PlayStationVRが10月に発売されることが決定し、先日6月18日から予約受付が始まったことで大きな話題になっています。
2016年はVR(仮想現実)元年とも呼ばれ、これから2020年に向けてVRとAR(拡張現実)を合わせたビジネス規模は世界中で約1500億ドルに拡大すると言われています。

VRゴーグルをつけるだけで仮想現実を楽しめてしまうという近未来的な機器は体験した人に感動を与え様々な可能性を生み出していますが、その一方で懸念されることも多く指摘されています。

【関連:『バイオハザード7』2017年1月26日発売決定 VR完全対応】

■中でも怖いのが「13歳未満が使うと目に影響を与える」というもの

VRでゲームを楽しみたいというのは大人だけではありません。しかし、PlayStationVRを取り扱うソニーのゲーム部門は、12歳未満の子供には使わせないようにと注意を呼びかけており、さらにOculus Riftを販売しているOculus社は13歳未満は使わないように、そしてダンボール製のVRゴーグルであるGoogle Cardboardを扱うGoogle社では年齢制限こそ設けてはいませんが、Googleストアの画面で「目の届かないところで、お子様がビューアを使用することがないようにしてください。」と注意喚起を行っています。

これら喚起は各社が自主的に行っているもの。さらに今のところ業界団体などで厳格な規制も行われていません。

ただ喚起するには理由があり、「ゲームは目に悪い」「ゲーム脳になるから」「勉強を怠るから」というありきたりな理由ではなく、医学的な見地から注意が指摘されているものです。

■「二眼VRデバイス」が子供の目に危険な理由

成長過程にある13歳未満の子供がVRを利用すると、目の成長に非常に悪影響があるそうです。これは立体視を使う「二眼VRデバイス」全てに共通すること。

本来近くを見たときは水晶体を調節してより膨らませ、それに合わせてぐっと寄り目にさせます。しかし立体映像を見る場合は対象が遠くにあるように見えますが実際にはスクリーンは近くにあり、それまで距離は対象の距離が映像の中で変化しても実際には変わらず一定であるために矛盾が生じます。
このように眼球に日常視とは違う動きをさせてしまうことは子供の内斜視を誘発する原因になり、ひどい場合は手術が必要になってしまうそうです。

実際にVRゴーグルの使用ではなく、赤と緑のセロファンメガネを使用し3Dの映画を視聴した4歳児が急性内斜視になり、手術をするまでの3ヶ月間その状態が戻らなかったという事例がありました。(参考動画24分33秒付近)
この事例を紹介した大阪大学大学院 不二門尚氏の研究によると、特に6歳までは要注意とのこと。3D映像やゲームの3D機能は「小さなお子様の目の成長に影響を与える可能性があるという見解を持っています」と指摘しています。

▼参考動画「03 HMDガイドライン 大阪大学大学院 不二門 尚 氏」
https://youtu.be/8wtgCiJ2nKk

「03 HMDガイドライン 大阪大学大学院 不二門 尚 氏」より。

これは運が悪かったという問題ではなく、また「ちょっと気をつければ大丈夫」と安易に考えるものでもありません。
斜視については見た目の問題だけではなく弱視や両眼視機能が保たれないという弊害があり、また常に斜視の状態になっているなど気づきやすい場合ではなく、VRゴーグルを使用したことが原因でちょっとしたときに斜視になってしまうようになったという軽度なものについては親御さんが気づかないこともあり、手術が遅れてしまうとその後の人生に大きな影響を与えてしまうことにもなりかねません。

既に自宅にVRゴーグルをお持ちの方やPlayStationVRを予約した方は結構いらっしゃると思いますが、お子さんがプレイしたいと言っても「1度くらいなら……」をやってしまうと隠れてプレイする原因にもなるために、こればかりは心を鬼にして「絶対に13歳になってから!」と約束することがお子さんのためにもとっても大事かもしれませんね。

※本文画像はYouTube「03 HMDガイドライン 大阪大学大学院 不二門 尚 氏」のスクリーンショット。

(文:大路実歩子)