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ドーピング禁止物質騒動をきっかけにJADAや龍角散にいろいろ聞いてみた

update:

 『龍角散のど飴』にドーピング検査でアウトとなってしまう物質「ヒゲナミン」が含まれているというデマが流れ、再度アンチ・ドーピング規程禁止表国際基準を確認したスポーツ関係の方が多いことと思います。

 ヒゲナミン含有については龍角散が公式サイトを通じ1月11日に否定を発表。「当社の『龍角散ののどすっきり飴』には「ヒゲナミン」は一切含まれておりません。」と断言したことで一段落となっています。

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    ■「ヒゲナミン」はデマだけど…注意したい点も

     この発表をうけ「『龍角散のど飴』ドーピング禁止物質含有はデマ!」とあちこちで報じられていますが、1つ注意しなければならないことがあります。

     龍角散の発表どおり食品のど飴である『龍角散ののどすっきり飴』にはヒゲナミン含むドーピング禁止物質は含まれていませんが、ドラッグストアなどで売られる第2類医薬品のど飴に以前から禁止物質に指定される「エフェドリン」を含むものがあります。「エフェドリン」はマオウという生薬の成分として含まれ、気管支筋を弛緩させる作用や、交感神経興奮作用、解熱効果、抗炎症作用があります。

    マオウ

     龍角散に問い合わせてみたところマオウを含む該当商品は『龍角散ドロップ・ノドカクサンEH』とのこと。龍角散が製造しオールジャパンドラッグが販売するこの商品は第2類医薬品扱いとなっています。パッケージはオレンジ色の箱形。箱中央に大きく「龍角散ドロップ」と書かれているため見落としがちですが、箱表面の上下に「マオウエキス配合」「マオウ」と明記されているので、見分ける時のポイントにしてください。

     ちなみに株式会社浅田飴の『固形浅田飴』(第2類医薬品)も同じマオウエキスを含むことから今騒動をうけ、改めて「禁止表国際基準の禁止物質に該当いたしますので、競技会ご参加の際はご注意くださいませ」とTwitter(@seki_koe_nodo)を通じ注意を呼びかけています。

    ■ここまで敏感になる「ドーピング検査」とは

     特に大きな競技会では公正を保つためにドーピング検査が実施されており、過去にはバレーの全日本代表として選出された今村優香選手が肌荒れ用の塗り薬が原因でドーピング検査陽性となってしまい重い処分が課せられたことがありました。

     ドーピング検査については「悪気がなかったから」でお咎めなしにされることはありません。治療上必要な薬がドーピング検査にひっかかってしまうようなものである場合はTUE(治療使用特例)を申請する必要があります。

    ■注目の物質「ヒゲナミン」

     さて、今回注目された禁止物質であるヒゲナミンですが、漢方薬だけではなく栄養補助食品にも含まれていることは、ここ数日の報道でご存知の方も多いと思います。生薬である呉茱萸(ゴシュユ)、附子(ブシ)、細心(サイシン)、丁子(チョウジ)、南天(ナンテン)などに含まれていますが、中でも丁子の文字を見てゾッとした方は多いのではないでしょうか。

     丁子とはクローブの和名であり、豚の角煮を始めとした肉料理やピクルス、チャイティー、カレーなど料理にパンチを効かせる存在としてもメジャーなスパイスです。また、独特な香りのあるガラムという煙草にも丁子が含まれています。

     料理や煙草に丁子が含まれているからと言ってドーピング検査が陽性になるとは限りませんが、やはり不安だという声が多く挙がっています。

     そこで編集部はJADA(日本アンチ・ドーピング機構)に問い合わせをしてみたところ「ドーピング禁止物質は、「世界アンチ・ドーピング規程禁止表国際基準」禁止物質は物質名で決められております」と定められる通りとの見解。今回話題となる「ヒゲナミン」はもちろん掲載されています。

    ▼世界アンチ・ドーピング規程禁止表国際基準
    http://www.playtruejapan.org/wp/wp-content/uploads/2016/12/3d0fcdb70bcf45de26a66192cd2a7dd7-2.pdf

     また、「栄養補助食品(サプリメント)は食品であるため含有成分が全て表示されているとは限りません。成分として禁止物質が表示されていないサプリメント製品や食品を摂取する場合は、アスリート自身の責任において今一度ご注意ください。」とのことでした。サプリメントについては成分が全て記載されない場合もあるそうなので、こちらは特に注意が必要です。

    ■ヒゲナミンは元々禁止物質

     ちなみにヒゲナミンについては多くの報道で「2017年1月から禁止された」とされていますが、JADAによると「新たに禁止物質として追加されたものではなく、従来から禁止されていましたが、2017年から例(非選択的ベータ2作用薬)として明記されたもの」だそうです。ということは、アスリートに関わる人たちは丁子を使用する料理については既に敏感になっていたようです。

     スポーツに関わり大きな競技会へ出場する可能性がある人は、自分が口にしたり塗ったりするものについては一般より知識と注意が必要なようですね。

    (大路実歩子)

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