8月10日(土)から3日間、東京ビッグサイトで開催される夏のコミックマーケット、通称夏コミ。
3日間で60万人近くの人が参加する世界最大級の同人誌即売会です。

【関連:コミケサークル参加初心者のための“誰も教えてくれないコミケの常識”】

聖地・東京ビッグサイト


前回「サークル参加初心者のための常識」をご紹介させていただきました。今回は続編で「一般参加編」です。

偉そうに色々並べてありますが、あくまで一般論で「こうしろ!」というものではありません。順不同ですが、考え方の一例として受け取って頂ければ幸いです。

なお、本稿はコミックマーケット準備会が公式に発表した情報ではありません。あくまで一般参加経験者目線での注意事項解説です。

掲載する内容以外にも、一般参加経験者目線で「これは知っとけ」という情報があれば、コメント欄などで記事に追記を加えていただけると幸いです。
特に、記者は西館企業ブースは範疇外です。そのため、特に西館企業ブース経験者の方には追加情報の提供をお願い致します。

 
――参加前の心構え

●カタログの前半部分を熟読してほしい
コミケットにおいて、カタログは「入場券代わりに全員が購入するもの」ではありません。カタログを入手しなくても会場に入り、楽しむことができるのがコミケットの特徴です。ですが、カタログの前半部分は、会場での諸注意など、重要な事項が記載してあります。読み飛ばさず、頭に入れておきましょう。冊子型のカタログは参加サークル数が増えるに従ってページ数が増え、俗に「電話帳」「人が殺せる」「鈍器のようなもの」などと言われる規模になった為、事前に入手した人は会場に持参せず、行きたいサークルをチェックした資料だけを持っているケースが多くなっています。また、DVD-ROM版は「必要な部分だけ見られ、プリントアウトできる」という特性から、余計に会場での諸注意事項を見ない傾向があります。そして今回から本格稼働するWebカタログは、基本的にサークルの検索機能しか有していません。「コミケットはどういうイベントなのか」という、創設時からの精神を含めて、内容をよく理解して会場では行動してください。
「コミケットとは何か」ということについては、公式サイトにPDFとして掲げられていますので、ぜひご一読ください。
http://www.comiket.co.jp/info-a/WhatIs.html

●マンガレポートも忘れずに
カタログの後ろにあるマンガレポート。参加者による前回コミケットのレポートが1コマまんがで描かれています。前回どんなことがあったのか、そしてコミケット参加における豆知識を得ることができるので、ぜひ読んでみてください。実況スレなどでは言及されなかった話もありますよ。……ちなみにサークル初参加の時、マンガレポート「感謝・感激」編のネタにされたことがあります。「ひんしゅく」編のネタじゃなくて良かったなぁ、と。

●できれば身ぎれいに
汗をかく夏だけに、せめて前日にはシャワーを浴びるなど、身ぎれいにして出かけましょう。めかしこむ必要はありませんが、サークルさんはじめ他者と交流することになるので、他の人からどう見えるかということも考えるとよいかと思います。フレグランスは強すぎると不快に思う人もいます。

●自分を過信しない
徹夜(会場周辺の徹夜待機ではなく、wktkして眠れないとか、仕事が押して寝る時間がないとか、コピー本の製本で寝られないとか)もそうですが、自分の力を過信しないでください。体力だけじゃありません。財力もです。会場に設置されたATMに、同人誌やグッズが詰まった紙袋を持って並び、お金を下ろしてまた会場(ホール)に引き返していく人を見かけると、特にそう思います。体力・財力ともに余裕を持って参加し、帰宅してほしいものです。

 
――【超重要事項】これは絶対やっちゃダメ!!!

