを変更して刊行されていて、大都社からも1986年にカバーイラストを新たにして再刊行されている(今回取り上げた図版)。また、1999年には双葉社からA5判で刊行された。

    初出:小学館「週刊少年サンデー」1973年17号~34号

    書 名/ウルトラマンタロウ
    著者名/石川 賢
    出版元/大都社
    判 型/B6判
    定 価/540円
    シリーズ名/STAR COMICS
    初版発行日/昭和61年6月30日
    収録作品/タロウ誕生、失われた町、鬼がくる、小さな独裁者

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
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