「うちの本棚」、前回に続いて石川賢のSF時代劇を取り上げます。時間を漂う「抜け人」と伊賀忍者の過酷な運命から逃れようとする「抜け忍」を描いた『時元忍風帳』です。

石川 賢は時代物とSFをミックスさせた作品がわりと多いが、本書はその中でも忍者ものとSFをミックスさせた作品を集めている。


表題の『時元忍風帳』は伊賀忍者の夜叉丸が抜け忍となって追手に追われているところで出会った少年が、実は未来のコンピューターに管理された社会から逃げてきた「抜け人」だったというもの。
サイボーグ忍者が登場するなどアクションが派手な作品だが、未来社会がどのようなものなのかは詳しく描かれていない。

『時雷也~』『須平巣~』『自来也~』はギャグ満載のSF風時代劇。
特に『自来也~』は掲載誌が「プレイボーイ」ということもあってか、エロティックなギャグ作品である。また『須平巣~』は『スターウォーズ』を意識しているとも思われる。
『暗泥目玉番外地』は本書に収録された作品の中では異色のもので、宇宙時代の番長もの。このあたりのアイデアは『ヤクザウォーズ』につながっているのだろう。

個人的には『魔獣戦線』や本書の表題作『時元忍風帳』などの雰囲気が好きなのだが、石川本人としてはギャグをふんだんに入れた作品の方がノッて描いていると感じられる。
本書収録の作品でも『自来也忍法帖』のような作品がもっとも生き生きと描いているように感じてしまう。もちろんこれも石川作品の魅力であることは確かではある。

書 名/時元忍風帳
著者名/石川 賢
収録作品/時元忍風帳(「マンガ少年」昭和55年)、時雷也忍風帳(「マンガ少年」昭和55年)、須平巣忍風帳(「マンガ少年」昭和55年)、暗泥目玉番外地(「アクション・ヒーロー」昭和54年)、自来也忍法帖(「プレイボーイ」昭和51年)
発行所/朝日ソノラマ
初版発行日/昭和59年4月28日
シリーズ名/サンコミックス

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。