●徹夜ダメ! ゼッタイ!
徹夜は、コミケット準備会が定めた数少ない禁止行為のひとつです。周辺の治安悪化も招きますし、犯罪に巻き込まれるケースもあります。徹夜が容認されたのはコミケットの歴史の中でただ一度。2005年3月21日に開催された「30周年記念24耐(!?)コミケットスペシャル4」のみ。……これは設営から撤収まで24時間以内で行うという企画で、開会(第1部)が午前3時だったことによるものです。それでも未成年者は、始発が到着するまでは来場しないよう呼びかけられていました。このケースを除いては、公共交通機関の始発が会場最寄りの駅・停留所に到着するまで、会場周辺に来ないよう呼びかけています。ビッグサイト移転当初は、宿泊施設やコンビニを除いて深夜会場周辺にいられる場所はなかったのですが、現在は温泉施設(朝9時まで営業)など、深夜でも滞在できる場所が色々できてしまっているのが悩ましいところ。

 
――当日の心構え

●お昼過ぎの来場が吉
初心者もそうですが、特に数量限定とか、人気のあるものがお目当てでない場合は、お昼過ぎから来場することをお勧めします。大体、一般参加者の入場待機列はお昼過ぎには解消して、入場規制が解除されています。

●日傘は危険かも
入場待機列など、屋外で太陽にジリジリ灼かれる場面が多いのが夏のコミケットの特徴。必然的に日焼けすることになり「コミケ焼け」などと言われますね。1981年12月のコミケット19以来、会場(晴海の国際見本市会場、平和島の東京流通センター、千葉の幕張メッセ、有明の東京ビッグサイト)がずっと海に近い場所にある関係で「海で日焼けした」と言うのも定番です。これにより、日焼けを避けたいのとおしゃれアイテムとして日傘を持参する人がいますが、人が密集する入場待機列や会場内で日傘を開くのは危険です。特に露先(傘骨の先端部分)が他の人の目に当たり、まるで『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐のように「あぁ~、目がぁ、目がぁ~っ!」ということが起こりますので、持参しない方が無難かもしれません。帽子でのおしゃれや、アームカバーでの日焼け防止策も試してみてはいかがでしょう? コスプレの小道具(特に『中二病でも恋がしたい!』の小鳥遊六花が使う、シュバルツゼクス・プロトタイプMk-2)として使用する際は、周囲に気をつけてくださいね。

●水分補給と共に塩分も補給を
ホール内は蒸し暑く、汗をかいて喉が渇くので、水分補給には気を使ってください。また、ここで忘れてはならないのは、水分だけをとらないこと。汗にはミネラル分が含まれており、それも体から失われています。それを補わないと急性の低ナトリウム血症になり、最悪の事態では意識を失ったり、脳に障害が残ったりすることもあります。水分は補給しているのに指先がしびれ、感覚が鈍くなっていたら塩分(ナトリウム)が不足しているサイン。こうなったら「OS-1」などの経口補水液を摂取するのが有効です。そうなる前に、水分だけでなく塩飴や「熱中症予防」をうたった塩分配合のタブレット菓子を併用してください。

●携帯はあてにならない
10万人以上が限られた範囲に集中するという、他ではない状況になるコミケット。各携帯キャリアは移動基地局を設置してくれたりもするのですが、参加者による圧倒的な通信トラフィックの量に追いつかず、通話はおろかメールすらも満足に届きません。twitterや実況スレもありますし、今回からWebカタログが本格稼働し、スマホで閲覧しながら会場を回ろうとする参加者も多いと思われます。携帯で連絡を取るというのは「できたらラッキー」という位でいた方がいいでしょう。友達と別れ、後で合流する予定ならば、事前に時間と待ち合わせ場所を決めて、それに従って行動した方がいいでしょう。よく使われる待ち合わせ場所としては、エントランスホール(緑)・西展示棟アトリウム西1ホール側トイレ付近(青)・東展示棟ガレリア東1ホール側エスカレーター付近(赤)に、通称「青玉」「赤玉」などで知られる球形のオブジェ(正式名称は「大きなカラーボール」)があります。個人的に良く使うのは、終了後に待ち合わせるので、会場外側の会議棟下にあるファミリーマートの看板。もしくは混雑を避けて、会場を離れた別の場所(仲間内での打ち上げ会場そば)を待ち合わせ場所に設定しています。また、待ち合わせ相手が会場内の地理に精通していない場合もありますので、口頭で場所を伝えるだけでなく、念の為待ち合わせ場所に一緒に行き「この場所で◯時に待ち合わせ」と、相互に確認しておくといいでしょう。

