おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】169回 伝説巨神イデオン/古城武司、池原しげと(原作・矢立 肇、富野由悠季)

「うちの本棚」、今回は富野由悠季監督の『伝説巨神イデオン』、ふたつのコミカライズを収録した大都社版『伝説巨神イデオン』です。

テレビ版と劇場版、ふたつのコミカライズが1冊で読めるのはなかなか欲張りな単行本といえるかもしれません。

【関連:168回 レインボー戦隊ロビン/東映コミックス】

イデオン/秋田書店 イデオン/大都社

  • 本書はサンライズ制作、富野由悠季監督のテレビアニメ『伝説巨神イデオン』およびその劇場版映画のコミカライズ作品である。テレビ版は放映に合わせて、秋田書店「冒険王」に古城武司によってコミカライズが連載され、劇場版は公開に合わせて講談社「コミックボンボン」に池原しげとによって連載された。
    単行本は古城版が82年に秋田書店「サンデーコミックス」で刊行されたあと、本書にも収録。池原版は本書が初収録である。

    池原しげとの劇場版はアニメ版のシナリオをほぼトレースする印象で構成されている(アニメ版とそのシーンに登場するキャラクターが一部異なっていたりする場面がある)。劇場版アニメをコミックでもう一度楽しむという意味での役割は十分に果たしているわけだが、アニメ版の完成度が高かったために、コミック版の物足りなさを感じてしまう結果となってしまった感は否めない。もともとストーリーが複雑な作品を低年齢向けコミック誌に掲載するのだから、ある程度の要約や省略は仕方ないだろうし、その上である程度の年齢の読者にも納得のできる内容に仕上げているのは、池原しげとの力量と言っていいのだと思う。

    一方、古城武司によるテレビ版コミカライズだが、これもこれで古城の苦労がうかがえる作品である。
    というのも「冒険王」は月刊誌であり、毎週放送のあるテレビ版のストーリーを月一回の連載でフォローしていくのだから、およそ4回分のシナリオを1回の連載で消化することになる。かつて古城が手がけていた『超人バロム1』など、1話完結の作品であれば、その月に放送される中から1話をチョイスすればよかったが、本作ではそれはできない。
    連載当初はそれでもベースとなる1話を中心にした印象だったのだが、後半になるとかなりのスピードでストーリーを消化している感がある。

    そして怒濤の最終回を迎えるわけだが、連載初出ではシェリルの独白で終了していて、打ち切りとなったテレビ版ともども、ぶっち切りという印象だったのだが、単行本化の際、最終3ページを描き下ろしていた。

    秋田書店「サンデーコミックス」のカバー折り返しでは、「かぎられたページで、どこまでえがきあげることができたか…とにかく一生懸命とりくみました」と作者の言葉がある。まさのその通りだったのだろうと思う。またそこまで苦労した作品であるにもかかわらず、原稿が紛失しており、本書収録には秋田書店「サンデーコミックス」を原稿としてつかっている。

    ちなみに『伝説巨神イデオン』は個人的にもっとも好きなロボットアニメで、思い入れも強い。今回取り上げたコミカライズ作品もアニメ版のイメージを損なうことのないもので、ある意味アニメ版を補完する作品といえるだろう。

    初出:劇場版・講談社「コミックボンボン」1982年6月号~9月号
       テレビ版・秋田書店「冒険王」1980年6月号~1981年3月号
    書 名/伝説巨神イデオン
    著者名/古城武司、池原しげと
    出版元/大都社
    判 型/B6判
    定 価/880円
    シリーズ名/STAR COMICS
    初版発行日/1999年6月8日
    収録作品/劇場版伝説巨神イデオン(接触編・発動編/池原しげと)、テレビ版伝説巨神イデオン(古城武司)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】185回 超人バロム・1/古城武司(原作/さいとう・たかを)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】178回 魔女っ子メグちゃん/池原しげと

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】171回 機動戦士ガンダム/岡崎 優(原作・矢立 肇、富野由悠季)…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第七十六回 超人戦隊バラタック/池原しげと

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第七十一回 ゴジラVSメカゴジラ 決戦史

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第六十九回 ゴジラVSキングギドラ決戦史/石川球太、堀江卓、古城武…

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんの公式X

      アインシュタイン稲田の“潔白”が証明された日 暴露文化とSNS拡散が残したもの

      お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんのInstagramが不正にログインされ、卑猥なやり取り…
    2. 【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験

      【体験レポ】「落とし物:黒い封筒」を開封してみた 自宅で本当に心霊現象が起きる?一夜のゾク体験

      ホラーイベント「笑える事故物件 笑えない事故物件」公式グッズの体験型キット「落とし物:黒い封筒」を体…
    3. 丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      焼き肉チェーンの牛角は9月4日より、サンマを丸ごと一尾のせた「牛角流秋刀魚ラーメン」を販売しています…

    編集部おすすめ

    1. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    2. 「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる……」Xで飼い主さんにこうつぶやかれたのは、4羽の白文鳥さんたち。添えられた写真には、4羽が棚の上に連なって集まり、まるで連…
    3. 法事でオリジナルTシャツ!?音楽フェスのような斬新な引き出物が話題

      法事で配られた家紋&没年入りTシャツが話題 “フェス感”漂うセンスに爆笑

      法事の引き出物(お返し)といえばお菓子やカタログギフトが王道ではないでしょうか。しかしときには予想だにしない品をもらうこともあるようで……。…
    4. 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共同で、避難生活に特化した支援ネットワーク…
    5. 「週刊文春」2025年9月4日号(8月28日発売)

      週刊文春、最新号表紙は「白紙」 48年続いた和田誠さんの表紙絵に幕

      総合週刊誌「週刊文春」は、2025年8月28日発売の9月4日号で48年間にわたり表紙を飾り続けたイラストレーター・和田誠さんの絵を終了し、大…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト