最近では、母子手帳とともに配られている「マタニティマーク」。特に妊娠初期の場合には、お腹があまり目立たないことなどから、周囲にそれを示し、理解を求めやすくするための「妊娠中の目印」として使われています。
そんな「マタニティマーク」について、最近ネットでは反感意見が上げられることがあります。
多くは「電車やバスで妊婦に席を譲りたくない」という意見。
■ネットでは「マタニティマーク」にこんな意見も
つい昨日(9月24日)に匿名掲示板2ch(sc)に『マタニティマーク「私は妊婦なのよ!電車で座りたいの!譲りなさいよ!ほら!」』という掲示板がたてられました。
寄せられた意見を見ると、
・知り合いの妊婦がマタニティマークつけて電車乗ってたらサラリーマンに「俺らはお前より疲れてんだからふざけんな、立ってろ本当図々しい」って言われたらしいwww
・大変なのは妊婦だけじゃねぇ、みんな仕事や勉強で疲れてるんだよ
・そんなマーク着けても「座席どうぞ!」なんてならないんだから着けるだけ無駄むしろ謎の反感買うからマイナス
・マタニティマークって本来は「事故や災害などの状況で優先的に救助されるべき印」という意味のものだろ?
なんで電車やバスで譲らなきゃならねーんだよ。テーマパークのファストパス感覚でつけてんじゃねーよゴミ
・お前らもそうやってかーちゃんや周りに大事にされて生まれてきたんだからな
・席譲れなんて図々しい妊婦見たことないんだがお前ら脳内?
・実際に横柄な態度で譲れと言われて叩く奴はいいけどなんの迷惑も受けてないのに叩いてる奴って何なの?
・譲ってほしかったらマーク付けてボーッと突っ立ってないで言えよ主張もせずに周りが察して譲ってくれるでしょうって考えがイエローキャブ
(出典:2ch(sc)『マタニティマーク「私は妊婦なのよ!電車で座りたいの!譲りなさいよ!ほら!」』)
批判的意見もあれば、「マタニティマーク」に理解を示す意見もありますが、やはりここでも気になるのが妊婦に対する冷たい意見。
■妊娠中、公共交通機関で席を譲ってもらったことがない「72.0%」
実際のところ妊婦さんは、いったいどれぐらい席を譲って貰えるのか?医療系サービスを行う「プラスアール」が2014年3月に行った調査によると、協力した妊婦さんのうち72%もの人が「公共交通機関で席をゆずってもらったことがない」と回答したそうです。
また、マタニティマークを外すときがあると答えた人は33.1%。会社に入るときに「まだ報告していない」という理由で外す人が多い一方、自由回答の約22%には「ニュースやネットでマタニティマークをつけていてお腹を蹴られる、非難されると聞いた、実際に嫌がらせを受けたから」という不安を理由にしたものがあったそうです。
(出典:プラスアール調べ『マタニティマークに関する調査2014』)
■「マタニティマーク」の意味って?妊娠ってどんだけ辛いの?
「マタニティマーク」は、妊娠中、特に妊娠初期でお腹が目立たない妊婦さんに理解を求めやすくするため考案されたものです。
【出典:厚生労働省「マタニティマークについて」】
妊娠初期は、赤ちゃんの成長はもちろん、お母さんの健康を維持するためにもとても大切な時期です。しかし、外見からは見分けがつかないため、「電車で席に座れない」、「たばこの煙が気になる」など妊婦さんにはさまざまな苦労があります。
国民運動計画「健やか親子21」推進検討会において、妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保を目指し、「マタニティマーク」を発表しました。マークは、妊婦さんが交通機関等を利用する際に身につけ、周囲に妊婦であることを示しやすくするものです。また、交通機関、職場、飲食店等が、呼びかけ文を添えてポスターなどとして掲示し、妊産婦さんにやさしい環境づくりを推進するものです。
<引用ここまで>
このほかに、2ch(sc)の意見でもありますが、災害時に救助隊が優先救助しやすくするための目印という意味もその一つにあります。
(追記:厚生労働省のHPでは明確にこの点については紹介していません。しかし、妊娠中のマタニティ教室や医療機関ではそうした意味もあると案内しているところもあるため、マタニティマークが持つ「意味の一つ」として解釈し触れています。)
妊娠中女性の体の中では様々な変化がおこります。初期について、有名なのは吐き気を伴う「つわり」。つわり以外にも、眠気、倦怠感、下腹部の違和感など様々な症状に襲われることもあります。
また、妊娠中には体調が良い時に家を出ても、その後急に体調を崩してしまうこともしばしば。とにかく数時間単位で体調が変化しているのです。他にも、ちょっとした衝撃で、赤ちゃんに影響を与えてしまう事も。
本来は自宅でゆっくりしていたいところですが、人間生きていれば何かしらの用事はあるわけで……必要に迫られ、バスや電車を利用することもあります。
そんな時のために、この「マタニティマーク」はあるのです。ただし、強制的に席を譲ってもらうためのツールではありません。
「席を譲ってもいいよ」という人に名乗り出て貰いやすくするためのもの。人によっては「自分から頼めばいいじゃない」という人もいるようですが、なかなかどうしてそういうお願いはいざその場になると、遠慮もありしにくいものです。
この「マタニティマーク」は、決して「妊婦でござーい。席を譲りたまえ」と主張するものではなく、互いに互いの理解を示しやすくする。ただそれだけのツールなのです。
(文:栗田まり子)