ちなみに「赤玉」「青玉」の言葉が、会場内にあるオブジェを示すように定着したのは、コミケットが東京ビッグサイトに移転して数回開催された後(少なくとも1997年以降)のことでした。前回のサークル参加初心者向けとした記事で、以前は「赤玉」が「盗撮用に赤外フィルターをつけたレンズ」を示すスタッフ間の符牒だった、とした件ですが、これは赤い球形のオブジェが会場に存在しなかった晴海まで(~1995年)のことで、東京ビッグサイト移転以降、赤外フィルムを使用した盗撮自体も減った為、自然と使われなくなっています。「以前」というのがどれほど昔かを示さなかったので、不親切な表現だったかもしれません。

●コスプレのままで来場・帰宅しない
コスプレは会場内では「コミケットの華」ともいえる存在ですが、会場を離れると「異様な風体」になります。コスプレをする際は必ず会場内で登録の上、更衣室で着替えてください。帰る時も同様です。……以前、会場から女装コスプレ(ちなみに『サイレントメビウス』の香津美リキュール)のまま飛行機に乗ってきた人を見た時には、心臓が止まるかと思いました。

●暴走注意
原則として年に2回開催されるコミケットは、ある種「おたくの祭典」と目され、ハレの場となっています。それによって気分がハイになり、様々な方面で暴走しがち。これは「ちょっと位ならいいだろう」とハメを外すだけでなく、善意の暴走も含まれます。悪気がなくても、暴走した善意はかえって迷惑になる場合も。心はいくら大きくてもいいんですが、気が大きくなりすぎては困ります。無用なトラブルを避ける為にも、「控え目な位がちょうどいい」と心得て行動するといいと思いますよ。

●目的以外の場所も回ってみよう
現在は同人誌には目もくれず、企業ブースだけ回って帰る……という一般参加者も。企業ブース発足時にはなかなか参加企業が集まらず、スタッフがツテを頼って業界各社に頼んで回ったというのが嘘のような盛況ぶりです。午前中で会場を後にし、あとは秋葉原などを散策というパターンも定着しているようですが、ぜひ目的とは違うジャンルも回ってみてください。事前チェックしなかった場所を歩いてみることで、知らなかった作家さんや本を見つけたり、新しい出会いもありますよ。

 
――サークルブースでのマナー

●お金は千円札と小銭を多く
開会したばかりの時に、会計で一万円札など高額紙幣を出しても、サークル側で釣り札が足りず対応できない場合があります。また、会場ではしばしば高額紙幣を使った「釣り銭詐欺」の被害が報告されており、サークル側で慎重に対処しているケースもあります。無用の負担を与えない為にも、あらかじめ千円札や小銭を多く用意しておきましょう。

●同人誌を手に取る際は丁寧に
同人誌を手に取る際は、サークルの人に「見せてください」とひと声かけましょう。返す時も「(見せてくれて)ありがとうございます」と一言添えるとありがたく感じます。……というのも、中には無言で同人誌を手に取って、中身をチェックしてるフリをしながら本を持ったまま、いつの間にか消えてるケース(要するに窃盗ですね)もあったりするからなのです。一生懸命作ったものなので、取り扱いも丁寧にしてくださいね。また、手に取られている間、サークルにとっては、自分達が作った本を審査されているようで、内心緊張していたりします。何か言葉をかけてくれるとありがたいですし、作品内容について質問などがあれば嬉しいので、積極的に声をかけてみてください。手に取ったら、会話したら絶対その本を買わなきゃいけない、という訳ではないので、ぜひ。

●disらない
自分が好きではない他の作品や、他の参加者をその場ではdisらないようにしましょう。どこで誰の耳に入るか判りませんし、その作品を送り出した人や、その作品が好きな人にとってはつらいことです。また、コスプレの衣装も、市販のものではなく自作して、技術がつたなくてイマイチの出来だったりすることもあります。少なくとも「作品に対する愛情の発露」であることは確かなので、その場では控えましょう。……ただ、中には「流行ってるジャンル(作品)だから」と、安易にやってる人もいたりするのが難しいところですね。

 
――今回の開催日程でのその他の注意すべき点

●花火に注意
コミケット初日(8月10日)には「第25回東京湾大華火祭」が、お台場の対岸、晴海を中心にした東京ベイエリアで開催されます。この花火大会、1988年に開催された第1回もコミケット初日と重なった(しかもこの当時のコミケット会場は晴海で、相互の会場が隣接)という、ある意味コミケットとは縁の深い(業の深い?)イベントです。この時は晴海会場に隣接した準備会スタッフの宿舎で、スタッフ達と花火を眺めた思い出もありますが、現在気をつけなければいけないのは、レインボーブリッジをはじめとして交通規制が実施されることと、ゆりかもめなどの交通機関が混雑すること。ゆりかもめは昼間でも、フジテレビのイベント「お台場合衆国」に来場する人とコミケット参加者が一緒になって混雑することがあるので、花火に限ったことではありませんが……。今年の交通規制についてはまだ発表がありませんが、例年18時を基準に晴海方面に向かう道路やレインボーブリッジ(上段の首都高速は18時30分、下段の一般道は16時から規制)の通行ができなくなります。これについては東京都中央区のページ(http://www.city.chuo.lg.jp/ivent/toukyouwanndaihanabisaimeinn/)を参考にしてください。

また、花火大会ということもあって、ビッグサイト周辺にもカップルが多く見受けられるようになります。内心で花火と共に「リア充爆発しろ!」と思うことは自由ですが、くれぐれも口に出さないようにしてくださいね。……かつてコミケット後に花火を見ようと、晴海主会場の入場整理券(1枚2人分)を取ったら友達が集まり過ぎ、結局コミケットの打ち上げを優先して通りがかりのカップルに整理券を譲ったことがありましたっけ……。

 
――最後に……皆に考えて欲しいこと

●「常識」を疑え
1975年に第1回(32サークル・推定参加者700人)が開催されて、既に40年近くの歴史を持つコミケット。その7割ほどの年月参加しているかと思うと、我ながら驚きです。昔は「同人活動は学生時代までの楽しみ」という感じだったのでですが、今や規模も遥かに大きくなって、サークル参加者も社会人が主流になり、3世代で参加する人もいるようになりました。これによって、大きな共同体のようだったコミケットも世代間や参加者間のギャップが広がり、同床異夢のような状態になっています。ですから、自分達が「常識」と思っていることも、実は全参加者に共通している「常識」ではないかもしれません(だからこそ、こういう記事が成立する訳です)。常識より、むしろよりどころとなるのは「良識」です。できれば「狭い常識」よりも良識に従って行動した方が、他の人と変な軋轢を生まないかもしれませんよ。

●「なぜ」を考えよう
コミケットに限らず、様々なルールがありますが、ルールができるには、必ず「きっかけ」があり、そこに至るまでの「いきさつ」があります。単純にルールに従うのではなく「なぜそうなったのか」を考えてみてください。根本を理解し、対処すればよりよい対応になると思います。

 
コミケットは基本的に、分別ある大人が自主・自律の下に参加するイベントです。何でも自己解決しろという訳ではありませんが、なるべく自分の頭で考え、判断し、判らないことはスタッフなど判る人に訊いて、素敵な時間を過ごしてくれるといいな、と思っています。皆さんに、素敵な出会いのありますことを。

(文:咲村珠樹)