おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

子の急な発熱で休む後輩 見守る先輩が「子はいなくても子の気持ちは分かるから」

 働く親にとって、子どもの不意の病気は困り事の一つ。夫婦であればどっちが休んで看病するのか、病児保育は使えないのか、そして独りで育てている人はどこに、誰に頼ればいいのか……。特に育休明けなどで子どもが小さいうちはよく熱を出したりして、その都度保育園から呼び出されたりするものです。そんな子育て中の後輩の気持ちを汲んだ、ある職場の先輩の言葉がネット上で話題になりました。

  •  とある職場で働く、ひとりの女性(以下Aさん)。後輩には、育休から復職したばかりの後輩がいます。Aさんは夫婦二人で暮らしていますが、その後輩が早朝から起きて朝食作りや弁当作り、夕食の下ごしらえや洗濯などの家事と育児をこなし、子どもたちを別々の保育園に預けてから出勤している頑張り屋さんであることを知っています。都市部では、定員の都合で上の子と同じ保育園に預けられない場合があり、後輩さんもやむなく上の子と下の子を別々の保育園に預けて職場復帰を果たしたのだとか。

     そんな後輩の頑張りを尊敬のまなざしでAさんは見守っていました。しかしある日、後輩の子どもが朝から発熱。何と40度の熱を出し、職場に休みを申請する電話をかけてきました。それを受けたAさんの上司、Aさんに「どう思う?」と聞いてきました。どう思うって……。

     Aさんは自身の子がいないけど、自分が子どもの頃に感じたこと、思ったことを思い出しました。そして上司に伝えた言葉は、「私には子どもがいないので母親としての気持ちは分からないけど、子どもだった頃はあるから子どもの気持ちは分かる。熱で辛い中、目がさめてお母さんそばにいてくれたら嬉しいに決まっている」と。上司はその言葉を聞いて黙り込んでしまいました。

     上司は60代の男性で、お孫さんもいるそう。しかし、昭和の上司世代の働き方の考えと、現在の働きながら育児をこなすという環境は考え方の世代差が大きく存在しそう。普段は年齢差に関係なく対等に接してくれるという上司ですが、この時ばかりは復帰1週間で子が熱を出した後輩の育休復帰が早すぎたのではないか、人員の見直しを再考すべきなのか、自分がどう受け答えればいいのかという戸惑いもあって、Aさんに「どう思う?」という言葉が出てしまったようです。

     Aさんの当然といえば当然な言葉に思わず黙り込んだ上司。後輩がここまで頑張ってまでなお、仕事を続けていることに対してどう感じているのかは上司本人のみぞ知るという感じですが、子どもを持たない夫婦でも、自分が親ではなく子どもだった時の目線を思い出して答えるということは、子ども時代を過ごして大人になってきた全員ができることかもしれません。

     筆者も、子どもの時に熱を出したことが何度もあります。転勤族だったので、遠くにいる親にも、近所の人にも誰にも頼れない母。そんな状況下で、ある時どうしても下の子を行事に連れていかなければならない出来事がありました。タイミング悪く熱を出した私は、一人家でお留守番。当時、私はとても心細い思いをしたことを、この文章を見て思い出したのでした。また、自分が親になってから育休復帰後に子どもが肺炎を起こして入院した時の記憶も。「育休からの復帰が早すぎたのではないだろうか」と、病院のベッドで眠るわが子を見ながら一人自分を責めていたのです。きっと、保育園に行きはじめて熱をしょっちゅう出すようになった子を持つ親は、自分のことを責めていることが多いと思います。1週間、点滴を付けた生後7か月のわが子に寄り添いながらずっと考え込んでいた私のように。

     職場の人たちは、「まだ小さいうちだし、保育園に入れば色々病気拾ってるからしょうがないよ」と、Aさんのように私を気遣ってくれていました。子を持たない上司も。それが一番の救いになった事は、15年近くたった今でもはっきりと覚えています。

     まだまだ子を持つ親、特に母親に対して、職場の風当たりが厳しいところはたくさん存在します。仕事をするからには責任も伴いますが、キャリアアップしながらの子育てが、身内以外にも上手に頼りながらできるようになれると、社会的な人材も確保しながら次世代を育てることにつながるのではないでしょうか。

    <記事化協力>
    匿名希望さん

    (梓川みいな)

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 無償のお手伝い券かと思いきや「1回100円」 小5息子の優しさと商魂にほっこり
    インターネット, おもしろ

