「特撮映像館」、今回は田中麗奈主演のファンタジックホラー作品『玩具修理者』です。人とモノの境界について語る主人公の真の目的とは…?
小林泰三の短編小説で、第2回日本ホラー小説大賞受賞作品の映像化。
子供たちだけが知る「玩具修理者」に死んでしまった弟の修理(生き返らせる)を依頼した少女の奇妙な話。
監督のはくぶんはCG界の第一人者と紹介されているところもあり、本作が劇場初作品となり、本編でもCG合成が多用されている。
また合成だけではなく照明も独特の雰囲気を醸しだしていて幻想的な本編の雰囲気を特徴づけている。
玩具修理者は子供たちのあいだで「ようぐそうとほうとふ」は呼ばれており、これは「クトゥルー神話」に由来する。
壊れた玩具をなんでも直してくれるという玩具修理者に、子供たちは死んだ猫を生き返らせて欲しいと依頼したりもするが、修理者は複数の修理を一度に行うのでときどき部品が混ざったりもする。
ところで本作では「人とモノの境界線」が繰り返し語られる。
人とモノを隔てるものは何か、人とモノはなにが違うのか…。
弟を生き返らせてもらった少女はやがて大事なことに気がつき、それを確かめようと弟に会うのだが…。
全体にゆったりとした雰囲気が漂い、美和明宏による玩具修理者のモノローグがそれを増幅している印象もある。
主な舞台となるアンティークトイの店も外界と時間の流れが違っているような印象だし、ストーリーの大半は主人公の回想なのでリアルタイムの時間の流れを感じない作品となっている。
画面は美しく幻想的で、作り手によってはグロいスプラッターにもできるところをファンタジックに仕上げている。
もともとがホラー小説大賞作品ということで、ラストにもショッキングな映像が登場するのだが、全体としては幻想的な作品と言っていいだろう。
強いて言えば全般的に平均した調子で演出されている印象で、インパクトのあるシーンが乏しかったという感じはある。
もっともそこがはくぶん監督の個性ではなかったのかという気がしないでもないのだけれど。
監督/はくぶん
キャスト/田中麗奈、忍成修吾、大平奈津美、姿月あさと、美和明宏、ほか。
2001年/47分/日本
(文:猫目ユウ)