    無償のお手伝い券かと思いきや「1回100円」 小5息子の優しさと商魂にほっこり

  • 子の夏休み=親は常に戦闘モード “戦士のような母”の後ろ姿が話題に
    インターネット, おもしろ

    子の夏休み=親は常に戦闘モード “戦士のような母”の後ろ姿が話題に

  • 5年使った子ども用のスプーンが突然の引退 思わぬ別れに「ありがとうね」
    インターネット, 感動・ほのぼの

    5年使った子ども用のスプーンが突然の引退 思わぬ別れに「ありがとうね」

  • 習字のシミがまっくろくろすけに かわいすぎるアレンジに子も大喜び
    インターネット, おもしろ

    習字のシミがまっくろくろすけに かわいすぎるアレンジに子も大喜び

  • 子どもが「タコピーの原罪」に食いついたら?ピンチを乗り越えた親の謎理論
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    子どもが「タコピーの原罪」に食いついたら?ピンチを乗り越えた親の謎理論

  • 暑さを気にせず、室内でできるスポーツや運動があれば子どもに遊んで欲しいと思う
    企業・サービス, 経済

    猛暑で外遊び減少、親の9割が「室内運動」に関心 キリンが実態調査

  • シナモロールの大ファンだという英才さんの娘
    インターネット, おもしろ

    サンリオ大賞で子どもが学んだ一票の重み 「投票するのって大事だね」

  • 素敵すぎ!日曜日に親子で本格的なパン屋さんごっこ お値段にもきちんと理由が
    インターネット, 感動・ほのぼの

    素敵すぎ!日曜日に親子で本格的なパン屋さんごっこ お値段にもきちんと理由が

  • 赤ちゃんが微笑む事故物件の不思議な日常 母「もしいるならもっと出てきて」
    インターネット, おもしろ

    赤ちゃんが微笑む事故物件の不思議な日常 母「もしいるならもっと出てきて」

  • 逆、逆〜!晴れた日の公園で遊ぶ父と息子の"逆転現象”が微笑ましくなる
    インターネット, おもしろ

    逆、逆〜!晴れた日の公園で遊ぶ父と息子の”逆転現象”が微笑ましくなる…

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 巨大イベントへ遠征に行ったらインフルエンザを拾ってきた話(画像:イラストACより)
    ライフ, 雑学

    巨大イベントへ遠征に行ったらインフルエンザを拾ってきた話

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • トピックス

    1. じゃじゃ丸たちが帰ってきた!「にこにこ・ぷん NEO」で令和に復活

      じゃじゃ丸たちが帰ってきた!「にこにこ・ぷん NEO」で令和に復活

      今の30代~40代が幼い頃に夢中になった「にこにこ、ぷん」が、令和の時代に新たな姿でよみがえります。…
    2. 定番の「のり弁」が“冷やし”スタイルで登場?オリジン新作が猛暑に効く

      定番の「のり弁」が“冷やし”スタイルで登場?オリジン新作が猛暑に効く

      夏になると、どうしてもあっさりしたものばかり選びがち。そんな中、「のり弁を冷やして食べる」──気にな…
    3. カレッタ汐留の「ハードコア立ち食いそば」が異次元すぎる 辛つゆと極硬麺がクセに

      カレッタ汐留の「ハードコア立ち食いそば」が異次元すぎる 辛つゆと極硬麺がクセに

      東京・汐留の商業施設「カレッタ汐留」にある異色の立ち食いそば屋「そば さやか」がSNSで話題です。極…

    編集部おすすめ

    1. 誤使用で窒息やケガのおそれ ピジョン、「電動鼻吸い器SHUPOT」改良部品を無償配布

      誤使用で窒息やケガのおそれ ピジョン、「電動鼻吸い器SHUPOT」改良部品を無償配布

      育児用品メーカーのピジョン株式会社は8月6日、同社が2023年6月より販売している管理医療機器「電動鼻吸い器 SHUPOT(シュポット)」に…
    2. 怨念渦巻く家で、ナダルと村重杏奈が「リフォームホラーハウス」に挑む

      一軒家を魔改築する「リフォームホラーハウス」、MBSテレビで放送

      一軒家を丸ごとホラー仕様に魔改築する前代未聞のホラー×バラエティ番組「リフォームホラーハウス」が、8月8日と15日の深夜にMBSテレビで放送…
    3. RTA in Japan、任天堂作品を2025年夏大会で除外 無許諾利用の指摘受け

      RTA in Japan、任天堂作品を2025年夏大会で除外 無許諾利用の指摘受け

      「RTA in Japan」は8月4日、2025年夏大会において、任天堂株式会社のゲームを利用しないことについて、経緯を説明。法人による任天…
    4. Nick Turley氏(@nickaturley)の投稿

      ChatGPT、週次アクティブユーザー7億人目前に 4か月で2億人増加

      米OpenAIが開発する対話型AI「ChatGPT」の人気が、再び急上昇しています。ChatGPTのプロダクト責任者であるNick Turl…
    5. 日本でも導入して欲しい!北欧のスーパーにある“アボカドスキャナー”が便利すぎる

      日本でも導入して欲しい!北欧のスーパーにある「アボカドスキャナー」が便利すぎる

      アボカドはギャンブルです。スーパーなどで見かけても、どれくらい熟してるのかは見た目ではわかりません。触って確かめることもできますが確度は高く…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト